ガン研究に従事するIBM Watson、医師免許獲得に向けて猛勉強中?IBM Information On Demand 2013 Report(2/2 ページ)

» 2013年11月06日 11時30分 公開
[伏見学,ITmedia]
前のページへ 1|2       

Watson、医師を目指す

 基調講演では、米国の人気クイズ番組「Jeopardy!」のチャンピオンとして一躍有名になったコンピュータ、Watsonの開発進ちょく状況についても触れられた。ステージに登壇したWatsonソリューションズ ゼネラルマネジャーのマノイ・サクセナ氏は「これから10年、20年先はIT業界全体でWatsonのような自ら学ぶシステムが一般的になっていくだろう」と意気込んだ。早くも2014年にはWatsonを基盤としたクラウドソリューションを提供することも明らかにした。

IBM Watsonソリューションズ ゼネラルマネジャーのマノイ・サクセナ氏 IBM Watsonソリューションズ ゼネラルマネジャーのマノイ・サクセナ氏

 IBMでは、コンピューティングシステムの進化を3段階で説明している。1段階目は、1950年代までの集計システムの時代。2段階目は、1950年代以降のプログラムが可能になった時代。そして3段階目が、意識的にシステムが学習する時代で、Watsonは第3世代のシステムと位置付ける。

 Watsonの大きな強みは自然言語処理技術を持つことであり、これがビッグデータ時代に不可欠なシステムになるという。現在、全世界で1日に生成されるデータ量は250京バイトで、世の中の総データ量の90%が過去2年間で作られた。さらに、その中の80%が非構造化データである。「Watsonは構造化および非構造化データの両方を認識して、確実な回答を返してくれる。データが増えれば増えるほどWatsonの性能は向上し、世の中に貢献していくのだ」とサクセナ氏は力を込める。

 既にWatsonは医療分野で実用化が進んでいる。現在までに医療に関するケースシナリオを2万5000件、医学文献を200万ページ分習得し、トレーニングは1万5000時間に上る。また、米国最大手の医療保険会社であるWellPoint、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターと共同で、ガン治療に向けた取り組みを推し進めている。

Ask Watsonの実行画面 Ask Watsonの実行画面

 「Watsonは国家試験に向けて猛勉強している。近い将来、Watsonが医師免許を取る日が来るかもしれない」(サクセナ氏)

 加えて、今後はコンタクトセンターなど企業のカスタマーサポート領域にも本腰を入れていく。今年5月には企業向けの顧客サービスおよびマーケティング支援システム「IBM Watson Engagement Advisor」を発表している。同システムの主機能である「Ask Watson」を用いて、ユーザーは不動産投資の相談や保険プランの確認などをWatsonと直接会話あるいはテキストによってできるようになる。ユーザーの質問に対して、膨大かつ多種多様なデータの中からWatsonが最適な解を導き出してくれるというわけだ。

 サクセナ氏は「これまでエキスパートが意思決定していたような分野でWatsonを活用すれば大きな効果が出る」と話す。製品化を待たずしてAustralia and New Zealand Banking(ANZ)や米Nielsenなど11社から受注契約を得たという。

 「実際にWatsonが量産され、商業製品になれば、世界は大きく変わり、もっとエキサイティングになるはずだ」(サクセナ氏)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