それでは、どのような対策を講じればよいのでしょうか。「Wi-Fiを使わない」はソリューションにはならないでしょう。前回紹介した通り、Wi-Fiは世界的にもビジネスに欠かせないものとなりつつあります。日本でもWi-Fi普及予測やモバイルワークやBYOD(Bring Your Own Device:個人で所有する端末の業務利用)の普及なども鑑みると、さまざまな端末から自由にWi-Fi経由でインターネットに接続しながら仕事をするのが一般的になっていくでしょう。企業側の行き過ぎた管理や制限は、かえって業務を非効率にしかねません。
以下は内閣府大臣官房政府広報室が発表した無線LAN使用時の「3つの約束事」の抜粋です※3。
※3 内閣府大臣官房政府広報室 https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/1.html
これらの約束事は非常に重要である一方、利用者には常に注意を払うことが求められます。さらには、同一ネットワーク内にいるハッカーからの攻撃は防ぎきれないこともあります。
ウイルス対策ソフトはどうでしょうか。ウイルス対策ソフトは、基本的に端末内をスキャンして悪質なウイルスがいないかをチェックし、感染を未然に防ぐという役割を担っています。ですので、インターネット利用時の通信系路上での危険性における対策ではありません。ウイルス対策だけでは不十分ですが、もちろんビジネスに用いる端末では欠かすことができないセキュリティソフトです。
これらの対策方法を補完してネットワーク上の脅威からユーザーを保護してくれるのが、VPN(Virtual Private Network)ソフトです。VPNソフトは、ネットワーク上に仮想的なトンネルを作り、そのままでは「ダダ漏れ」な情報も仮想トンネルの中を通すことによって保護できるようにします。
端末から実際のコンテンツがあるサーバまで一気通貫でデータが暗号化されるので、たとえ同一のWi-Fiネットワークに悪質なハッカーがいたとしても、情報を盗み見られることを防ぐことができます。社内イントラネットにアクセスする際はもちろんのこと、通常のネット利用時にもVPNソフトの活用を検討することをお勧めします。
特に忘れがちなのが、スマートフォンでの対策です。端末本体のセキュリティアプリは以前に比べて定着しつつありますが、今後は「スマートフォンでもWi-Fi」が一般的になるでしょうから、VPNソフトが重要になってくるでしょう。外出先から手軽にネット通販でショッピングをし、クレジットカードの情報を入力する――そんなスマートフォンだからこそ、VPNソフトを導入して万全の対策をとるのが賢明です。端末がiPhoneであろうとAndroidやWindows、Macであろうと通信経路上に脅威が潜んでいるのは、全て同じです。
また、海外旅行をされる方にとって現地のセキュリティレベルが分からず、不安に思われることも多いでしょう。楽しいはずの旅行で個人情報が盗まれるという嫌な思いをしないためにも、VPNソフトを入れていることをお勧めします。近年は、企業向けVPNだけではなく、AnchorFreeの「Hotspot Shield)のような通常のインターネット利用を前提としたVPNアプリも普及しており、「アプリを利用しておけば(どんなネットワークに接続しているかに関わらず)とりあえず安心」という手軽さが好評です。
実は、この原稿をシリコンバレーのど真ん中にあるカフェでVPNソフトを利用しながら書いています。Evernoteでメモを取り、まとまったらDropboxで共有してレビューします。「PC+Wi-Fi+クラウドサービス+VPNソフト」といった組み合わせだからこそ、どこでも気軽に、どの端末からでも、安全かつ安心して作業できているわけです。これが今のビジネススタイルですし、業務の効率化アップにつながるはずです。
日本でも無料の公共Wi-Fiの利便性と潜在的なリスクを理解した上で、適切な対策を講じて、快適にビジネスに活用していけるでしょう。そして、ワークライフバランスの向上やモバイルワーク、BYODの普及が促進されることを楽しみにしています。
セキュリティアプリのHotspot Shieldを全世界で展開する米AnchorFreeにて、プロダクトおよびモバイルマーケティングを手がける。シリコンバレー在住9年。スタートアップからネット系大手企業まで数社を渡り歩いた経歴を持つ。
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