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» 2014年06月05日 10時00分 UPDATE

民間企業に追い付け、追い越せ!:“顧客管理”の徹底で市民サービス向上を図る自治体たち

自治体が情報化に着手して久しい。従来の取り組みは手作業の業務をシステム化するものにとどまり、業務の高度化、ひいては市民サービスの向上までにはつながらなかった。こうした中、スマートデバイスやソーシャル、クラウドなどの登場により、新たな価値創出のための仕組みを構築しようとする動きが出ている。その実現に向け、CRMアプリケーションへの関心も高まっており、民間企業での取り組みを凌駕するような成功事例も既に自治体から出ているという。

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自治体運営を新たなステージに導く“ガバメント2.0”に迫る

 政府のIT戦略本部が2001年に「e-Japan」戦略を掲げたことで、日本でも本格的に進み始めた自治体の情報化。だが、そこで実現を目指した「電子自治体」には、これまでにいくつかの課題が浮かび上がってきた。

 まず挙げられるのが、電子化による業務の高度化や住民サービスの向上が、想定されたほど進まなかったことである。自治体での一般的なシステム化の手法は、業務単位でのシステム化が中心である。これにより、個々の業務の効率化は達成される。だが、縦割りで電子化するために、部署を越えた業務の見直しが進まず、全体での業務改善には至らないケースが多かった。

 また、ITコストの削減に向け、システムの共同利用や自治体クラウドの活用も推進されてきた。しかし、共同化のための調整や業務の標準化、また費用負担の公平化など多くの課題があり、期待されたほどの効果は上がっていない。

日本マイクロソフト パブリックセクター統括本部 官公庁事業本部 公共イノベーション推進室 シニアインダストリーマネジャーの天野浩史氏 日本マイクロソフト パブリックセクター統括本部 官公庁事業本部 公共イノベーション推進室 シニアインダストリーマネジャーの天野浩史氏

 ただし、ここにきて状況は劇的に変わり始めた。その原動力が、スマートデバイスやソーシャルサービス、クラウドなどの新技術の活用を通じた、新しい電子自治体の仕組み、いわゆる「ガバメント2.0」の活用である。日本マイクロソフトのパブリックセクター統括本部 官公庁事業本部 公共イノベーション推進室でシニアインダストリーマネジャーを務める天野浩史氏は、「電子自治体では各所管課の行政業務のシステム化に主眼が置かれ、専用のシステムやパッケージによるシステムを庁内設置型(オンプレミス)で整備してきました。しかし、クラウドの登場により、インフラの整備コストが劇的に下がったこと、さらに、スマートデバイスやソーシャルなど、相互連携を支援する技術が登場したことを受け、住民サービスの向上といった新たな価値創出につながる仕組みを作ろうとする動きが数年前から急速に盛り上がっているのです」と、その背景を解説する。

 その実現に向け、多くの自治体が関心を寄せているのが、民間企業で顧客対応などのために利用されてきたCRMアプリケーションである。顧客を住民と置き換え、住民が必要とする各種情報を一元的に管理することで、多様な用途への応用を見込めるからだ。

海外の成功事例を参考とした市民中心の行政サービスを

 海外では自治体におけるCRMの成功事例が相次いでいる。そこで基本となるアプローチは民間企業でいうところの顧客を住民・市民と置き換え、住民中心で行政サービスを提供するモデルを構築することである。

 実際に、英国・ロンドン市はこの手法によって、「Love Clean London」というサービスを立ち上げた。これはWebやスマートフォンから写真と状況をアップロードして直接市に対し、落書きや不法廃棄物などの状況や現場の位置を通報できる仕組みである。これにより、市側の対応に要する時間が大幅に短縮され、2009年の公開からわずか2年間で、落書きによる苦情は30%も減少した。

 また、米国・マイアミ市は、米国では一般的な共通の地域電話番号「311」(※米国ではどの地域でも「311」に電話すると地元の自治体のコールセンターにつながる)のWeb版であるWeb311サービスの「HeyGov!」を採用。住民からの問い合わせを集約管理し、地図サービスと組み合わせて公開するサービスを提供している。市民は24時間365日あらゆる地域の課題を市に連絡し、対応状況やどこで、何が起こっているのかを容易に把握することが可能になった。

 天野氏はこれらの事例の共通項として、サイトに寄せられた情報を「台帳」データとして適切に分類、格納するとともに、それらのデータベース(DB)間での情報を最適な形でひもづけることにより、人手による各種処理や判断の支援、自動化が図られている点を挙げる。

