クラウド会計で常識を変える freeeが打つ次の一手田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2014年05月13日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
前のページへ 1|2       

業種別対応など機能拡充を進める

 佐々木CEOはfreeeの創業前、Googleでアジア地域の中小企業向けマーケティングを担当していた。「各国の中小企業を分析していると、日本に新しいビジネスが育っていないし、新しいテクノロジーの活用も進んでいないことが分かってきた。そうなると、日本を重要視しなくなり、投資もしなくなる。『なんとかしなければ』との思いが強くなった」。そんな問題意識が創業につながったという。

 会計ソフトを選んだのは、Googleに転職する前に在籍したあるベンチャー企業にある。財務担当役員も務めていた佐々木CEOは、バックオフィス業務にあまりにも多くの時間をとられており、開発に手が回らない。「会計ソフトはあるが、請求書管理や資金管理などがバラバラで、非効率に思えた」。Google時代、そのことを思い出し、「もっといい方法がある」と考えて、辿りついたのがクラウド型会計ソフト。簿記の知識がなくても、簡単に利用できる工夫を凝らせば、中小企業が求める会計ソフトになる。

 もう1つある。IT商品の高額さだ。「母が美容院を経営しているが、レジを購入するのに100万円もした」(佐々木CEO)。同じような機能を持つソフトをクラウド上で安価に提供できれば、経理に困っている起業家を助けられる。それが、日本の中小企業のチャンレジにつながる。

 freeeは、毎日といっていいほど会計ソフトの機能強化を続けて、アップデートを繰り返し行っている。「製品の出来はまだ20%。まだまだやることがたくさんある」と、佐々木CEOは引き続き機能拡充を推し進めるという。

 APIを公開し、協業するのもその1つ。例えば、リクルートライフスタイルが開発したタブレット向けの無料POSレジアプリと連携し、入力した日々の売り上げをクラウド型会計ソフトに自動的に取り込む機能や、紙のレシートをスマートフォンで読み込む機能などだ。ソフト開発会社らに美容院やクリニックなど業種向け機能をクラウド上に開発してもらいもする。日々進化する会計ソフトに仕立てるのだ。


一期一会

 この4月に、米国・シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)から資金調達し、総額8億円の増資を実施した。freeeが見据える先は何があるのだろうか。

 33歳になった佐々木CEOが今、力を入れているのが、組織作りと人材採用だ。3人で始めたfreeeの社員は30人弱(2014年4月)に増えた。中心となる28歳から31歳の技術者が顧客の要望を聞いて、サービスを磨き上げている。

 伝統的な会計ソフト会社とは異なる体質も見える。長椅子に靴を脱いで座り込んで開発する社員がいれば、卓球やダーツをしている社員もいる。常に機能を進化させる。それもスピード感を持って実行するには、こんなスタイルも必要なのだろう。同時に、将来に向けた組織作りが欠かせなくなっている。

 目指すゴールは、会計ソフトを中小企業のビジネス・プラットフォームにすること。そもそも会計ソフトは、お金の出し入れを記録するもの。「つまり、ビジネスと顧客、ビジネスと社員の関係で、顧客とは請求などのやり取り、社員とは給与や経費精算などのやり取りになる」。これらを管理するプラットフォームとして認知されれば、利用者はさらに増えていくだろう。

「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 連載の過去記事はこちらをチェック!


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