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» 2014年05月27日 18時52分 UPDATE

IBM Edge 2014 Report:「ITは重要」と答える企業は70%、しかし効率活用できているのは20%

米IBMで15人しかいない要職である「Senior Vice President」を務めるトム・ロザミリア氏にIBMの今後の方向性を聞いた。

[大津心,ITmedia]

 「ITインフラは必要なもの。どこかに必ず存在する。ワークロードの多様化に応じて、オンプレミスやパブリック/プライベートクラウドといった選択肢も増えているが、“インフラは今後も何れかの形で存在し続ける重要なものだ”ということを忘れてはいけない」

 こう語るのは、米IBMのSystems & Technology部門でSenior Vice Presidentを務めるトム・ロザミリア(Tom Rosamilia)氏。同氏は、クラウドや仮想化の登場で希薄になりがちなITインフラだが、どこかに必ず存在するものであり、かつ重要なものなのできちんと意識し、管理・投資しなければならない、と説く。

 ここでは、米IBMで15人しかいない要職である「Senior Vice President」を務める同氏に、IBMの方向性などを聞く機会を得たので紹介したい。

「ITは重要」と答える企業は70%、しかし効率活用できているのは20%

ロザミリア氏写真 米IBM Systems & Technology部門 Senior Vice President トム・ロザミリア氏

 ロザミリア氏は、まず同社が実施した調査レポートを例示した。この調査は、日本を含む世界80カ国、19業界、750社を対象に実施したもの。

 調査によると、「競合優位を実現し、大きな利益を生み出すためにはITインフラが重要な役割を果たす」と回答した企業は70%に及び、多くの企業がITインフラの重要性を認識していることが分かる。他方で、「効率的な社内のIT基盤を構築できている」と回答した企業は20%程度に落ち込む。さらに、「クラウドコンピューティングやアナリティクス、モバイル端末、ソーシャルメディアの拡大に対応できている」と回答した企業は10%以下だった。

 これに対してロザミリア氏は「IT投資をきちんとビジョンを持って実施できている、いわゆる“ビジョナリー”は、以前から売上高が大きく利益率が高い傾向がある。これは、『企業インフラとして重要なITインフラにきちんと投資できている』ということは、『その他の戦略に対しても同じように効率的に投資できている』ということだろうと推測している。つまり全社的に戦略的な施策が行えているため、好業績が残せていると考えている」とコメント。戦略的投資の重要性を説いた。

 一方で同氏は投資配分の重要性も説く。「企業のIT投資額は微増傾向で、潤沢に予算のある企業は珍しい。一方で、ストレージなどは年々増加し続けており、企業の情報システム部門は限られた予算をいかに上手く分配するか、が非常に重要なミッションになっている。予算の使い方を戦略的に考えて投資しなければ、インフラを維持することすら難しい状況だ。適材適所でクラウドを使うなどコスト削減も考えつつ、戦略的な投資もしていかなければならない。非常に難しい状況だ」(ロザミリア氏)

 では、結局効率的なIT基盤を構築できていない80%の企業はどうすれば良いのか。この問いにロザミリア氏はこう答えた。

 「まだ効率的に投資できていない企業には、いまならプリパッケージされたサービスの利用をお勧めする。例えば、PaaSであるBlueMixや、SaaSなどある程度パッケージ化されたものを利用することで、技術者の少ない企業でも始められるし、リスクも低減できる。既存のAPIも数多く活用できる。インフラ部分の管理工数も削減できるなどメリットも多い。まだ構築できていない企業は、ぜひこのようなPaaSやSaaSを検討するべきだ」(同氏)

「ゴルフ好き」はOKだけど、「ゴルフのスコア」はNG

 続いてロザミリア氏は、IBMが注力しているものとして「Systems of Engagement(SoE)」を挙げる。SoEとは、モバイルデバイスやソーシャルメディアの活用に関わるシステム。従来から同社が得意としていたメインフレームによる基幹系のシステム「Systems of Record(SoR)」とは大きく異なるものだ。

