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» 2014年02月10日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:SAPが語るクラウドサービスレイヤの新解釈

SAPジャパンが先週開いた記者会見で、IaaS、PaaS、SaaSといったクラウドサービスのレイヤについて新解釈を示した。興味深い話だったので取り上げておきたい。

[松岡功,ITmedia]

クラウドとプラットフォームの会社に変身

 「SAPはクラウドとプラットフォームの会社に変わりつつある」

 SAPジャパンが2月6日に開いたビジネス戦略記者会見で、説明に立った安斎富太郎社長はこう強調した。同社はこれまでERPを中心としたアプリケーションソフトウェアの会社と広く認知されてきたが、ここにきてクラウドとプラットフォームを前面に打ち出し、大きく変身しようとしている。

 右から、SAPジャパンの安斎富太郎社長、馬場渉バイスプレジデント クラウドファースト事業統括本部長、堀田徹哉バイスプレジデント ソリューション&イノベーション統括本部長 右から、SAPジャパンの安斎富太郎社長、馬場渉バイスプレジデント クラウドファースト事業統括本部長、堀田徹哉バイスプレジデント ソリューション&イノベーション統括本部長

 SAPは、クラウド事業については「SAP Cloud」と称してさまざまなクラウドサービスを展開する一方、インメモリデータベース「SAP HANA」をプラットフォームに位置付け、「SAP Cloud powered by SAP HANA」を前面に打ち出している。安斎氏が語った「クラウドとプラットフォームの会社」とは、まさしくこのことである。

 安斎氏によると、SAPにおける2013年のクラウド事業の売上高成長率は、グローバルで2.3倍、日本で5倍と急成長を遂げた。分母がまだ小さいこともあるが、新規事業として勢いよく立ち上がっている状況が見て取れる。

 安斎氏は2013年における日本でのクラウド事業のトピックとして、「クラウド型ERPであるBusiness ByDesignの東南アジア展開におけるNECとの協業」「国内初のクラウド関連BPOサービスを人事領域でパソナと協業」「住友重機械工業をはじめとしたHANA Enterprise Cloudの採用加速」「IIJをはじめとしたクラウドサービスパートナーの拡大」などを挙げた。

 また、同氏は日本でのクラウド事業における新たな取り組みとして、今年4月にも東京と大阪の2カ所にSAPが運営するデータセンターを開設する計画を明らかにした。ただ、「自前のデータセンターだけでなく、パートナー企業を通じてSAPのクラウドサービスを広げていくことにも引き続き注力したい」とも。この点については、以前にも本コラムで「自前クラウドにこだわないSAPの勝算」(2013年6月10日掲載)と題して解説したが、まさしくSAPならではの戦略展開である。

 一方、HANAビジネスの売上高成長率も、グローバルで69%増、日本で2.3倍と高い伸びを示した。安斎氏によると、新規のSAP ERP向けデータベースの50%以上にHANAが採用されたという。また、OLTP(オンライントランザクション処理)へのHANAの採用がHANA案件全体の30%を超えた。当初、HANAはOLAP(分析処理)向けと見られていたが、両処理の統合基盤として認知されつつあるようだ。

IaaSとPaaSはプラットフォームに集約

 以上が、記者会見で明らかになったSAPにおけるクラウド事業とプラットフォーム展開の状況だが、質疑応答でクラウドサービスのレイヤをめぐって興味深いやりとりがあったので紹介しておきたい。

 記者からの質問は、HANAによるクラウドサービスはPaaSととらえてよいのか、というものだった。この質問に対し、SAPジャパンでクラウド事業の責任者を務める馬場渉バイスプレジデント クラウドファースト事業統括本部長がこう答えた。

 「クラウドサービスのレイヤはこれまでIaaS、PaaS、SaaSと分けられてきたが、これはオンプレミス時代のインフラ、ミドルウェア、アプリケーションを置き換えただけで、新たなクラウド時代にふさわしいかといえば疑問符がつくのではないか」

 「SAPではクラウドサービスのレイヤを、まず人がサービスをどう使うかという利用形態が上層にあり、その下にそこで使われるさまざまなアプリケーションがあり、最下層にそれらのアプリケーションを動かす環境としてのプラットフォームがあるととらえている。HANAはまさしくそのプラットフォームとなる」

 このとらえ方は、馬場氏が言う通り、これまでIaaS、PaaS、SaaSと分けられていたクラウドサービスのレイヤとは異なるもので、さまざまな示唆に富むメッセージが込められている。

 馬場氏の説明を基にそのメッセージを読み解いてみると、まず上層の利用形態ではモバイルによる利用シーンを想定するとともに、アナリティクスやユーザーエクスペリエンスなどの技術革新が、今後のクラウドサービスのキーになるととらえているようだ。とにかく、これまではレイヤとしてとらえられていなかった人とアプリケーションの間に、モバイルによる利用シーンを中心として新しいレイヤを設けるべきだという考え方だ。

 一方、最下層のプラットフォームは、端的にいえば、これまでのIaaSとPaaSを集約したとらえ方だ。馬場氏曰く「新たなプラットフォームの構成要素としては、従前のハードウェアやOS、ミドルウェアなどがあるが、これらはアプリケーションを動かすためのプラットフォームとしてくくってしまっていい」という考え方である。

 この新しい解釈は、プラットフォームをHANAで統一し、アプリケーションにはERPなど競争力のある製品を持ち、利用形態に革新をもたらすモバイルやアナリティクスなどのソリューションにも注力しているSAPにとって非常に都合のよいものともいえる。ただ、着眼点は的を射ているところが多々あるような気がする。とりわけ、新たなプラットフォームをめぐる解釈は、クラウドサービスにおける勢力争いの“肝”になってくるかもしれない。この点については、今後もさらに掘り下げて考えていきたい。

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