海外進出する日本企業を後押し! 老舗部品メーカー・ポーライトが下した決断とは?ERPパッケージとクラウドを連携

粉末冶金製品のリーディングカンパニーであるポーライト。世界各国に生産拠点と営業拠点を構え、グローバルに製品を供給できる体制を整えている。しかし昨今、国内で生産していた部品を海外工場でも生産・供給してほしいとの要望が顧客から寄せられる中、グループ内で重複する設備投資費の節減と、商物流の最適化によるキャッシュフローの節減が経営課題となっていた。これを解決すべく着目したのが、ERPパッケージ「SAP Business All-in-One」とクラウドサービス「アマゾンウェブサービス」であった。

» 2013年07月17日 10時00分 公開
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経営情報の一元把握に課題あり

ポーライト本社 ポーライト本社

 1952年に創業したポーライトは、粉末冶金メーカーの老舗と言える存在だ。同社は高い技術力を武器に、焼結機械部品の製造アイテムを着実に拡大させてきた。同社のブランドに対する顧客の評価は極めて高く、小型モータ用軸受は世界トップシェア、また、DVD、CDなどの光ディスク駆動用モータでも圧倒的シェアを誇る。

 そんな同社は創業間もないうちに海外展開を進め、現在では、台湾やシンガポール、マレーシア、中国、米国に生産拠点を、香港、フランス、米国に営業拠点を構え、グローバルで製品が供給可能な体制を整えている。海外法人を含めたポーライトグループの売り上げは、約8割が海外からの受注で占められている。

 ただし、同社は近年になり、グローバルで事業を展開している故の課題に直面していた。ここ数年の超円高を背景に、同社の取引先であるメーカー各社は工場の海外移転を推進。その結果、取引先からは日本で生産してきたものと同一の部品を海外でも生産・供給してほしいとの依頼が、数多く寄せられるようになった。ただし、同社が手掛ける製品は顧客の要望を基に一から設備ごとの金型をおこして製造するもの。そのため、汎用品のように適宜、製造場所を変えることは難しく、現地に製造設備がない場合には新たに設備投資を行う必要があった。

ポーライト 取締役経営改善室長の鴨田香南子氏 ポーライト 取締役経営改善室長の鴨田香南子氏

 ポーライトで取締役経営改善室長を務める鴨田香南子氏は、「顧客のニーズに柔軟に対応するため、商物流をグローバルに把握し、回転率を高めることでキャッシュフローを改善し、必要な設備投資資金を確保していくことが経営課題として浮上してきました。しかし、事業基盤の基幹システムを見ると、拠点ごとに異なるものが稼働しており、経営情報の一元把握が困難な状況にあったのです。どこの拠点に、在庫を含めてどのような資源が存在するのか。その“見える化”の実現が急務となっていました」と打ち明ける。

 経営情報の一元把握が困難なことは、意思決定の迅速化を阻害する原因にもなっていた。事実、同社では各拠点からの情報を基にした連結経営資料の作成に、情報の加工の手間などから約20日も要し、その分だけ経営判断が遅れるという事態を招いていた。

 また、同社では経理や販売管理、購買などのシステムをつなぎ合わせて国内の基幹システムを構築。そのため、システム連携にバッチ処理や人手の作業を要し、そのことがリアルタイムでの経営情報の把握を困難にさせるとともに、業務効率化の妨げとなっていた。

 こうした状況を抜本的に改善すべく、同社はグローバルでの基幹システムの刷新を決断。そのための最適な手法の見極めに乗り出したのである。

パッケージ製品とクラウドサービスを選択した理由

 ポーライトは基幹システムの刷新にあたってさまざまな方法を検討。その結果、最終的にたどり着いた結論がパッケージ製品の採用である。ポーライトの経営改善室で部長を務める安部良夫氏は「今回のプロジェクトのコアメンバーは総勢で6人。こうした中で国内のみならず各国の意見をくみ取り、一からスクラッチでシステムを組み上げることは、現実的に不可能だと判断しました。また、事前にコストを試算したところ、フルスクラッチはパッケージよりも倍近くかかることが明らかとなりました。であるならば、グローバルで広く利用されているパッケージ製品の採用が最善であると判断されたのです」と説明する。

