データコムは現在、スーパーマーケット向け分析システムのシェア約40%を、50%、60%へと高めていく計画を練っている。その1つが、流通小売業約100社のPOSデータを収集、情報提供するサービスだ。現在、約20社が月額1万円程度で、POSデータを活用しており、納品するメーカーが流通小売業への提案に活用する。
例えば、たこ焼き粉メーカーが関西で売れている「たこ焼き」を、関東で販売するための企画を流通小売業に提案する。消費者に、たこ焼き器を無償で提供する。そうすれば、家庭でたこ焼きを作るようになり、たこ焼き粉が売れる。こんな仮説をデータ分析に基づいて立て、ある地域から始めてみる。
米Walmartなどに先行事例がある。納品するメーカーが店舗の在庫状況を見て、商品が足りなくなれば納品する仕組みだ。そのために、WalmartはPOSデータをメーカーに開示し、他社の商品を含めた売り上げ状況を見えるようにしているという。
このようにデータコムも、「POS分析をインフラにする」(小野寺氏)ことを目指している。店舗ごとの売り上げなどが一目で見られるなど、経営者向け管理会計へと広げる。「請求書の管理から、最終的には仕分け伝票まで分かるようにする。さらに、1人当たり生産性などさまざまな指標も見られるようにしたい」(同)という。
「最近は、大手ITベンダーと商談でぶつかならなくなってきた」。小野寺代表取締役は、大手ITベンダーの業務ノウハウが落ちていると推測する。2年から3年で配置転換していたら、経験を積めないからだろう。業務ノウハウを持つ人材が育たなければ、POSデータの分析、加工、活用までの提案力が弱くなる。「大手ITベンダーに現場を知っている人が少ない」。小野寺氏はそこに、チャンスを見出そうとしたのだろう。
残念なことにユーザー側の考えは大きく変わらない。IT部門は相変わらず大手ITベンダーに依頼する。失敗は責任問題になるので、それを恐れて大手に頼むのだろう。自らベンチマークし、最適な仕組みを選択しようとする力が不足しているのもかもしれない。
だが、データ分析と活用は市場に勝ち抜くために大切な武器になる。動員力ではなく、技術を磨き上げているIT企業と協業するようになっていくはずだ。40歳で起業した小野寺氏はそう確信し、「ユーザーの目線で仕事をすること」と心掛けている。
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