クラウド運用管理

ハイブリッドクラウドを見据えたツールやサービスの選び方クラウドファースト時代の運用ベストプラクティス(2/2 ページ)

» 2013年12月25日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
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ツールやサービスの選び方

 まず運用管理ツールについて、長嶋氏は2つの変化が起こりつつあると解説する。1つは「サービス提供を司る機能を集めた製品スイート」の登場であり、もう1つは「伝統的な運用管理ツールの再編」だという。

 1点目の「サービス提供を司る機能を集めた製品スイート」は、ガートナーでは「クラウド管理プラットフォーム」と定義している。クラウド環境を管理・実行するための機能やサービスカタログが用意され、手順に従って実行環境を用意し、ユーザーに払い出していく仕組みや、ITリソースを監視してリアルアイムにリソースの追加や変更、削減などを制御する仕組みなどを備えたものだ。

 この「クラウド管理プラットフォーム」は、大手の総合ITベンダーや仮想化ベンダーなどから提供されているが、その多くはクラウド環境を意識したものとなっている。「システムの維持・管理ではなく、サービス提供の仕組みを実行するための基盤となっている点が従来とは異なる」(長嶋氏)という。

 2点目は、例えば近年にハードウェアベンダー各社が提供し始めている「統合型システム」が代表的だ。統合システムはハードウェアやソフトウェアが推奨構成によって組み合わされ、事前にベンダー側で検証などを済ませてからユーザーに提供される。その中に監視や予兆検知、自動化といった運用のための機能やテンプレートも組み込まれている。

 長嶋氏によれば、今後は統合型システムの利活用が広がっていくと、監視やサービスデスクといった従来型製品が再編される可能性もあるという。「5〜10年先の自社の運用管理製品フレームワークを見直すべき。ベンダーもしくは製品の事業部が将来のロードマップや戦略をユーザー企業に提示し、議論できるかどうかが重要になる」と長嶋氏は解説する。

 また、新興ベンダーやオープンソースの動向にも注目すべきだという。特にオープンソースではOpenStackをサポートする大手ベンダーが増えており、OpenStackに取り組む企業がデータセンター事業者やクラウド事業者だけでなく、ユーザー企業にも広まっていく可能性があるとしている。

 クラウドサービスを選ぶ場合、運用面ではクラウド事業者の姿勢を見極めることが大切だという。「いまだにSLAや管理ポリシーをきちんと公開していないケースやあいまいにしている事業者は多い。SLAなら定義や万一の保証内容が明確であるかを確認し、不明確な場合は説明を求めるべき」と長嶋氏はアドバイスする。管理ポリシーについても、例えばパッチ適用作業などが事前にアナウンスされているなどの対応がきちんとしていない事業者もある。

 また、運用管理に必要な機能やAPI、情報などの提供体制もポイントになる。例えば、社員などのユーザーから「レスポンスが遅い」というクレームがIT部門に寄せられた場合、その原因解明や問題の切り分けなどは非常に難しいだろう。少なくとも原因が自社にあるのか、クラウド側にあるのかといった判断ができるレベルの情報を事業者から提供しもらう必要がある。情報提供が無いなら、ユーザー企業は対応策を用意しておくべきだという。


 長嶋氏は、ハイブリッドクラウドが企業で本格的に運用されるようになるには、もうしばらく時間がかかるとみている。現時点では連携できるクラウドサービスやシステムが同一ベンダーや協業ベンダーの範囲に限定されていたり、ユーザーに提供される機能なども十分では無かったりするためだ。

 「ハイブリッドクラウドの実現はテクノロジーからみてもまだ挑戦段階といったところ。複数のクラウド環境を一元的に監視できても、何かを実行させるのは非常に難しい。何と何を組み合わせると、どこまでのことができるかを見極めていくことが大事」と話している。

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