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» 2013年09月03日 10時00分 UPDATE

仮想化/クラウド時代の解:垂直統合型プラットフォームは有益な武器となり得るのか?

ミドルウェア導入などの煩雑な作業から解放されることで開発生産性を高めたい――。こうしたニーズからPaaS型のクラウドや垂直統合型プラットフォームに対する企業の関心が日増しに高まっている。そうした中、日立製作所は「ベストオブブリードvs.垂直統合─IT基盤モダナイゼーションの本命は?」と題したセミナーイベントを開催。本稿ではその模様をレポートする。

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 いよいよ企業での活用が本格化し始めたエンタープライズクラウド。ただし、その利用には課題も残されている。現状のクラウドの導入形態を見ると、インフラストラクチャ基盤をサービスとして調達するIaaS型が多い。しかしこの場合、ミドルウェアの導入からシステム構築に着手することが求められるほか、開発からテスト、運用の各フェーズで基盤調達と構築作業が必要となり、通常のシステム構築と同等以上のスキルや期間が必要になることもある。

IDC Japan サーバ リサーチマネジャーの福冨里志氏 IDC Japan サーバ リサーチマネジャーの福冨里志氏

 そうした課題に対して今注目を集めているのが、ソフトウェアも含めて調達可能なPaaS型のパブリッククラウドや垂直統合型プラットフォームだ。その利用を通じて開発生産性の向上のみならず、システム稼働後の運用管理の効率化も見込むことができる。

 日立製作所は8月2日、「ベストオブブリードvs.垂直統合─IT基盤モダナイゼーションの本命は?」と題し、企業が“使える”クラウドにテーマを絞ったセミナーを開催。基調講演に登壇したIDC Japan サーバ リサーチマネジャーを務める福冨里志氏は、統合型プラットフォームを実現するためのキーテクノロジーである「仮想化」について冒頭で次のように訴えた。

 「リーマンショックを機にコスト削減策として、確かに仮想化技術の企業利用は急速に進んだ。ただし、過度にコスト削減に走り過ぎ、ITスタッフの削減によって属人的な運用管理手法が消失してしまった結果、ITシステムの柔軟性が欠如し、新規ビジネスに迅速に対応できなくなっている」

CIOの役割を見直す

 現状の仮想化環境における運用管理レベルの低さは、IDCが今年発表したサーバ仮想化に関する利用実態調査からも容易に見て取れる。同調査において、ITポリシーの標準化率といった「運用管理レベル」が平均水準以上だった企業はわずか11.8%。対して、サーバ仮想化率などの「活用率」も含めて平均水準未満の企業は実に54.0%に達している。

 この問題を解決し、利益を生み出せる体質に生まれ変わるために、「IT基盤の見直しと新たなアーキテクチャに基づく新たな運用設計が企業にとって急務となっている」(福冨氏)。そのための策として福冨氏が挙げたのが、システムの垂直統合型プラットフォームへの移行である。

 垂直統合型プラットフォームはベンダーのノウハウの集積ともいえるもので、その利用を通じて運用ノウハウを補完することが可能だ。かつ、十分な事前検証が行われているため、短期間でのシステム導入につなげることもできる。そして、これを機に、サーバやネットワーク、ミドルウェアなどを横串に刺して一元管理できる体制を整えるというのが、運用の再設計に向けた福冨氏のシナリオである。

 そのために、IT部門、さらにCIO(最高情報責任者)の役割も見直しが必須と福冨氏。

 「統合プラットフォームで柔軟性を取り戻したシステムによって利益を創出するために、CIOは事業部門のパフォーマンスにも責任を負うべき。つまり、社内外のクラウド事業における活用法とともに、全社横断のビジネス変革の推進役も担うことが求められているのだ」(福冨氏)

ユーザーの過半数が基幹システムの仮想化に着手

 続いて登壇したヴイエムウェア システムズエンジニアリング本部 シニア スペシャリストの西田和弘氏は、基幹システムの仮想化を成功させるためのポイントについて解説した。

ヴイエムウェア システムズエンジニアリング本部 シニア スペシャリストの西田和弘氏 ヴイエムウェア システムズエンジニアリング本部 シニア スペシャリストの西田和弘氏

