インターネットを介した情報流通の拡大と利活用の広がりは、様々なイノベーションと新たな課題を生じさせてきた。今回はソーシャルメディアを中心に、ビッグデータの利活用や課題を掘り下げる。
第1回:ビッグデータ利活用の表舞台に立つプライバシーとセキュリティ
第2回:IoTとビッグデータがもたらす社会変革とクラウドセキュリティ
第3回:ソーシャルメディアで加速するビッグデータ利活用とガバナンス課題
第4回:セキュリティ/リスク管理から見た米国のオープンデータ戦略
第5回:新規事業創出で注目されるクラウドストーミング、利点とリスクは何か
第6回:世界や米国にみるセキュリティ人材の育成術と日本の課題
第7回:健康・医療分野におけるビッグデータイノベーションの動向
第8回:研究開発を牽引するクラウドとビッグデータ、リスク管理をどうするか
ソーシャルネットワークサービス(SNS)やブログ、動画/ファイル共有サービスなどに代表されるソーシャルメディアは、主にインターネット広告のビジネスモデルをベースにしながら、デジタルマーケティングの主役を担い、同時にビッグデータのユースケースに触れられる格好の場所となりつつある。
以下の図は、ソーシャルメディア利活用の成熟度とビッグデータを構成する容量(Volume)、種類(Variety)、速度(Velocity)の関係を例示したものである。
ソーシャルメディアの成熟度でみると、「ステージ1」は送り手から受け手への一方向的な情報発信が中心であり、従来のPC/モバイルサイトで発信するコンテンツをソーシャルメディアの各プラットフォーム向けに一部加工して提供する形が多い。
「ステージ2」は、例えば受け手側によるFacebookの「いいね!」やTwitterの「リツイート」から始まり、具体的な返信・投稿による双方向型の対話へと進展していく。
「ステージ3」は、ソーシャルメディア上での双方向型対話から生まれたオンラインコミュニティを活用して、協働プロジェクトを企画・運営するような段階へ進化する。具体的には、アプリケーション開発者のコミュニティがSNSやファイル共有、コラボレーションなどの機能を活用して行うクラウドソーシング型のアイデアソン/ハッカソンプロジェクトが当てはまる。
「ステージ4」は、例えば住民や地元企業・NPO、公的機関など地域の共通課題に関わるステークホルダーが早期の段階からオンライン上のコミュニティに集まり、対話をしながら課題解決に必要な合意形成を行うようなケースが当てはまる。株主、従業員、パートナー、監督官庁、地域社会など、複数のステークホルダーによる対話・合意形成が必要な社会課題に取り組む企業でも、オープンイノベーションの共通プラットフォームとして、ソーシャルメディアを利活用しようとする動きが始まっている。
このようなソーシャルメディア利活用の成熟度合いは、ビッグデータの成長にも大きな影響を及ぼす。
第1の観点であるビッグデータを構成する容量(Volume)では、当初ブロードバンドの下り回線を介して一方向的にコンテンツを受け取っていたユーザーとの関係で双方向性が強まり、それとともにユーザーが自らコンテンツを生成し、ネットワークの上り回線を介して様々なデータを発信するようになる。ユーザー生成コンテンツ(UGC)の成長によって、全体のデータ容量が爆発的に増加するのがソーシャルメディアの特徴だ。
第2の観点がビッグデータの種類(Variety)となる。初期段階においては一方向的なテキストメッセージやリンク先URLの受発信から始まることが多いものの、ステージが成熟するにつれて画像、動画、音声、文書ファイルなど、様々な構造化/非構造化データが混じり合い、多様化していく。ソーシャルメディアの場合、従来型のリレーショナルデータベースに加えて、NoSQLに代表される非構造化データベースへの依存度が高いのも特徴である。
第3の観点がビッグデータの速度(Velocity)である。初期段階ではソーシャルメディアからユーザーに向けて企業などの情報発信が開始される。一定期間経過した後に、オウンドメディア(自社所有のWeb/モバイルサイトなど)やペイドメディア(ポータルサイトのバナー広告など)へのレスポンス状況を分析するというバッチ処理的な使い方が主流になる。
ソーシャルメディアの利活用が成熟し、双方向性が強まるにつれて、オウンドメディアとペイドメディアに「アーンドメディア」(例:消費者が第三者のオンラインコミュニティに投稿する批評や推奨)が加わり、重要性が増す。この、いわゆる「トリプルメディア」の連携によって生成されたソーシャルデータをリアルタイムで処理・分析しながら、即時で対応するようになっていく。
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