自動車大手のDaimlerグループで2008年からカーシェアリング事業を欧米で展開するCar2Goは、IBMが2月に発表したパブリックPaaS「BlueMix(現在はβ版で名称はコードネーム)」やIaaSのSoftLayerへのサービス基盤の移行を進めているという。
Car2GoのCEOのニコラス・コール氏によれば、19歳の自動車保有率は1987年の87%から2010年には70%に減少した。「かつての若い世代は自動車を持つことに憧れたが、今では使いたい時に使えればよいという感覚だ」(同氏)
同社は顧客がオンデマンドで車をレンタルできるサービスを提供しており、約70万人の会員と1万台の車両を保有する。顧客はモバイルアプリで近隣にある車両を検索し、分単位の課金でレンタルする。乗り捨てもサービス提供する都市内では自由だ。ユーザーは1日平均7回、30分程度レンタルしているという。
IBMのクラウド基盤への移行は、将来における自動車の保有率のさらなる減少に備え、同社の事業展開を迅速に行っていけるようにしたというDaimlerグループの狙いがある。
DaimlerグループのMercedes-Benzでは自動運転技術の開発に注力しており、無人運転を実用化段階に近付けつつある。また、「近い将来、ある場所に行きたいというユーザーに対して、モバイルアプリで最適な交通手段や費用を知らせ、全ての決済までできるようにしたい」とコール氏。もし無人運転が可能になれば、自動車をレンタルしたいという会員のもとに無人運転で配車を行えるようになる。これによって、今まで以上に顧客満足度を高めると同時に、配車や回送などの自動車の運行効率も劇的に向上すると期待される。
もちろん、こうした計画には法令などさまざまな環境整備を待たなければならないものの、諸課題がクリアになった際の事業展開においては、自社でサービス基盤を抱えるよりもクラウド基盤を活用した方がはるかにスピーディーにできるとの考えがある。
IBMによれば、BlueMixを2月に発表して以降、多数の新興企業や顧客企業がこのプラットフォームの活用に挑んでいるという。現時点ではあくまでβ版の位置付けだが、実際には本格利用に乗り出すケースが少なくないようだ。
基調講演ではモバイル決済ソリューションを手掛けるSquareが、BlueMix上で開発および実証中というモバイル決済アプリケーションのデモを披露した。iPadに装着したカードリーダーでクレジットカード情報を読み取り、BlueMix上のアプリケーションで決済処理を行うというもので、新たなデバイスへの対応はBlueMix上でたった3行のコードを追加するだけで済むという手軽さを紹介している。
いわば「モバイルレジ」にあたるが、従来のモバイルレジの実現にはバックエンドシステムとの連携を含めて、数多くの開発工数を必要とする。デモを披露した同社のマーク・ジェン氏は、「BlueMixではバックエンドシステムへの接続やオートスケール処理なども簡単にできるので、Rapidリリースが可能になる」とコメントした。
こうしたBlueMixによる新興企業の支援としてIBMはこの日、「BlueMixガレージ」をサンフランシスコに開設したことを明らかにした。BlueMixガレージでは開発者コミュニティのGalvanizeが、BlueMixでアプリケーションを開発して新規事業を手掛けたいという企業家を全面的に支援していく。
Galvanize共同創設者兼CEOのジム・デターズ氏は、「IBMの知見や経験を活用し、2014年末までに200近い新興企業のビジネスの立ち上げを支援していきたい」と述べた。
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