 これまで出遅れていた感のあった基幹業務アプリケーションの仮想化だが、ここにきて状況が急速に変わりつつある。VMware製品のサポートを正式表明するISV(独立系ソフトウェア会社)が相次ぎ、十分な可用性や信頼性の担保が可能になったことに加え、仮想化プラットフォーム「VMware vSphere 5」では最大32仮想CPU、1テラバイトメモリをサポート。さらに、仮想化を前提としたCPUによる処理能力の向上も相まって、基幹システムの仮想化が急速に進んでいるのだ。既にVMwareユーザーの過半数が基幹システムの仮想化を完了しているという。

 VMwareによる基幹システムの仮想化のメリットはさまざまだ。CPUやメモリサイズの動的な変更によりニーズに応じて柔軟にシステムを構築できるのもその1つ。また、「VMware vSphere HA (High Availability)」や 「VMware vSphere FT(Fault Tolerance)」、「vSphere vMotion」などの機能を利用することで、簡単かつ安価に高い可用性を実現できる。物理サーバのソケット数によってライセンス料が左右される場合には、仮想化による整理統合により、コスト負担の抜本的な削減も可能だ。

 西田氏によると、基幹システムの仮想化は実は決して難しくはないという。基本となる取り組みは、CPUコア数に応じた仮想CPU数の設定や、適切なメモリサイズの割り当て、仮想サーバ間での同期用ネットワークの整備などである。

 「最新のハードウェアには各種の仮想化支援機能が実装されている。そこで、それらを採用した上で、従来からの物理環境での設定を意識すれば、最適な構成は自ずと見えてくるはず。ひいては基幹システムに足るパフォーマンスを確保できるのだ」(西田氏)

 一方で、仮想化により開発生産性が大幅に高められる点も、IT部門にとって大きなメリット。これまで、新規のシステム開発にあたり、そのための環境を別途用意していたものの、本番環境との構成の違いが手戻りを発生させる要因の1つとなっていた。だが、本番環境にできる限り近い開発環境を用意し、開発を終えたシステムをテンプレート化して本番環境に展開することで、手戻りの発生が抑えられ、実装に要する手間とコストも削減できる。また、本番システムを開発環境にコピーし修正とトラブルシューティングを行うことで、一連の作業期間の大幅短縮も見込め、より短いサイクルでシステムを見直すことができる。

 「基幹システムでは特に仮想化によるコスト削減や運用効率化の効果が大きく、ワールドワイドで数多くの実績もある。基幹システムの仮想化は、システム整備や見直しにおける鍵となるはずだ」(西田氏)

垂直統合型プラットフォームでPDCAサイクルの短期化を

 IT支出の削減策として利用が進められてきた仮想化技術。ただし、「経営者の要求はITコスト削減から利益の創出に変化している。その実現に向け、システムの標準化レベルを高めるためのPaaSの採用が不可欠となっているのだ」と強調するのは、日立製作所のITプラットフォーム事業本部 プラットフォーム販売推進本部 販売戦略部で担当部長を務める吉村誠氏だ。

 仮想化技術によって、確かにITインフラのコスト最適化は実現されたものの、システムごとにミドルウェアの構築や調達が必要なために、開発効率の点では仮想化以前と変わりはない。この課題克服のための具体策として吉村氏が提示したのが、ハードウェアから仮想化環境、ミドルウェアまで一括して調達可能な同社の垂直統合型プラットフォーム「Hitachi Unified Compute Platform(UCP)」の採用だ。

日立製作所 ITプラットフォーム事業本部 プラットフォーム販売推進本部 販売戦略部 担当部長の吉村誠氏 日立製作所 ITプラットフォーム事業本部 プラットフォーム販売推進本部 販売戦略部 担当部長の吉村誠氏

 UCPは統合運用管理のための「JP1」や「Cosminexus」、サーバのコンソリデーションのための「BladeSymphony」、ストレージ仮想化に対応した「Hitachi Storage Solutions」など、実績のあるハードウェアとソフトウェアを統合し、同社の運用ノウハウとともにワンストップで提供するもの。

