資生堂が1万人超の“美容部員”にiPadを配った理由(2/3 ページ)

» 2014年06月27日 10時30分 公開
[本宮学,ITmedia]

迫るシステム保守期限切れ 約10カ月で新システムに移行

 資生堂がiPadの導入準備をスタートしたのは2012年8月のこと。携帯電話向け既存システムの保守期限切れが13年6月と迫る中、約10カ月で約1万台のiPadとそれに合わせた新システムを導入・稼働させる必要があった。

photo 資生堂情報ネットワークの三浦絢也さん(ネットワーク企画部システム開発グループ)

 そこで同社は、iPad向け業務アプリケーションの開発基盤として「IBM Worklight」を採用。HTML5やJavaScriptによるWebベースの業務アプリケーションを構築し、それをiOS向けネイティブアプリ内で稼働させる“ハイブリッドアプリ”方式を採った。

 「将来的にiPad以外の端末を使うようになった場合に備え、マルチデバイスに対応できるハイブリッドアプリ方式を採用した。さらに、Worklightならアプリの“プロトタイプ”を簡単に確認しながら開発できるため、ユーザー部門との間で要件をすり合わせながらスピーディーにアプリを構築できた」(毛戸さん)

 電子カタログアプリは自社開発せず、市販のパッケージ製品を採用。「ビューティーコンサルタントが日々の業務で使うことや、頻繁にコンテンツを更新することを踏まえ、事前にiPadでの操作やPC画面からのコンテンツ登録をテストするなど、操作性を重視して製品を選定した」と毛戸さんは振り返る。

photo iPad活用イメージ

 ビューティーコンサルタントが自宅や外出先でも各種入力作業を行えるようにするため、iPadの通信方式にはキャリアの3G/LTEを採用。セキュリティ対策としてSaaS型のMDM(モバイル端末管理)製品を導入し、事前にスタッフ向け研修を行った上で、予定通り13年6月にiPadと新システムの稼働にこぎつけた。

ついに新システム稼働 iPadアプリによる顧客サービス向上も

 iPad導入の効果は目に見えて表れたという。「カタログやマニュアル類に加え、カウンセリングシートなどの店頭ツールも電子化することで大幅なコスト削減につながった」と毛戸さん。さらに「ビューティーコンサルタントが携帯電話の小さい画面でなく、タブレットのタッチ操作でスムーズに勤怠入力や活動実績報告ができるようになったメリットもある」と三浦さんは話す。

photo iPadアプリによる店頭サービスの一例

 iPadの導入はコスト削減や業務効率化だけでなく、現場スタッフによるサービス向上にもつながっているようだ。例えば、iPadの画面上でメーキャップをシミュレーションできるアプリなどをビューティーコンサルタントが店頭で活用し、「お客さまの満足度や納得度が高まったという声が非常に多い」と毛戸さんは話す。

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