 「自治体ではさまざまな業務が台帳になっています。そのため、ポータルへの通報を起点にした迅速な処理を実現するには、台帳DBへの入力の自動化と、関連する台帳DB間での情報連携を通じた、他部署への依頼などの手続きの自動化および進ちょくの管理が不可欠なのです。単に通報を受け付けるだけでは、むしろ人手による作業が増えてしまい業務の改善にはつながりません。また、優先的に処理すべき案件が埋もれてしまうため、適切な処理が難しく、住民サービスの向上も困難になります」(天野氏)

 これらのシステム要件を高いレベルで満たすことで、これまで海外の自治体で多数の採用実績を誇るのが、マイクロソフトのCRMシステムのクラウド「Microsoft Dynamics CRM Online」である。事実、ロンドン市やマイアミ市のサービスも、バックエンドをDynamics CRM Onlineによって整備されたものだ。また双方ともフロントのサービスはPaaS/IaaSである「Microsoft Azure」を活用することで、サービス全体を低い費用で運用している。

Dynamics CRM Onlineをはじめとする日本マイクロソフトの製品・サービス群 Dynamics CRM Onlineをはじめとする日本マイクロソフトの製品・サービス群

 日本マイクロソフトは、このような海外でのDynamics CRM Online導入ノウハウを基に、国内の自治体に対するCRMの導入支援を本格化している。既に国内でもDynamics CRM Onlineを利用した自治体のサービスが開始された。その1つが、愛媛県の「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」である。

愛媛県が選んだ「攻めの仕掛け」とは?

 愛媛県今治市と広島県尾道市とを結ぶ、日本初の海峡を横断する自転車道である瀬戸内しまなみ海道は、毎年、多くのサイクリストがサイクリングを楽しみに訪れる“聖地”だ。そこで愛媛県では、観光振興策の一環として、県下全域で26もの自転車コースを整備。同サービスサイトは県外から集まる初級者から上級者までの幅広いサイクリストに、コースごとの全体図や高低図、走行動画、グルメ・景観ポイントなどの情報を、地図情報を交えながら紹介するものである。

愛媛マルゴト自転車道のWebサイト マルゴト自転車道に掲載の位置情報、投稿、コースはCRM Onlineで管理されている

 愛媛県がこのサイトの構築にあたりDynamics CRM Onlineを採用した背景には、高鮮度の情報を配信するという狙いがあった。従来からの自治体の施策では、コース紹介用のパンフレットなどを作成し、希望者に配布する形式になりがちだ。だが、その手法ではパンフレットが出来上がった時点から情報の劣化が進むことが避けられない。とはいえ、県職員の人数は限られており、最長で165kmにも及ぶ26のコース全体について、給水ポイントや食事場所、観光ポイントなど、サイクリストが求める情報をきめ細かくフォローすることは現実的に極めて困難であった。

日本マイクロソフト パブリックセクター統括本部 テクノロジーソリューションセールス本部 ソリューションスペシャリストの石崎勝洋氏 日本マイクロソフト パブリックセクター統括本部 テクノロジーソリューションセールス本部 ソリューションスペシャリストの石崎勝洋氏

 2013年度より愛媛県は日本マイクロソフトと地域活性化協働プログラムによる協定を締結し、ICTによる地域振興、IT人材育成のプログラムを開始した。そのプログラムの一つとして、海外で実績のある市民協働の仕組みを、元々愛媛県で計画していた「愛媛マルゴト自転車道」のWebサイトに統合し、サイクリストから寄せられた情報を共有し発展していくサービスを構築することとなった。

 紹介された市民協働の仕組みは苦情や要望といったようなある意味ネガティブな情報の共有が中心だったが、今回は逆にサイクリストや県民からの積極的な情報投稿を目標とした。情報を投稿するには、事前にこのサービス上でユーザー登録を行い、どのような属性を持つのかを設定しておき、投稿内容についての傾向や頻度をDynamics CRM Onlineの上で管理ができるようにしている。

 また、サイクリングロードの台帳に基づき登録された情報を一元管理し、サイトを利用するサイクリストや県民にとって有用な情報を再発信していくことが可能になっている。さらにFacebookやTwitterなどのソーシャルサービスと連携することで、口コミの効果も合わせて期待している。それらのソーシャルサービスに投稿された“いいね”情報はCRM側に投稿情報の反応として集計され、サービス運営者が要望や課題を分析するのに使用できる。これらの機能は民間のWebサイト、サービスでは比較的普及している仕組みで、公共の分野でも応用が始まっている。