ポーライト 経営改善室 部長の安部良夫氏 ポーライト 経営改善室 部長の安部良夫氏

 加えて、同社が着目したのがクラウドである。実は同社では長年にわたり基幹システムの維持コストに頭を悩ませてきた。ハードウェアの更新は定期的に発生し、「それほど性能が変わらないと思われるサーバに高額なコストを支払う必要がありました」(安部氏)。

 また、運用にも人手を割かねばならず、さらに、ベンダーに対してサポート料を支払う必要もあった。その総額は5年で約9000万円にも上った。グローバルでのシステム運用となれば、欧州と米国に拠点を構えている関係から、24時間の運用体制が必要となり、より多額のコスト負担が求められることが容易に推察された。クラウドは、こうした状況を打開する“解”と考えられたのだ。

 クラウドのコストメリットは大きな魅力だが、信頼性やセキュリティなどの不安などから採用に抵抗感を持つ企業も少なくない。ポーライトでは2010年ごろからグループウェアをクラウドで運用。東日本大震災に見舞われた際には、本社の電力供給が絶たれる中で、自宅から経営幹部がグループウェアで連絡を取り合い、対応策を協議するなど、事業継続性の確保におけるクラウドのメリットを肌で体感してきた。ポーライトの経営改善室 情報システム係でアドバイザーを務める土田富士雄氏は、「自社ではなく専用施設で運用されているクラウドの信頼性と可用性の高さは、これまでの経験から明らか。クラウドの採用にあたって不安視する声は上がりませんでした」と振り返る。

パートナーの熱意に信頼感を得る

 こうした要件を基に、同社は複数のパッケージを比較検討。その結果、2012年7月になり同社が最終的に白羽の矢を立てたのが、SAPジャパンの中堅・中小企業向けERPパッケージ「SAP Business All-in-One」をアマゾン データ サービス ジャパンのクラウドサービス「アマゾンウェブサービス(AWS)」で運用するという、NTTデータグローバルソリューションズ(NTTデータGSL)のソリューション提案であった。

ポーライト 経営改善室 情報システム係 アドバイザーの土田富士雄氏 ポーライト 経営改善室 情報システム係 アドバイザーの土田富士雄氏

 SAPのERPシステム採用の理由としてまず挙げられるのが、豊富なグローバルでの実績と、多言語、多通貨に対応していることである。また、NTTデータGSLの充実したテンプレートによりシステムに手をほとんど加えることなく導入できるため、それだけ導入コストを抑えられ、短期間での導入が可能だったのも魅力だったという。

 さらに、NTTデータGSLのエンジニアの高いスキルも高く評価したと鴨田氏。

 「担当者と話を進める中で、顧客ニーズに正面から向き合う丁寧な姿勢を感じました。クラウドの選定にあたっても、予算を踏まえて当初予定のものの代替に、より安価なAWSを提案してもらえた事もその1つです。基幹システムだけにプロジェクトの失敗は許されませんでしたが、必ず成功させると断言してもらえました。その顧客本位の熱意に後押しされ、NTTデータGSLへの依頼を決断したのです」(鴨田氏)

 ただし、製品選定から構築に着手するまでの過程では克服すべき課題もいくつかあったという。中でも困難だったのが社員の合意形成だ。今回のプロジェクトは「情報の一元化による業務効率アップ」という経営目標を達成すべく、社長の菊池眞紀氏をプロジェクトオーナーに、トップダウンで基幹システムを刷新するものだった。とはいえ、テンプレートに業務を合わせるという手法をとったため、業務プロセスの変更は免れない状態だった。

 「そこで、システムの意義やその必要性、また導入による影響などを経営層に包み隠さず説明し合意を得ることに注力しました。その後、社員にも同様の説明を行い、現場業務に変更が生じることへの理解と協力を求めたのです」(土田氏)

