オープンなクラウドを目指す団体OSCAが「OpenStack」の運用検証レポートを公開すべての企業にクラウドを

オープンなクラウドを推進する団体「OSCA(Open Standard Cloud Association)」のメンバーであるデル、日立ソリューションズ、レッドハットの3社が、オープンソースのクラウド基盤である「OpenStack」を用いてプライベートクラウドの実システムを構築し、運用上の注意点を検証したレポートを公開した。OpenStackが求められる背景や今回の運用検証レポートについて、3社から話を聞いた。

» 2014年02月28日 10時00分 公開
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OpenStackを実システムで検証したリアルな情報を公開

 オープンソースのクラウド基盤である「OpenStack」への期待が高まっている。このOpenStackを利用してプライベートクラウドの実システムを構築し、運用上の注意点を検証したレポート「Red Hat OpenStack 3.0 運用検証報告書」を、デル、日立ソリューションズ、レッドハットの3社が公開した。

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 今回の報告書は、オープンなクラウドを目指し、2012年2月に発足した団体であるOSCA(Open Standard Cloud Association)の活動の一環として作られたものだ。もちろん、3社ともOSCAのメンバーである。

レッドハット シニアソリューションアーキテクト&クラウドエバンジェリストの中井悦司氏 レッドハット シニアソリューションアーキテクト&クラウドエバンジェリストの中井悦司氏

 OpenStackは、オープンソースで提供されるIaaS(Infrastructure as a Service)基盤である。今回の検証では、レッドハットが提供する商用ディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform」を用いてプライベートクラウドを想定したシステムを実際に構築し、運用上の注意点を洗い出した。

 レッドハットでシニアソリューションアーキテクト&クラウドエバンジェリストを務める中井悦司氏は、今回の検証意義について次のように話す。

 「OpenStackはクラウドを作るためのコア・コンポーネントではあるのですが、実用的なクラウドを構築するには、ユースケースに応じた作り込みが求められます。そこで今回は、具体的な顧客要件やサービス内容を想定し、OpenStackでプライベートクラウドを構築、運用する検証を行ったわけです」

日立ソリューションズ 技術開発本部 オープンソース技術開発センタ センタ長 吉田行男氏 日立ソリューションズ 技術開発本部 オープンソース技術開発センタ センタ長 吉田行男氏

 今回の検証では、「社内向けVM(仮想マシン)レンタル」という具体的な利用形態を想定し、実システムを組み上げた上で、運用上の注意点を洗い出した。実際のシステム構築と運用にかかわった日立ソリューションズ技術開発本部オープンソース技術開発センタのセンタ長、吉田行男氏は次のように話す。

 「技術文書でOpenStackによるシステム構築の手順は分かっても、実システムの運用でどのような問題があるのかまでは分かりません。今回の報告書を見て、運用上の知見を知ってもらえたらうれしいです」

 OpenStackの採用を検討中の企業ユーザーにとって、今回の報告書はほかの資料では得られない情報を満載した文書になっている。例えば、特定のシステム構成で「ダッシュボードから1つの操作でVMを同時に立ち上げる場合、いくつまでが適当か」といった実践的かつ仔細な情報も手に入るのだ。

クラウド領域でベンダーロックインからの解放を目指す

 OSCAは、今回の報告書を作成したデル、日立ソリューションズ、レッドハットをはじめ、インテル、ヴイエムウェア、シトリックス、日本マイクロソフト、NTTデータなどそうそうたる顔ぶれが集まっている。OSCAの狙いについて、OSCAでテクニカルリードを務めるデルのエンタープライズ・ソリューション統括本部エンタープライズビジネス開発部オープンクラウドビジネス推進、増月孝信氏は次のように話す。

デル エンタープライズ・ソリューション統括本部 エンタープライズビジネス開発部 オープンクラウドビジネス推進の増月孝信氏 デル エンタープライズ・ソリューション統括本部 エンタープライズビジネス開発部 オープンクラウドビジネス推進の増月孝信氏

 「OSCAは、オープンクラウドの普及と市場活性化を推進する団体。その背景には、クラウドがベンダーの独占的な世界であり続けることは、時代に逆行しているとの考えがあります。OSの領域がそうであるように、クラウドの領域でもベンダーロックインから解き放たれた世界を作り出したいのです」

 そのOSCAが特に力を入れているのがクラウド基盤、OpenStackへの取り組みだ。中井氏は、「プライベートクラウドという言葉を数年前から聞くようになりましたが、その実態は仮想化統合ソリューションが主だっています。最近になって、より本格的な、ワークロードに対応してリソースを自動的に増やしたり減らしたりできる、本来の意味でのクラウド基盤への要求が高まっているのです」と説明する。

 このような柔軟な自動リソース割り当てが求められるワークロードの典型的な例は、ソーシャルネットワークサービスやオンラインゲームサービスが思い浮かぶ。しかしながら、エンタープライズシステムの分野でも、こうした“本来のクラウド”の需要が高まっているという。

 「そのようなクラウド技術は、1社だけで考えて作り上げられるものではありません。多くのプレイヤーの知恵を集めていかないと作れません。そこで多くの企業がコミットするオープンソースプロジェクトのOpenStackに注目が集まっているのです」(中井氏)

 OpenStackのプロジェクトは、非営利団体「OpenStack Foundation」が管理する。異なる企業から集まった開発者が、この団体の下で共にOpenStackの開発を進めている。ビジネスでは競合の関係にある企業たちが、オープンソースプロジェクトでは力を合わせる。これがオープンソースソフトウェア開発プロジェクトの姿だ。

