「できる新入社員」のセキュリティ実践術――オフィス編萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(1/2 ページ)

社会人にとって情報管理やセキュリティ対策は“当たり前”とされるだけに、新入社員はどんな点に注意すればいいのだろうか。今回はオフィス編での実践術を紹介しよう。

» 2014年04月18日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

メールの内容は簡潔に

 メールやSNS(特に報告の場面ではTwitterやLINE)での報告は、規則などで義務付けられている場合を除き、極力会話を優先してほしい。情報セキュリティの観点ではメールの情報量を1とするなら、電話は数千、会話は数万〜数十万と、桁違いの情報量になる。その時の声の感じや口調、訛りの出し方、抑揚、トーン、声量、音質、顔付き、しぐさ、表情、手や足の挙動、頭の動き、クセ(爪を噛む、貧乏ゆすり、額に手をやる、など)、身振り手振り、舌の出し方、眼の動き、眉の動向パターン、首の動かし方、話のスピード――など様々な要素がある。

 筆者はこれらについて情報量を数値化した。それぞれ加算していくとすると、メールの数万〜数十万倍(比較の方法や領域の範囲によって大きく異なるが)となった。同じ言葉でも「文字の固まり」のメールと、面談で相手が捉える雰囲気や前後の会話の状況なども総合したものでは真逆の印象になるケースが多々ある。このことは中高年の方なら経験をお持ちだろう。

 いまや、隣の席にいる上司や指導担当者への報告ですらメールで済ます新入社員もいる。証拠としてメールや作業日誌に残したいという気持ちもあるようだが、きちんと相手の顔を見てコミュニケーションをとることは基本だ。特に営業が絡むものなら、雑談から思いがけない売上につながるケースも多いので、疎かにしてはいけない。人類はまだメールやSNSに慣れてはいないのだ。

CCとBCCの重要性を認識する

 学生時代にその意味を知っていても、余り気に留めなかった点ではないだろうか。ビジネスのメールでCCやBCCの使い方をミスすると、取り返しのつかない事になってしまう。筆者もミスした新入社員をこれまで数多く見ているので、今年の新入社員もぜひ自覚を持ってほしい。

 本来、CCやBCCは同じ内容のメールを複数の相手へ同時に送信できる効率性のためにある。今では、CCはメールを受け取った人が、そのメールをほかに誰が受け取っているのか分かるために使われている。一方、BCCはそのことを分からないようにしたものだ。

 ビジネスではこの差が大きい。例えば、CCだけなら自分がこの仲間(メールの内容を共有する集団)であるということを送信者以外の全員に知れてしまう。また、第三者ではなく当事者であるということを知らしめるという宣言にも等しい。

 メールアドレスを原則非公開としていても、CCで送付した人たちには分かってしまう。状況によってはそれだけで契約を取れなかったり、今後の動きに大きな制約をもたらす事にもなりかねない。CCを使うということは、それほど重要な内容である場合が少なくない。もしメールでCCを使うなら、事前に近くの先輩社員に確認するといい。原始的な方法だが、これにより責任転嫁もできるので必ず実践してほしい。

電話照会に注意する

 新入社員が一人で留守番する時に、最も注意すべきなのが情報の漏えいだ。対応メモをきちんと残すことや、外出している先輩に伝言することよりも、はるかに重要な点である。

 実際に筆者が遭遇した例では、警察署を名乗る人物からの電話で、ある顧客の個人情報を伝えてしまったケースがあった。本人は「警察からの電話だからやむを得ない」と自己判断し、その場で即答してしまった。案の定、その警察を名乗る人間は実在しなかった。この新入社員は真っ青になり、事後対応に追われた。

 後日その会社に聞いてみると、幸いにも大事にならなかったが、その新入社員は既に辞めていた。昨年みられた事件では、市役所の職員から(本来教えてはいけない個人情報を)うまく聞き出し、殺人事件にまで発展している。決して個人情報を甘くみてはいけない。個人情報の取り扱いは、「生きるか死ぬか」という問題にもつながりなりかねないのだ。

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