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» 2014年06月17日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:5つのパブリッククラウドを組み合わせるウフルの狙い

Amazon Web Servicesやセールスフォース・ドットコムなどのクラウドサービスを自在に扱い、新たなシステムサービス事業を展開するITベンチャーが現れた。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

日本のIT産業の“未来”が見える! 「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 バックナンバー一覧


 セールスフォース・ドットコム(SFDC)のサービスを始めとする5つのパブリッククラウドを扱うITベンチャーが現れた。機能を絞り込んだ小規模なシステムからスタートし、段階的に拡張していく、というクラウドの特性を生かしたシステムサービス事業を展開するウフルだ。「マーケティング・クラウド」と呼ぶ新しい領域を開拓する。

著名なパブリッククラウドを自在に組み合わせる

 ウフルは2014年2月、サイボウズと業務提携し、同社のクラウド基盤「kintone」を活用したシステム構築を含めたサービス提供を開始した。園田祟社長は「日本のクラウドプラットフォームにアプリケーションを置きたいユーザーがいる」ことから、サイボウズとの提携に踏み切ったという。

 同社はこれでSFDC、アマゾン(Amazon Web Services)、グーグル、マイクロソフトを含めた主要クラウドをすべて取り扱うことになった。例えば、CRM(顧客情報管理)やSFA(営業支援)ならSFDC、メールやスケジュール管理ならグーグル、大量データのアーカイブならAWS、Excelの共有ならマイクロソフトなどと、各社のクラウドの特性を生かした提案をする。

 2006年2月に創業したウフルは、まずは中高年向けSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を開始したが、期待した以上の利用者を獲得できなかった。そうした中で始めたWeb制作に関する商談や案件などの管理に自社でSFDCを使っていたところ、時間をかけず、企業の情報システムを構築できることが分かったので、「2008年からSFDCの導入支援やシステム構築を事業として本格的に始めた」(小堀貴生副社長)。

 手掛けるシステムは、会計などの基幹系ではなく、ホテル予約などWebサイト系だ。そこにSFDC、AWSやグーグルなどのサービスを組み合わせて、「可能な限りクラウドの標準機能を活用する」(小堀副社長)。これは、工数の短縮によって、スピーディに開発するためだ。SFDCが年3回実施するバージョンアップに素早く対応するためでもある。「下手にコーディングをすると、機能強化を反映できないことがある」(同)。カスマイズすれば、テスト時間がとられることもあるからだ。

 加えて、ユーザーには小規模なシステム構築からスタートすることを勧める。例えば、中小ソフト開発会社なら、まずは商談管理から始めて、その後、見積もりやプロジェクト管理などへと広げていくといった具合だ。クラウドの柔軟な拡張性を生かした導入方法である。「最初から大規模なシステムを計画すると、開発期間が長期化するなど、負担が大きくなる。プロジェクトに参加するユーザー社内の関係者も多くなる」(園田社長)。スモールスタートによって、ベンダーとユーザーお互いのリスクを小さくすることにつながる。

マーケティング・クラウドとは?

 園田社長は「クラウドの登場で、ITシステムの構築方法が変わるとともに、そこで活躍するプレイヤーが変わる」ことを予感する。工数の見積もりからサービス提供に至るプロセスの変革は新しい需要を創出し、新興勢力に大きなチャンスをもたらすからだろう。そのためにも、「クラウドの技術をしっかり押さえておくことが重要」(同)と判断し、技術力を磨いている。

 その1つは、約3年前から取り組み始めたマーケティング・クラウドと呼ぶ新しい事業領域の開拓である。パブリッククラウドの技術を使って、企業の企画部門やマーケティング部門に対し、ソーシャルメディアから顧客の声を取り入れるようなマーケティング活動を支援する。

 具体的には、FacebookやTwitterなどソーシャルメディアとCRMを連携し、販売促進などに生かす。例えば、ある商品の広告キャンペーンを展開した後、ソーシャルメディアから消費者の反応を収集し、分析する。その基盤にSFDCと別会社が開発した監視ツールを使って、分析結果をレポートにまとめる。このPDCAを回して、次のマーケティングや商品開発につなげていく。自社メディアで顧客に情報を発信するオウンドメディアも支援する。

 園田社長は「クラウド活用からWeb制作、キャンペーン支援など一貫したマーケティング支援を手掛けられる企業は少ない」と自負する。このマーケティング・クラウド事業には、経営の意思決定など組織のあり方にも踏み込むので、担当者はコンサルティングや商品企画、マーケティング、さらには映画プロデューサーの経験者らを配置する。目下、全社の10%程度の陣容をこの事業に振り向け、市場が本格的に立ち上げるのを見据えて体制を整えているところだ。

 パブリッククラウドにしろ、マーケティング・クラウドにしろ、「ユーザーの導入目的をしっかりと把握することが重要」(小堀副社長)。ユーザーは「あれもやりたい」「これもしたい」となる。そこで、「本当に欠かせない機能なのか」とユーザーに問いながら、「必要になら次のフェーズで追加すべし」と提案する。このような予算と時間を考えたIT活用は、まさにユーザーがIT企業に求めていることなのだ。


一期一会

 園田社長は1995年に早稲田大学政治経済学部を卒業し、電通に入社する。その後、米国に渡りMBAを取得する一方、モルガン・スタンレー証券など金融業界に席を置き、機関投資家向けIRなどを支援する。ファイナンスの知識を習得して帰国した後、2005年にライブドアの副社長を務めて、インターネットの世界に入る。それがウフルの創業へとつながる。

 ウフルはライブドア出身の園田社長、小堀副社長ら3人で事業をスタートした。その後、田中正道氏が取締役に加わり、SFDCなどを使ったパブリッククラウド事業とマーケティング・クラウド事業の2本柱でビジネスを展開する。2014年5月時点で、社員は70人超の規模になる。現在はクラウドの再販とシステム構築、運用が大きな収入源になっているが、マーケティング・クラウドを次の大きな柱に育てていく計画だ。

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