 その中でも、OpenStackに対して多くの貢献を行っているのがレッドハットだ。

 「OpenStackの最近のバージョンである『Havana』の統計情報を見ると、ソースコードの変更実績、チケットのクローズ実績ともに、レッドハットが1位」(中井氏)だという。

 特に、チケットのクローズ実績、すなわちバグを解決した件数ではレッドハットが群を抜いている。OpenStackを実用的な環境に仕上げる上で特に大きな貢献をしていると言えるだろう。

モジュールを取捨選択できる自由度の高さがOpenStackの魅力

 OpenStackに対して期待が集まる理由はいくつかある。最も大きな理由はクラウド環境のインタオペラビリティ(相互運用性)への期待だ。柔軟なリソース割り当てを行えるIaaS基盤がオープンソースとして公開されていることにより、異なるベンダーが提供するクラウドの間で、システムを引っ越しできるようになる。もう一つの理由はOpenStackの自由度が高いことだ。

 「日本のIT環境では、OpenStackの自由度の高さへの期待が大きいです。モジュラリティが高く、どのモジュールを使うかが自由で、与えられたモジュールすべてを使わなくてもいいからです」(吉田氏)

 企業ユーザーにとっては、OpenStackが実環境で安定稼働してくれるかどうかも気になるところだ。今回の報告書を作成した背景には、運用検証の結果を開示することで、安定して利用できる環境であることを示す意味がある。

 とはいえ、実際の運用検証の現場では、それなりに苦労もあった。特に問題となったのは、OpenStackの開発が急ピッチで進んでいることから、更新やバグフィックスのサイクルが速いことだ。もちろん、新機能やバグ修正を含むバージョンがどんどん出てくること自体は良いことである。OpenStackのプロジェクトに活気があり、成長中であることを意味するからだ。その一方で、最新バージョンを追い続けると、今日作った環境を明日には更新しないといけないといったケースも出てくる。システムの安定性を求める立場からは、これは困ったことである。

今回のOpenStack検証環境 今回のOpenStack検証環境

 今回の運用検証では、当初は最新バージョンを追いかけて更新を繰り返したものの、途中からは特定の日付のバージョンで検証を進めるようにしたという。この状況について、中井氏は次のように話す。

 「OpenStackの更新が頻繁なのは、十数年前のLinuxもそうだったように、過渡期、成長期にあるからです。もちろん、企業ユーザーからは安定化、長期サポートを望む声も寄せられています。OpenStackは、Linuxのときよりも短い期間で安定化するだろうと見ています」

 増月氏は次のように補足する。

 「デルとレッドハットはエンタープライズ向けに、よりスケーラブルなクラウド環境を実現すべく、『Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(通称:Red Hat OpenStack)』 上での共同ソリューションを開発しています。安定版を望む場合には、こうした商用ディストリビューションを使うことがお勧めです」

OpenStack 4.0では管理機能をさらに強化

 今回の運用検証レポートでは、「Red Hat OpenStack 3.0」に基づき検証が行われたが、最新バージョンの「Red Hat OpenStack 4.0」が先ごろ登場した。追加された主な機能は、オーケストレーション機能の「Heat」と、負荷監視や課金に利用できるメータリング機能の「Ceilometer」だ。

 「Heatを使うことで運用の手間が省けるようになります。また、Ceilometerを使うことで、今まで集め切れていなかった、より深い情報、例えば、ある期間に特定した情報などを閲覧できるようになるのです」(吉田氏)

 このように、OpenStackは次々と実用的なクラウド基盤としての機能を強化しつつあるのだ。

当たり前に使えるクラウド基盤を目指す

 OSCAの今後の展望についてはどうか。

 「今後OSCAは参加メンバーと協力しながら、柔軟なオープンクラウド実現に向けた相互運用性や、SDN(Software-Defined Networking)/OpenFlowなど、進化するネットワーキングテクノロジーについても、いい形で取り込んでいきたい」(増月氏)

 また、OpenStackによるプライベートクラウド構築は、一般の企業にとってハードルが高く、パッケージソフトを導入すれば済むようなものではない。そこでSIerには新たな役割が求められる。吉田氏は「顧客に対してどのように安定したシステムを提供し、運用するか。そのような知見を常に蓄積しているし、それを世の中に広めていきたいです」と応じる。

 近い将来、OpenStackは普及し、クラウドの恩恵が当たり前のように享受できる時代になると考えているという。「今やハードウェアやOSはコモディティ化が進んでいますが、近いうちにOpenStackによるクラウド構築も当たり前になるでしょう。クラウドのデファクトスタンダードとしてOpenStackを利用できて、その上位レイヤーで何をするかを考えるようになるはずです」(中井氏)

 OpenStack、そしてオープンなクラウドの推進に取り組む団体OSCA。デル、日立ソリューションズ、レッドハットの談話からは、その力強い将来像が見えてくる。

右から中井氏、増月氏、吉田氏、そして今回のプロジェクトに積極的に関与した日立ソリューションズ技術開発本部オープンソース技術開発センタの平原一帆氏 右から中井氏、増月氏、吉田氏、そして今回のプロジェクトに積極的に関与した日立ソリューションズ技術開発本部オープンソース技術開発センタの平原一帆氏

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Red Hat、Red Hat Enterprise Linux、Shadowman ロゴ、および JBoss は、米国およびその他の国における Red Hat, Inc. の登録商標です。Linuxは、米国およびその他の国における Linus Torvalds 氏の登録商標です。OpenStackのワードマークと OpenStack のロゴは、米国とその他の国における OpenStack Foundation の登録商標 / サービスマークまたは商標 / サービスマークのどちらかであり、OpenStack Foundation の許諾の下に使用されています。Red Hat は、OpenStack Foundation にも OpenStack コミュニティにも所属しておらず、公認や出資も受けていません。

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提供:レッドハット株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日

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