 従来環境では、サーバやストレージ、ネットワークごとに管理者の配置が必要とされ、そのことが開発効率化を阻む原因の1つとなっていた。そこでUCPでは用途や規模別に3つのモデルが用意されており、それらの利用を通じて、サーバ統合から、「VMware vCenter」による大規模データセンターでのリソースの一元管理を実現。さらに、検証済みのシステム構成を定型化した構築テンプレートに基づき自動化/標準化されたPaaS基盤の整備まで段階的にシステムを高度化させることが可能だ。

 UCPの開発の狙いは、業務システムの構築や運用におけるPDCAサイクルを短期化し、コストを最適化することである。PaaS基盤が整備された暁には、テンプレートによる設計・構築の省力化に加え、JP1での運用の自動化、さらに稼働状況監視や統計情報レポートによるサービスレベルの監視により、構築・設計・運用のサイクルにおける工数削減が可能となる。

 「仮想化を真に活用するためのツールやトレーニングに加え、システム運用を最適化するための仕組みもUCPでは提供する。その利用を通じて、運用コストの削減や開発効率の向上が可能となり、より短いサイクルでシステムを見直せる環境が整備できるのだ」(吉村氏)

 具体的には、テンプレートを基にした各種パラメータ設定の自動化により、運用のための手間を大幅に削減するとともに、リソース配備の最適化が実現できる。PaaS基盤の整備に必要とされるのは、トランザクション量や利用するデータ容量の設定などだけだ。セキュリティやアプリケーション、OS、仮想マシンの設定に、従来は150分ほど要したが、UCPではわずか60分で作業が完了できることからもその効果を理解できるだろう。

 「ビジネス変革のシステム側の“肝”は仮想化にあるといっても過言ではない。その効果を最大限に引き出すためのPaaS基盤の整備が、企業の競争力も大きく左右することになるはずだ」(吉村氏)

外部のノウハウを活用して成果を出す!

 最終セッションではパネルディスカッションが行われ、企業における仮想化技術/クラウド活用の現状と課題、また、システムのあるべき姿について議論が交わされた。

パネルディスカッションでは仮想化の活用や課題などについて議論が交わされた パネルディスカッションでは仮想化の活用や課題などについて議論が交わされた

 まず、福冨氏は国内企業の仮想化の活用状況について、「大企業では新規導入サーバの6〜7割が仮想化環境での運用を前提としている。ただし、運用効率の向上やビジネスへの貢献には、いまだ配慮が払われていないのが実情」と指摘。それに対して、「仮想化技術を導入したものの、そこで活用がとどまるケースが非常に多い」(西田氏)や、「仮想化導入の前に、運用効率を高めるためのシステム要件の整備が必要」(吉村氏)など、仮想化技術の活用レベルに関して、まだまだ底上げできる余地が大きいことで意見が一致した。

 この状況の打開に向けた“解”として福冨氏が挙げるのが、外部ノウハウの活用である。

 「現状を見直す必要を認識しているものの、何から始めるべきかが分かっていない。ならば、餅は餅屋で、ベンダーにシステム運用を委託することも策の1つ」(福冨氏)

 また、吉村氏は「システム整備の短期化が見込めるPaaSは、新ビジネスの創出において大きなメリット。ただし、仮想化からIaaS、PaaSと段階的な基盤整備のためにも、将来に向けたロードマップを描いておく必要がある」と、利用にあたっての心構えを述べた。

 そこで大切なのが、「企業システム全体を把握する責任者の育成」(西田氏)だ。現状、サーバやネットワークなど、管理の細分化が進み、そのことがシステムの迅速な見直しを阻む障害となっているという。その上で、吉村氏は「組織横断的に、いわば横串を刺した形でシステムを運用するには、PaaSによる垂直統合型プラットフォームの採用が現実解」と説明。加えてITスタッフに対して、昔ながらの職人気質で築き上げたノウハウは、運用自動化のコンテンツとして活用幅を広げる工夫が必要。今後も垂直統合型プラットフォームの強化に努力を惜しまない点を強調し、セミナーを締めくくった。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2013年9月26日