ロザミリア氏写真

 特にBtoCにおいては、消費者のモバイルデバイス活用やFacebookやTwitterを中心としたSNS活用は急激に増えており、マーケティングに活用できるデータ量は激増している。さらにこの情報はリアルタイム性もあるため、データの価値を生かすための即時性も求められている。これらのデータは宝の山であり、“これを活用しないこと自体が機会損失”と言えるほどだ。

 ただし、「宝の山をむやみに探しても効率は上がらない」と同氏は指摘する。「例えば、私はゴルフが好きなので、旅行先などで良いゴルフ場やゴルフショップをレコメンドしてほしい。従って、企業には“ゴルフが好き”という趣向はぜひSNSから読み取って活用してほしい。しかし、ゴルフのスコアは知られたくない。“70台を目指す人のためのドライバー”のような広告は見たくない。このように、ユーザーの嗜好に応じて利用するべきデータとそうでないデータがある。ターゲットは絞るべきだが、あらゆるデータを駆使してターゲティングしすぎるのも逆効果なこともある。それらを踏まえてシステム開発すべきなのがSoEの難しいところだ」と説明する。

 「IBMでは、クライアント企業のSoEに対するポリシーに沿ってシステムを提供していくが、先述の例のように活用すべきデータとそうでないデータがある。この“データを使うべきかどうかの境界”は、世代や性別、地域などによっても異なるため、非常にセンシティブだ。このデータの境界を踏まえてマーケティングに活用し、なおかつSoRの分野であるサプライチェーンやERPなどともきちんと連携してビジネスに繋げていかなければならない。その点、当社はSoRの知見がある分、競合優位性があると考えている」(同氏)

今後はハイエンドサーバーとストレージにコミットしていく

 既報の通り、IBMは2014年1月に「x86サーバー事業をレノボに売却する」と発表した。これにより、同社はメインフレーム「zEnterprise」やPOWERプロセッサを搭載する「Power Systems」といったハイエンドサーバー群とストレージに注力していくことになる。その点についてロザミリア氏に聞いた。

 まず、同氏は「IBMは『OpenPOWER Foundation』を強力に推進・コミットしていく」と強く主張する。

 OpenPOWER Foundationは同社が2013年8月に発足した開発コミュニティで、IBMが開発したPOWERプロセッサの詳細やファームウェアなどを公開し、エコシステムを構築することを目指している。既にGoogleやサムスン、NVIDIA、日立など25社以上が参加している。

 IBMはOpenPOWER Foundationを中心とした開発を進めることで、新しいエコシステムを構築し、よりオープンで拡張性の高いシステム構築を推進できるという。

 また、ストレージ面では“Elastic Storage”を推進する(詳細はこちらを参照)。Elastic Storageとは、複数のストレージの差異をソフトウェアで吸収し、1つのストレージプールとして扱うという技術だ。物理ストレージはFlashやハードディスク、クラウド、テープなど、あらゆるものに対応し、ソフトウェアでその差異を吸収する。

 Elastic Storageによって、大部分のストレージは廉価なハードディスクを使用し、高速化が必要な分だけFlashを導入して値段を下げる、といった利用方法が容易になる。

 ロザミリア氏は、「昨今のサーバー市場では、企業毎に異なるニーズに特化したOEM型やホワイトボックスのサーバーが増えており、市場の40%を超える規模になっている。今後もさらに拡大するだろう。このような特化型サーバーには、OpenPOWER Foundationのようなオープン仕様の製品が非常に優位だ。当社はOEMでシェア拡大を目指す。Googleなどとは既に良い関係を築けているのでこれを進展させたい。IBMは、今後もこのようなオープン化やElastic Storageのような新技術を投入し、業界を破壊するようなインパクトを今後も与えていく」と語り、今後のIBMインフラ事業の方向性を示した。

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