お勧めコメントイメージ 愛媛マルゴト自転車道で見ることができるお勧め情報やコメント。ソーシャルと連携して実現している

 注目すべきなのが、その整備に要したコストと期間だ。実はこれほど手の込んだサイトでありながら、愛媛県が負担したコストは、従来型の導入手法に比べて大幅に低く、開発期間も数カ月に抑えることができた。その第一の理由はサービスの構成要素であるWebプラットフォーム、投稿やユーザーの管理機能をそれぞれマイクロソフトのクラウドサービスであるMicrosoft AzureとDynamics CRM Onlineを利用したことで、サーバの構築やデータセンタの確保、回線の契約など通常のシステム構築に必要な作業を大幅に削減したことである。これらのクラウドサービスは、民間では基幹業務をはじめさまざまな情報システムに活用されており、公共分野でも利用が始まっている。

 第2の理由として、元々、米Microsoft本社において「アクセラレータ」の名称で提供されていたサンプルコードの1つで、住民サービスを実現するアプリケーションが、マイクロソフトの運営するオープンソースコードの公開管理を行うCodePlexというサービスで公開されていた。日本マイクロソフトでは英語版で提供されていたサンプルを日本語化し、かつ日本の自治体の利用に耐えるような改修を施したサンプルをテンプレートとして用意しており、それを基にすることで機能開発を最小にして導入を進めることができた。

 天野氏は、「サービステンプレートのシステム構成は、投稿を受け付けるインタフェースプログラムと、投稿を台帳DBで管理し、担当部署に回すためのDynamics CRM Online、出力先のWebやスマホ用のアプリケーションに大別されます。このように、機能別にコンポーネントを分割したことで改修範囲を最小限にし、コストと手間を抑えられたというわけです」と強調する。

情報の一元管理で、自治体を支援

 自治体の業務には多数の台帳があり、その台帳を管理運用することが自治体の情報化につながるといっても過言ではない。例えば、道路や橋梁、河川など公共物の管理もその一つである。これまで、このような公共物の台帳と、それらの管理、維持補修と市民からの道路の破損の修理などの要望、苦情は別々の台帳で管理されていた。管理区分、受付部署、担当が異なれば当然異なる台帳が必要になるが、それぞれを関連して運用するためには多くの人的な労力が必要であった。このように今まではシステム化が難しかった業務手続きもDynamics CRM Onlineのような柔軟性の高い台帳、手続き管理の仕組みを応用することで劇的に業務を改善できるのである。

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 日本マイクロソフト パブリックセクター統括本部 テクノロジーソリューションセールス本部 ソリューションスペシャリストの石崎勝洋氏は、CRMで市民からの提案や要望を蓄積する付随的なメリットとして、台帳で管理される情報の電子化を通じた、業務対応の高度化を挙げる。

 「道路維持管理業務を例に挙げると、道路パトロールの結果や市民からの苦情などを紙ベースの台帳で管理されている自治体も少なくありません。しかし情報は記録されているものの、その件数が数万にも及ぶ場合には人間で扱える能力を超え、活用が極めて困難になります。CRMを利用いただければ、蓄積されたデータを基に不具合、破損の多い傾向にある道路や道路付属物を容易に特定することが可能となり、道路補修計画の立案や予算申請の基礎資料作成などに生かせるわけです」(石崎氏)

 2012年に発生した中央自動車道・笹子トンネル崩落事故をきっかけに、公共物の調査徹底が社会的に強く求められるようになった。ただし、いくら調査を入念に実施するにしても限られた人数の職員では、調査件数が膨大なため、施設管理や防災対策へ調査結果の的確な活用は困難である。しかしながら、CRMであれば、調査結果や傾向分析などにより優先順位をつけて対応していくことも可能である。

 自治体では数人の職員しか携わっていない業務も少なくない。だが、Dynamics CRM Onlineであれば、それらで必要とされる台帳を容易かつ低コストで整備することが可能だ。

 「原課の業務では各市町村で同一の業務も少なくありません。そこでそれら原課の業務のための雛形となる台帳などを用意すれば、どこの市町村においても利用可能であり、また、短期間の展開でも可能です。加えて、Dynamics CRMであればオンライン版での提供も可能ですし、セキュリティ要件などによりオンライン版が利用できない場合はオンプレミスで利用環境を整備することもできるのです」(石崎氏)

 情報の一元管理を通じ、自治体業務の高度化を支援するマイクロソフトのDynamics CRM Online。同ソリューションは市民サービスの向上を側面から支えているのだ。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年6月30日

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