元外交官が見通すグローバル化の本質、「スピード」と「多様性」で大競争時代を勝ち抜け2014年 新春インタビュー特集(2/2 ページ)

» 2014年01月15日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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 もちろん、岡本氏は日本の良いところは否定しない。日本には、100年存続している企業が約2万社、200年以上続く企業も約1200社あるという。世界的に類を見ない老舗の多い社会であり、それは伝統を重んじる、安定的な良い社会であることに間違いはない。

 しかし、それは一方で新陳代謝が少なく、参入障壁の高い社会であるということでもある。日本人の同質性によって育んできた、世界に誇れる豊かな文化も尊いが、経済や産業となると多様性の欠如がそのグローバル化を阻もうとしている。

 「世界のGDPに占める日本の割合は、1994年の17.9%をピークに昨年は6.8%まで低下している。必然的に国際市場との交易が発展のためには最重要だ」(岡本氏)

  1. 中国      16.2億人
  2. インド     13.8億人
  3. ナイジェリア  4.4億人
  4. 米国      4.0億人
  5. インドネシア  3.2億人
  6. パキスタン   2.7億人
  7. ブラジル    2.3億人
  8. バングラデシュ 2.0億人
  9. エチオピア   1.9億人
  10. フィリピン   1.6億人
  11. メキシコ    1.6億人
  12. エジプト    1.2億人

 日本では少子化による人口の減少が将来にわたる深刻な社会問題となっているが、世界の人口は増加し続けており、2012年に国連が予測したところによれば、2050年には左のような人口大国が存在することになる。

 中国やインドなど、BRICsをはじめとするお馴染みの国々が並ぶが、現在は約8000万人のエチオピアやエジプトも躍進し、日本を追い抜いていく。

 「これらの国々に切り込んでいかないと日本企業にとってのマーケットは尻すぼみだ。もっと世界経済と交わっていくことが求められる」と岡本氏。

サイバー空間の知的コミュニティーには不参加?

 情報通信技術(ICT)の進展がグローバル化そのものを変えていることも忘れてはならない。

 岡本氏は、「これまでのグローバル化といえば、ビジネスの海外展開や国際交流、国境・移民政策だったが、インターネットの浸透によって、世界には新しい知的コミュニティーがサイバー空間に生まれており、そこに参加できるかどうかが問われている」と話す。

 ブログやソーシャルメディアへの書き込みでは、英語や中国語に劣らない量を誇る日本語だが、日本は新たに生まれつつある知的コミュニティーでは蚊帳の外ではないか、岡本氏はそう危惧する。

 企業の国際競争においても同様だ。グローバルで成功する企業の多くが、大胆なM&Aによって絶えず事業の組み替えを行い、より成長余力のある事業領域に資源を再配置しているのに対して、日本の企業はこの20年、ひたすらコスト削減に努めてきた。

 「海外企業の買収や投資はこれまでにも行われてきたが、より深刻な状況にあるのは、日本への直接投資。すぐにハゲタカファンドだと寄ってたかって攻撃するが、インバウンドのM&Aも受け入れ、活力ある事業変革に挑戦すべきだ」と岡本氏は指摘する。

日本が再び活力を取り戻すためには

 日本企業はモノづくりでは依然として一日の長がある。研究開発、デザイン、専門的判断などが欠かせない知識集約型産業でも引き続き強みを持つ。

 「省エネルギー技術においても、いったん目標が設定されれば、それを実現する世界一の実行能力がある」(岡本氏)

 少子高齢化もマイナス面ばかりではない。世界に先駆けてロボット大国になることができるし、高齢者でも事故を起こさない新しい交通システムの開発も加速する。急成長による都市問題を解決してきた実績もある。これらはいずれ世界が経験することだ。

 「ゼロから1を生み出す発明は米国が、100から1万にする大量生産は中国が圧倒的に有利だ。日本は1から100にするテーラーメイドの“多品種少量生産”を担えばいい。そこで世界一の粘り、真面目さ、ひたむきさ、こだわりを発揮すれば、日本は経済力を復活させることができる」と岡本氏は話す。

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