それから1週間程して、筆者はA氏に同行し、B社を訪問した。先方はC社長、顧問弁護士、そして社長室長と人事部長、情報システム部課長の5人が応対した。そこでのやり取りは以下のようなものだった。
B社側からこれらの事実が告げられた後、C社長は「極めて残念だ。本当なら一緒に仕事をしたかった。しかしこうなっては、これ以上かばうことはできない。結果として先方企業からクロスライセンスの申し入れの際にバランスをとるということになり、当社はこの条件を呑んだ。本来なら君に損害賠償を請求するところだが、それでは私の気持ちが晴れない。そこを分かってほしい」と話された。
ここまで証拠を突きつけられた。それでも「穏便に済ませたい」というC社長の意思がひしひしとして伝わってきた。本来なら感情的になり、「この損害をどうしてくれる」と罵倒されるのが普通だからだ。筆者はA氏に「調査だけは継続したい」とお伝えするしかできなかった。
ところで調査といっても、どう進めるべきか悩んだ。当然ながらA氏にヒアリングし、作成途中の企画提案書から情報がいつ頃に漏えいしたのかは特定できたものの、その他の手がかりはほとんど無い。
そこで当日の行動を再現してもらうことにしたが、A氏は「こんなことしても意味が無い!」と文句を言うばかりで、筆者も「だったら社会人の常識として、あなたならどうするんだ! 私にもここまで付き合う義理は無いのですよ」と思わず口にしてしまった。それほどまでに八方ふさがりの状況だった。
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