2020年のIT部門はどうなっているのか

IT調査会社Gartnerの年次カンファレンスが開催され、東京五輪が開催される2020年にITの世界やIT部門の役割がどうなっているのかという展望が紹介された。

» 2013年10月15日 20時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 2020年のITの世界はどうなっているのか――Gartnerの年次カンファレンス「Gartner Symposium/ITexpo 2013」が10月15日に開幕、初日は今から7年後となる2020年のITの世界観について、同社のアナリスト陣が展望を発表した。

 Gartner シニアバイスプレジデント兼リサーチ部門最高責任者のピーター・ソンダーガード氏は、あらゆる人やモノが「デジタルの担い手になり得る時代が来る」と語った。現在、台頭しつつあるモバイルやソーシャル、クラウドといった潮流により、人やモノがインターネットに接続するようになり、新しい価値を創造していく「デジタル産業時代」が到来し、その経済効果は直接的なものだけで1兆9000億ドルにもなるという。

 企業の観点ではビジネスにおけるテクノロジーの重要性が飛躍的に高まり、あらゆる商品・サービスにおいて不可欠な存在になる。IT部門もITサービスを提供するだけでなく、ビジネスに深く貢献する責任を担うようになるとし、同氏は2020年に企業でITを推進する立場として(1)デジタルテクノロジーアーキテクチャ、(2)エンタープライズインフォメーションアーキテクチャ、(3)サイバーセキュリティ&リスク、(4)産業別特化型ITインフラ――の4つが出現するとみる。

 (1)ではITを含むテクノロジーの全体像、(2)では情報資産と商品やサービスとの整合性、(3)セキュリティの脅威やリスクへの対応、(4)では企業の内と外のITの接続性に対して責任を負う。また、ITを含めたテクノロジーの重要性を啓発する役割も必要になる。

 また、ITベンダーもこの潮流によって影響力が大きく変化し、伝統的なITベンダーの影響力が低下する一方、「まだ見ぬ新しいベンダーが世界を席巻するだろうと予想するCIOは多い」(ソンダーガード氏)という。

2020年の展望を発表した各氏(左から志賀氏、足立氏、鈴木氏、ソンダーガード氏)

 2020年を見据えた変化が日本企業にどう作用するかについて、ガートナー ジャパン リサーチバイスプレジデントの足立祐子氏は、ビジネスの「プロセス」「モデル」「モーメント」の3つの軸で捉えることができると解説する。ビジネスプロセスでは例えば、センサ機器や自動制御、拡張現実(AR)がプロセスの境界を大きく変えるという。ビジネスモデルでは例えばGoogleが開発を進める自動走行車のように、これまでとは異なるプレーヤーがビジネスの競合相手になる。ビジネスモーメントでは例えば、日数や時間単位で課金するレンタカービジネスと分単位で課金するカーシェアリングが競合するような、従来とは異なる基準でのビジネスが創出されていくとしている。

 また、リサーチバイスプレジデントの志賀嘉津士氏は、「2017年までにコンピュータの10%が情報処理だけでなく自己学習の能力を備える」「2020年までにホワイトカラーの3人に1人がコンピュータに職を奪われる」との同社の展望を紹介した。従来の経験に基づくビジネスはコンピュータがその役割を担う比重が増えていくため、IT部門は経験則に捉われない全く新しい価値を創造する担い手になり、自分たちのビジネスストーリーを描けることが求められるようになる。

 「架空のシナリオだが、例えば家具メーカーは製品を作るだけでなく、製品にセンサを装着して今の利用を把握し、壊れそうになれば現場で3Dプリンタによって補修部品を製造して修理し、安全に使ってもらうように顧客をサポートをするという、サービスを提供するようなビジネスモデルに変わるだろう」(志賀氏)

 リサーチディレクターの鈴木雅喜氏は、2020年に向けたこうした展望について、「人間はアナログであり、デジタルがこれから人間社会へもたらす大きな変化に対応していける意識を持つことが大切だ」と提起する。CIOは社内に対してITサービスを提供するという従来の役割に固執していては次第に影響力が無くなる。ソンダーガード氏が紹介した立場を中心に、デジタルによる変化をコーディネートしていく「デジタル責任者」として戦略や利益創出を先導していく意識を持つべきと語る。

 IT部門には、2020年のこうした展望を現実のものとして受け止め、むしろ、その変化に先駆けて価値創造を担う「ITの語り部」としてのリーダーシップが問われているという。

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