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» 2014年04月08日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:社員第一を貫くシステムエグゼの経営

自社商品の開発や人材教育、ブランド力向上のための施策などに積極的な投資を行うシステムエグゼ。受託ソフト開発企業が勝ち続けるために描くビジョンとは。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 社員約400人を擁してシステムインテグレーション(SI)事業を展開するシステムエグゼが自社商品の開発に力を入れている。新規顧客の開拓と経営の安定化を図るのが目的。そのため、自社商品の開発や社員教育などに売り上げの約5%を振り向ける。受託ソフト開発会社が勝ち抜く1つの戦略に思える。

得意技を明確にし、他社との差異を鮮明に

 創業17年になるシステムエグゼは、システム構築の案件を獲得するにあたって、プライムでの受注にこだわり続けている。佐藤勝康社長が同社を設立する前に、約25年間勤めたソフト開発会社における苦い体験が根っこにある。「社員の成長あってこそ、会社の成長がある」と思った佐藤社長は、社員第一を経営理念の1つに掲げた。実現できなければ、ソフト開発会社としての存在価値がなくなるとの信念がある。

 具体的な実現策は、仕事を通じての成長と、いたってシンプルだ。だから、佐藤社長はプライムにこだわる。もちろん大手の下で開発に参画することもあるが、小さな案件でも直接請け負うのを基本とした。「派遣になったら、社員も面白くないだろう」(同)。とはいっても、創業したばかり中小企業に直接受注はそう容易なことではなかった。

 そこで創業3年目に入ったころ、得意技を明確にした。競合他社との差異化を図るためで、業種は保険、技術はデータベース(DB)とし、それぞれに磨きをかけていく。結果、「システムエグゼにしかできない」と言われる力がつけば、自ずとプライムを勝ち取れるというわけだ。

 8年目になると、自社商品の開発、販売に乗り出す。システム構築をメインにするそれまでの体制では、「今後の成長に限界が来る」と佐藤社長は思ったからだ。最大の課題は新規顧客の開拓で、佐藤社長ら経営陣の人脈や取引のあるユーザーからの紹介に頼っていたこと。それでは、「より多くの顧客を獲得するのがだんだん難しくなる」(同)。

 自社商品に活路を求めたのは、そこに理由がある。「決してヒット商品に仕立てる必要はない。商品だけで収支を取るつもりもない」(佐藤社長)。システム構築案件を獲得する「営業の切り込みツール」(同)と位置付けた。例えば、「開発費用を半分にするが、著作権は当社に帰属させてほしい」とユーザーに説明し、開発した成果をベースに商品化に取り組む。ユーザーにとっても、IT投資を抑えられるメリットがある。一方、システムエグゼは自社商品を持って、関連の展示会に出展し、見込み顧客を探し出すことができるわけだ。

2022年のゴールを描いた長期ビジョンを作成

 自社商品の第1号であるDB監査ツールの開発には1年を費やした。これはDBへのアクセスを監査するもので、顧客情報の管理や保護を徹底したい企業などが採用する。2004年に発売したが、現在も着実に売れており、累計ユーザー数は約60社になったという。DB関連は、テストデータの生成ツールなどに拡充している。

 アプリケーション分野の自社商品も、得意の保険から生産管理、医療、会計とへと広げている。既に保険事業者向けの少額短期保険システムと、中小製造業向けの生産管理システムを商品化した。医療分野は2015年3月までに商品を完成させる予定で開発を進めている。会計分野向けソフトは企画段階だという。

 こうした自社商品とシステム構築をからめた営業活動を強化するために、マーケティングを含めた20人弱の営業を配置する。社員の約5%を営業として抱えるソフト開発会社は少ない。将来、売り上げの5割を構成する安定した事業に育てるためでもある。

 営業は、クラウドサービスの売り込みも担う。「クラウドを避けることはできない」(佐藤社長)と考えて、2012年12月から中小企業向けクラウドサービスの提供を開始した。NTTコミュニケーションズのクラウド基盤を活用し、ユーザーのIT環境を移行する、いわば引っ越しサービスである。約20社(2014年3月時点)のユーザーを獲得したが、コスト意識の高い、社員100人未満の中小企業が大半を占めている。新規開拓の効果的な武器になっている。

 目下のところ、仮想化環境構築とデータをセンターに移行する案件が多いが、システムエグゼはクラウドへの移行に伴うシステムの再構築を提案する。クラウド専門チームを作り、IT費用が安価になり、変革へのスピーディな対応が可能になるなどを説いている。

 ただし、「クラウドへの移行ビジネスは、手離れが悪い」(佐藤社長)。1社1社のIT環境が異なるからだ。テンプレート化するなどし、作業効率を高めていくには、顧客を増やすことが欠かせない。技術面でも、アプリケーションからインフラ、通信などと幅広い知識を持つ人材を揃える必要がある。そんなクラウド担当の技術者を最近、4人体制から6人体制に増員したところだ。

 システムエグゼは、こうした新規事業や新規顧客を開拓する10年後のゴールを描いた長期ビジョンを作成した。10年後の2022年に、会社全体と事業本部ごとにターゲットのユーザーを決めて、どんなサービスを提供するのか、そのときの組織はどうあるべきかなどをまとめたのが長期ビジョンだ。1年の歳月をかけて作り上げたもので、その中には自社商品の売り上げ構成を5割にする目標や大型商談の獲得などもある。

 そのカギが、社員の満足度と技術力を高めることにある。2013年12月期に売上高約49億円、営業利益約2億5000万円になったシステムエグゼは、次のステップに進もうとしている。


一期一会

 「社員を成長させる。社員の力を伸ばす。そして、社員を生かす」。佐藤社長は、いわば“社員第一主義”を唱える。社員がいろんな経験を積み、成長する上で、プロジェクトに失敗したり、見積もりを間違えたりすることあるだろう。

 経営がこうしたリスクをとらなければ、社員は成長できないし、事業も伸びない。「経営もガラス張りにしている」。それは株主構成から分かる。投資育成会社(1人と計算)を含めたシステムエグゼの株主は83人になるが、取締役と社員の株数は、投資育成会社の持ち分を除いたほぼ半分ずつになっている。

 社員を大切する。その一環から、長期ビジョンを作成した今、社員一人一人に自身の10年後のキャリア、つまり自分のゴールを考えさせている。例えば、目指すエンジニア像が見えてくれば、そのためのキャリアパスも用意する。だから、商品開発や教育、人材採用、ブランド力向上などのために売り上げの約5%を投入することを毎年の事業計画に盛り込んできた。その成果が徐々に現れてくるだろう。

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