Window 7移行プロジェクトを指揮、1万5000台を完遂 マツダ・山根さん情シスの横顔(3/3 ページ)

» 2013年10月23日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]
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配送も効率的に

 これだけ大規模にPCを展開するとなると、効率的な配送方法などを綿密に考える必要がある。何よりも月に1200台をさばく広い作業スペースが必要だったという。事前にPMOメンバーがマツダ本社の敷地内で、日夜スタッフが快適に作業できる場所を探したところ、偶然、400平方メートルの適切な空きスペースを見つけた。そこに新品PCをずらりと並べて、Window 7環境を設定してはリリースし、戻ってきたPCは梱包してと、効率的に作業が回るようにした。

マツダの広島工場(写真提供:マツダ株式会社) マツダの広島工場(写真提供:マツダ株式会社)

 各部門への配送も工夫。マツダ本社の敷地は全長10キロに及ぶため、点在するオフィス棟などを効率的に巡回しなければ時間や手間の大きなロスとなってしまう。そこでロジスティクスに長けた社員から意見を得てPCの配送計画ルートを作った。例えば、新規PCを配送しても、既存PCからのデータ移行があるので、その日は回収できない。従って、データ移行期間を考慮しながら毎日のルートを事前に組み立てていった。

 こうした取り組みは、マツダという製造業の会社だったからこそ可能だった面もある。広大な敷地だったり、フォークリフトなどの重機だったりは自前で用意できるものではない。

 「例えば、広島市内の企業が3カ月で200台のPCを入れ替えようとしても、そう作業場所はないでしょう。メーカーや代理店などの協力が不可欠です。ただ、工夫次第でいかようにもなるし、投資も抑えることができるのです」(山根さん)

ユーザーの理解なくしてプロジェクトは成功せず

 ところで、移行プロジェクトにおいてエンドユーザーの協力はどのように得ていったのだろうか。山根さんは「エンドユーザーにとっても新しくスペックの高いPCを使って仕事を快適に行うことができるようになるため、プロジェクトには前向きでした」と話す。

 ただし、ユーザーへの配慮を最優先することを心掛けた。Windows 7に移行することに対して良いイメージを持ってもらうべく、ユーザーから不満が出ないように調整しながら、事前に課題は解消する形で進めていった。

 「IT部門から見ると“単にPC1台”ですが、ユーザーにとっては“私の1台”なのです。これは自動車と同じ。マツダは何万台、何十万台も販売していますが、顧客にとっては大切な1台であり、その対応は当然ほかの顧客とは異なります。ですので、PCに対しても1万5000台それぞれに真摯に対応すべきなのです」(山根さん)

 また、ユーザー視点を持てというのは、常日頃から部下に対しても伝えていることだという。

 「事務所にこもっていてもユーザーの声は我々に届きません。現場に出てユーザーの声を聞くように言っています。こちらから積極的に働きかけないと、彼らの思いは理解できないし、会話しなければ両者のギャップも分かりません。お互いが話し合って、そこから解決策を見出していくことが大切なのです」(山根さん)

 その上で、今回のプロジェクトでは早期段階から導入計画のラフ案をOS担当者200人の前で説明し、お互いの意識合わせを行った。「ITソリューション本部から全社のタスクだからPCを入れ替えるというのは押しつけに過ぎません。このプロジェクトはIT部門とユーザー部門が一丸となって進めないと無理だという気持ちで向き合いました」と山根さんは力を込める。プロジェクトのキックオフ説明会の後も、3カ月に1回を目途に、進ちょく確認とフィードバックのためのミーティングを重ねた。通常のプロジェクトだと、1年に1度の施策説明にとどまっているので異例のことだった。

 プロジェクトを振り返り、山根さんは、このように最初の段階でメンバー全員の意識を統一したことが成功に結び付いたという。

 「200人の後ろには1万5000人のユーザーがいます。この200人と意識や情報を共有できたことで、彼らがそれぞれの部門に対してしっかりと働き掛けてくれたのです」(山根さん)

エンドユーザーの仕事を止めてはいけない。PCが壊れようが、システムエラーが起きようが、ユーザーの仕事がストップしないような世界をIT部門として目指していきたい エンドユーザーの仕事を止めてはいけない。PCが壊れようが、システムエラーが起きようが、ユーザーの仕事がストップしないような世界をIT部門として目指していきたい
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