【最終回】顧客に最も近い企業が勝つ!顧客マネジメント再考(1/2 ページ)

これから先、顧客接点力の最大化を図るために企業がとるべきCRM戦略とは――。

» 2013年10月01日 08時00分 公開
[中本雅也(アビームコンサルティング),ITmedia]

 前回は、「顧客経験マネジメント」の概要と具体的な手法について解説した。最終回となる今回は、今後企業がとるべきCRM戦略とその実践について解説する。

企業におけるこれからの戦略実現スキームの考え方

 顧客経験マネジメントは、企業と顧客の接点における満足度の高い経験を提供することで、自社を支持してくれる顧客の増加を狙っていくものである。

 そのような取り組みを通して、丁寧に一つずつ顧客との接点力を高め、これからの競争に勝っていかねばならない。

 しかし、この顧客接点における良質な経験を継続的に提供するために、その接点だけにフォーカスした部分最適施策だけでは不十分である。企業内の各部門が顧客への対応を機能的かつ有機的に実践するには、各部門におけるプロセスが高い次元で密接にシンクロナイズされている状態がベストである。顧客への一元的対応の実践である。

 このような顧客対応を可能にするために、アビームコンサルティングでは以下のような「CRM8ドメイン実践モデル」を基本とした戦略実現スキームで、企業の顧客対応能力の最大化を支援している(図1)

図1 CRM8ドメイン実践モデル 図1 CRM8ドメイン実践モデル

 まず全体を俯瞰しよう。

 CRMを実践する上で不可欠なコンポーネントがある。Strategy(戦略)領域に「1.Customer Strategy」、Process(プロセス)領域に「2.Marketing」、「3.Sales」、「4.Customer Service」、そしてシステム(IT)領域に「5.Integrated Customer DB/DWH」と「6.Technology」という具合に、それぞれが相互に連関する矢印の線で結ばれ、機能の関連性および同期化の重要性を表している。それら6つの機能を統合するかのように「7.Cloud/Social Network」が基礎環境として存在し、これらの機能を効率的に働かせている。

 そして最後に、「8.Human Resource(IC/CM)」が7つの機能の実践活動を支えるというモデル図になっている。これは、CRM実践の基盤は人であり、社内コミュニケーションやチェンジマネジメントを通して、顧客志向の従業員育成、さらには顧客接点における対応の質にまで影響するということを表している。Web、SNS、モバイル、GPSなどのIT技術の進化もさることながら、営業やサービスの現場、コールセンターでのホスピタリティを維持した顧客対応力は、最終的には“人“がその大きな影響を持つのである。

 このモデルを使って、自社の現在のCRM実践レベルを測ることも可能であるし、システムから顧客データベースといったIT領域と業務プロセスとの融合も図れるようになる。

 先回説明した顧客経験マネジメントは、Customer Strategyを具現化するソリューションであり、CRMを推進する上では一番の肝となっている。

 これからの企業は、このような戦略実現スキームに沿って、各機能の連関とその相互作用を意識しながら、自社の顧客対応力を常に上げていく努力を怠りなく実践しなければならない。

顧客接点力の最大化

 製品やサービスで明確な差別化が困難になった現代において、顧客接点力を高めることが企業の競争優位を獲得し、自社の顧客を増やすことにつながり、最も顧客に愛される企業となるのだ。

 顧客を理解すると同時に、顧客にも自社のこと、また自社の製商品・サービスを深く理解してもらい、いないと困るくらいの距離感、頼られ具合を創出することが必要である。顧客との距離の近さが、これからの企業の勝敗の大きな要素となるからである。

 技術の進展により、SNSなど顧客が情報発信する機会が格段に増えたことに加え、企業側も今まで以上に発信する能力を磨き、積極的に顧客へ近づくことが可能になった。近ければ近いほど、顧客側の期待値が高まるわけで、顧客の購買行動やその嗜好など顧客理解を深めた対応力をも高めないと、期待値とのギャップで、一瞬にして信頼を失いかねない。

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