【最終回】顧客に最も近い企業が勝つ!顧客マネジメント再考(2/2 ページ)

» 2013年10月01日 08時00分 公開
[中本雅也(アビームコンサルティング),ITmedia]
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ビッグデータ解析などBIの正確な活用

 昨今、ビッグデータ活用に対する基盤の整備などで、より詳しく顧客の行動特性が把握できるようになったと言われる。顧客への接近がより可能になった。

 しかし、データなら何でも解析可能というわけではない。ごみのようなデータをいくら分析しても無駄だ。特に、顧客に関するデータにおいては、その鮮度・精度はもちろん、正確性、連続性、再現性などが担保されて初めて分析に足るデータになるという。

 例えば、顧客セグメンテーション1つをとっても、アビームコンサルティングでは従来型のデモグラフィックアプローチに加え、心理的価値意識にまで入り込んだサイコグラフィックセグメンテーションを組み合わせて、より深い顧客理解を実現し、きめ細かなマーケティングアプローチを可能としている。

 また、今までの分析が過去のデータを使って、あくまで過去の傾向や実態を検証するかのような使われ方、いわゆる調査・報告だったのに対し、これからの企業に求められるのは過去のデータや関連するデータなどから統計分析をし、今後の予測・推定に使えるような分析をしていかなければならない。ビジネスにとっての最適化、予測モデルの作成までを実現することでビジネスインテリジェンスにおける競争優位性を確保していく時代になったのである。

CCOの設置による顧客マネジメント力の組織的向上

 日本では、企業の重要ポストとしてCEOCFO(最高財務責任者)CIO(最高情報責任者)くらいしか認知されていない。CMO(最高マーケティング責任者)も一部の企業のみで、十分浸透しているとは言えない。欧米並みとは言わないまでも、もう少し“顧客”を意識したトップレベルの機能・役割があってもいいのではないか。

 顧客対応力の強化による企業価値向上を目指すためにCCO(Chief Customer Officer)の設置を提案したい。これは顧客に対するすべてのビジネス上の責任を負う要職である。例えば、Customer Intelligenceを駆使しマーケティングの変革を実践したり、アカウントマネジメントの展開による営業力強化と顧客深耕を推進したりする。予防保守など顧客メリットと企業側メリットの双方を実現するカスタマーサービスの進化により、今まで以上に顧客密着度を高め、満足の上をいく感動の顧客サービスをどこよりも率先して採用するなど、その役割は枚挙にいとまがない。

 特に、顧客の声に真摯に耳を傾けることで、今まで気付かなかったような具体的かつ顧客を感動させられる施策が打てるかもしれない。VOCの分析技術も格段に進化し、他のツールとの併用でより顧客に近い声が確認できる。

 このように、今後企業に求められるCRM戦略とその実践については、IT技術を駆使してデータを分析する側面と、業務ベースで顧客対応力を上げていく側面がある。そして、それらを統括するように企業の顧客戦略実現スキームがあり、これら三位一体のCRM実践により、ますますの企業競争力と収益力を高めていくことができるのだ。

著者プロフィール

中本雅也(なかもと まさや)

アビームコンサルティング株式会社 CRM統括事業部長 執行役員

情報機器メーカーにて製造業、流通業、サービス業等に対するシステムコンサルティングの実績及び営業として4期連続トップセールスの経験を持つ。1999年よりコンサルタントに転じ、製造・流通業をはじめ、サービス、金融、電力・ガス、鉄道、官公庁などのお客様に、事業戦略、M&A戦略、業務改革など約230以上のコンサルティングを実施。またCRM分野の第一人者であり、数少ない経営実務と実際の現場の双方を知り尽くしたコンサルタントとして、顧客マネジメント、営業マネジメントを中心としたコンサルティングに定評がある。その他、講演、各種団体・大学院等での講義、取材、執筆などでも活躍中。


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