 併せて現場の要求を最大限くみ取るべく、寄せられる意見にはできる限り耳を傾けた。「後々にわだかまりを残さないためにも、社員への配慮は欠かせません」と安部氏。こうした取り組みを通じて、システム導入に向けた社員の意識付けも確実に醸成されていったのだという。

リハーサルを2度実施、データ移行に万全を期す

 ポーライトがシステム構築に本格的に着手したのは2012年9月のこと。以後、2013年4月1日のカットオーバーを目標に、NTTデータGSLと二人三脚でSAP ERPの実装が進められた。

 だが、その道のりは平たんではなかった。今回のプロジェクトはポーライトがかつて経験したことのない大規模なもの。そのため、プロジェクトの全体像を把握することが難しく、キーユーザーによる運用テストなどは受身の対応になりがちで、一通りのテストは完了しても実際業務に適用した場合の課題の掘り起こしが不十分な状態であった。

 このためプロジェクト終盤のエンドユーザー教育段階になって、社内取り決めが完了していない業務運用課題がまだ多数あることが判明。ここでの危機感がプロジェクトメンバー全員のやる気に火をつけ、遅れや不備を挽回するために一丸となってまい進することとなった。その取り組みを支えたのがNTTデータGSLのプロジェクト管理体制である。

 「基幹システムに手を加えれば、当然、周辺のシステムや業務運用にも影響が及びます。対して、NTTデータGSLがそれらも含めたプロジェクト管理を行うことでそのリスクにも配慮してもらえました。プロジェクトにおけるタスクも具体的で、安心してシステム導入に打ち込むことができました」(安部氏)

 プロジェクトでは当初の想定通り、業務プロセスにも多数の変更が加えられた。例えば、出荷指示作業では、従来は販売管理システムの受注情報を基に営業スタッフが指示を出すが、出荷予定日に完成する部品の出荷可否は、生産管理担当者が生産管理システムで作業進ちょくを確認して最終決定する必要があり、出荷当日まで営業担当と生産管理担当が頻繁にやり取りをしながら指示の変更を繰り返していた。今回、生産管理担当者がすべての出荷指示を出すよう改めることで、調整に伴う出荷指示の非効率性を一掃した。

 システムの“肝”であるデータの移行にも万全を期した。具体的には本番移行に近いリハーサルを2回実施し、課題をすべてつぶしていった。作業は滞りなく進み、2013年3月末日、SAP ERPは本番環境で稼働を開始したのである。

国内導入は海外展開に向けた第一歩

 システムが稼働を始めてまだ数カ月しか経っていないものの、その効果は業務効率化として確実に表れている。システム間連携のための煩雑な作業から解放されたことに加え、業務の見直しによって、在庫の引き当てや受注消し込み、売り上げ計上などの作業が自動化され、本来業務に社員が注力できる体制が整えられている。

 また、基幹システムがSAP ERPに統合されたことで、経営数値のリアルタイムでの把握が可能となり、生産管理や営業、倉庫など業務間でのリアルタイムな情報共有も実現している。ロット単位での在庫管理が可能となり、在庫把握精度が向上、在庫のトレースも容易に行えるようになった。

 「資材所要量計画(MRP)による在庫最適化を通じて、キャッシュフロー最大化のための仕組みも整備されました。遅くても2年以内には効果が上がると確信しています」(鴨田氏)

 懸案であった運用コストも、AWSの利用を通じ、従来の6割にまで削減されている。ポーライトでは今後、今回導入したシステムを基に、海外拠点にSAP ERPの展開を進める考えだ。

 「海外拠点もSAP ERPに切り替えることで、リアルタイムにグローバルの経営状況を把握することが可能になります。ひいては、しきい値などを設定することで、変化への素早い対応など経営のさらなる高度化も実現できるでしょう。我々にとって日本でのSAP ERPの導入は始まりにすぎません。海外へのシステム展開に着手するこれからが導入の本番なのです」(鴨田氏)

 ポーライトのグローバル展開において、SAP ERPが担う役割は今後、さらに増すことになりそうだ。

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提供:SAPジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年9月30日

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