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» 2014年01月28日 08時00分 UPDATE

今こそビジネスマンが習得したい発想法:シナリオ・プランニングとは何か? (1/2)

2020年の東京オリンピック開催が決まった瞬間、多くの日本人の頭の中で大きな変化が起きました。今までのように、現在の延長線上で未来を考える「フォアキャスティング」から、未来から成立条件をたどっていく「バックキャスティング」へと発想が切り替わったのです。

[野村恭彦,ITmedia]

なぜバックキャスティングしなくなるのか

 読者の皆さんは「バックキャスティング」という言葉を聞いたことはありますか?

 現状の延長で未来を予想するのが、「フォアキャスティング」です。確率の高い事象に対応していこうという考え方で、天気予報がフォアキャスティングの代表格。一方、未来のある時点で大きな変化が起きると仮定して、それが実現するための成立条件を考え、その変化に備えるのがバックキャスティングです。「首都直下地震が起きるとどうなるか?」という危機管理がバックキャスティングの代表格といえるでしょう。

フォアキャスティングとバックキャスティング フォアキャスティングとバックキャスティング

 「子どものころの夢は?」と尋ねると、男性の2人に1人くらいが、プロのスポーツ選手になりたかったと答えます。続けて、「プロスポーツ選手になるために何をしておかなければならないと思っていましたか?」と尋ねれば、「強豪と言われる高校に入学して全国大会に出場する」といった答えが返ってきます。

 このように、未来から成立条件をたどって考えていくのが、バックキャスティングです。子どものころは、誰もが夢を持ち、バックキャスティングを当たり前のように使っていました。それが大人になるにつれて、だんだん夢を語らなくなります。できるだけ確率の高い未来を想定し、効率的に成功を目指そうとします。つまり、フォアキャスティングが得意になるわけです。大人になってもバックキャスティングしている人を、「変わり者」と呼ぶようになります。

 企業においては2年先のことすら考えません。最近は3カ年計画を作ってもしょうがないと考え、短期計画しか作らない企業が増えています。計画を作るときは、社内から現状データを集めます。加えて、市場予測です。できるだけ間違えのないよう、フォアキャスティングしていきます。ここでは調査・分析力が求められます。

 一方、バックキャスティングをしようとした途端、そこにはビジョン、言い換えれば経営者の意志が求められます。どんな未来を自社は作り出したいのか、どんな未来に備えなければいけないのか――。予測できる範囲を越えて、自分たちが「あり得る」と信じられる「未来のイベント」を共通で信じ込まなければ、組織的にバックキャスティングを始めることはできないのです。いきおい、企業の短期計画はフォアキャスティング、極論すれば前年度比10%アップ目標を掲げるだけのつまらないものばかりになります。

「トーキオ」

 ところが、東京へのオリンピック招致活動が成功し、国際オリンピック委員会のジャック・ロゲ会長が「トーキオ」と言った瞬間、歓喜の中で日本人のほとんどの脳内でバックキャスティングが始まりました。これは、とてつもなく大きな変化でした。誰もが一斉に、「2020年に自分は何をしているか?」「2020年に向けて、どんなビジネスが生まれるか?」などを考え始めたのです。

 IT業界では、「2020年までにどんな新しいITサービスを立ち上げられるか?」「ITによって世の中をどれだけ便利にできるか?」という目標が生まれました。2020年に向けて特需となる建設業界では、逆に一気に冷え込む2020年以降に備え、「いかにサービスやメンテナンスで儲けを出せる体質に変容できるか?」という目線で動き始めています。

 このように、これまでフォアキャスティングだけで動いていた組織が、バックキャスティングをするようになったこと自体が大きな進歩です。しかし、ここから他社とさらに差別化するためには、「複数のシナリオ」を持つことが必要になります。

 東京オリンピックで日本がさらなる発展を遂げる場合と、その後の反動で一気に不況になる場合で、企業のとるべき戦略は大きく異なるからです。それが明確になってから反応するのでは遅過ぎます。

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