2000人の村と30万人都市でシステムを共有化できるか?――「ふくおか自治体クラウド」の挑戦国内最大規模の自治体クラウドへ(2/3 ページ)

» 2014年03月11日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

30万人都市と2000人の村でシステムを共同利用するには?

 ふくおか電子自治体共同運営協議会がクラウド導入に向けて検討を始めたのは2009年のこと。他県の取り組みを参考にしつつ、参加する各自治体のシステムのクラウド化に向けた構想を練っていった。

 だが、検討を進める中で1つの課題が浮上した。それは規模が異なる自治体におけるシステム間の“壁”である。

 「ふくおか電子自治体共同運営協議会は、人口約30万の中核市から約2000人の村まで、大小さまざまな市町村で構成されている。これほど規模が違うと利用している業務アプリケーションでの処理内容も異なるため、33の市町村全てでシステムを統合するのは事実上不可能という意見が多くの自治体から寄せられた」と古保里さんは振り返る。

 そこで同協議会があみ出したのが「3ステップのクラウド導入」というアプローチだ。まずは自治体の規模を問わず共同利用しやすいハードウェアリソース(インフラ)のみをクラウドで提供(IaaS)し、その後、各自治体の要望や状況に合わせてその上のレイヤー――アプリケーションプラットフォーム(PaaS)やアプリケーションそのもの(SaaS)――をクラウドで提供する方法を採った。

photo 「ふくおか自治体クラウド」の概要(出典:ふくおか電子自治体共同運営協議会事務局)

 「コスト削減のためには全自治体で同じSaaSサービスを使うのが理想だが、規模が異なる自治体間でシステムを完全に統一するのは難しい。そこで、まずは各自治体が利用している既存システムをIaaSに移行し、徐々にPaaS、SaaSの共同利用を進めていくことを基本方針とした」(古保里さん)

 同協議会はこうして、各市町村がハードウェアのリプレイス時期などに合わせて順次クラウドに移行していける体制を整備した。現在、筑後市が第1号ユーザーとしてIaaSの利用を始めており、2014年度内には複数の自治体が利用をスタートする予定という。

「専用クラウド環境を安価に」――地元DC事業者を選んだ理由

 ふくおか自治体クラウドは県が保有するデータセンターではなく、民間事業者のデータセンターを利用して提供されている。IaaSサービスの調達に当たっては、以下の点を考慮して仕様を固めていったという。

 まず、独自のクラウド環境を構築しようとすると利用料が高価になるため、民間事業者の一般向けパブリッククラウドサービスの中に専用区画(いわゆるバーチャルプライベートクラウド)を確保する方式を採った。また、各市町村が利用しやすいよう、全てのサービスが事前に決められた価格表に基づき提供されるようにした。

 さらに、参加市町村ではWindowsやLinuxベースのアプリケーションを使っているケースが多いため、それが稼働するVMwareベースのクラウド環境を用意することにした。これらを条件に公募を実施し、最終的に九州電力の関連会社で県内にデータセンターを持つキューデンインフォコム(福岡市)を採用したという。

 こうして調達したIaaSサービスの料金は、当初想定していたより安価に収めることができたと古保里さんは話す。「県内のデータセンターを利用することで、通信費用を含む利用料を比較的安く抑えられた」(古保里さん)

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