【第2回】タレントマネジメントシステムの構築一から学ぶタレントマネジメント戦略(2/3 ページ)

» 2013年08月29日 08時00分 公開
[森井茂夫(プライスウォーターハウスクーパース),ITmedia]

既存の人事システムからのデータ連携をどうするか

 情報に目途がついたら、いよいよシステム構成の設計です。この点に関しては、小さく始める場合にも将来の目標とそこに到達するためのロードマップを描いて検討すべきです。ゆくゆくはグループの全社員を対象にする、グローバル展開が必須、データベースだけでなく評価や採用、サクセッションマネジメントをシステム化するなど、目指す姿と現状、全社のIT戦略や実現の時間的要請などにより、どのような構成を取るかが決まってきます。

 具体的には、既存の人事管理システムを拡張する、あるいは、別途タレントマネジメントシステムを構築するかという選択があります。既存システムがバッチ処理主体でリアルタイム性やユーザーインタフェースが良くなかったり、改修に多額の費用がかかったりする場合には、別途システムを構築することになるでしょう。この場合に注意しなくてはいけないのが、データの連携と整合性です。

 最近のパッケージおよびクラウドシステムでは、組織は相互の階層関係が基になって管理されていたり、人材の履歴情報が重複や切れ目などの不備を許さないように管理されていたりします。一方、国内の古いシステムでは、そのような管理が厳密にされていなかったり、異なる形式で管理されていたりします。このようなケースでは、既存システムからタレントマネジメントシステムへのデータ連携が容易ではありません。初期移行時点で手作業による修正を入れるなどして、何とかなっても、その後、異動や組織変更があった場合にスムーズな連携が可能かどうか、事前によく検討しておくことが必要です。

 人材や組織の情報を2つのシステムで持つことになった場合、どちらを「正」とするかを決めておかなくてはいけません。基本的には、既存システムが全社マスターとして機能しているため正であり、タレントマネジメントシステムはデータの参照、人材の照会を行うだけ、という構成でスタートする場合が多いのです。しかし、運用が始まるとタレントマネジメントシステム側でもデータ更新ニーズが出てきて、両者の整合性をとることが難しくなります。グローバルでのタレントマネジメントを行う場合、既存システムが国や拠点ごとに分かれていたりしますので、この連携と整合性の問題はより複雑になります。

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