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» 2014年07月14日 08時05分 UPDATE

Weekly Memo:IIJとマイクロソフトの協業が映し出すクラウドの主戦場

IIJと日本マイクロソフトが先週、クラウドサービス事業で協業することを発表した。その内容から、今後のクラウド市場の主戦場が浮かび上がってきた。

[松岡功,ITmedia]

IIJがMicrosoft Azure閉域網接続サービスを展開

 インターネットイニシアティブ(IIJ)と日本マイクロソフトが7月10日、IIJの「IIJ GIOサービス」とマイクロソフトの「Microsoft Azure」を連携させたマルチクラウドサービスの提供に向けて協業することを発表した。第1弾として、IIJが日本初のAzure閉域網接続サービス「ExpressRoute」のパートナーとして、同サービスの受注活動を今年10月から開始する。

 発表会見に臨んだIIJの勝栄二郎社長は、両社の協業について次のように語った。

左から日本マイクロソフトの佐藤久業務執行役員、樋口泰行社長、IIJの勝栄二郎社長、時田一広専務執行役員 左から日本マイクロソフトの佐藤久業務執行役員、樋口泰行社長、IIJの勝栄二郎社長、時田一広専務執行役員

 「クラウドサービス市場が成熟するにつれ、用途に合わせて複数のサービスを使い分けたいというマルチクラウド利用のニーズが高まってきている。両社のサービスに加えてオンプレミス環境も連携させることで、マルチクラウドサービスをワンストップで提供していきたい」

 また、日本マイクロソフトの樋口泰行社長も「マイクロソフトのパブリッククラウドとIIJのセキュアなクラウド基盤が連携すれば、クラウド利用のあらゆるニーズに応えることができる」と自信のほどをのぞかせた。

 両社の協業の要となるExpressRouteは、マイクロソフトが昨年来、欧米で数社のパートナーとともに提供しているサービスだが、日本市場でもAzure日本データセンターへの閉域網接続に対するユーザーニーズが高まってきたことから、IIJが「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure」として事業展開する形となった。

 その具体的な仕組みは、IIJのバックボーン上にユーザー企業専用のプライベートネットワークを構築する「IIJ GIOプライベートバックボーンサービス」を経由してExpressRouteを利用できる環境を提供する。ユーザー企業は社内ネットワークから同サービスのゲートウェイに専用線やWAN回線を経由した接続を行うことで、ExpressRouteを通してAzureリソースに閉域網接続ができるようになる。Azureへの接続はインターネットの公衆回線網を経由しないため、より信頼性が高く、強固なセキュリティのもと高速にAzureサービスを利用できるとしている。

 新サービスのさらに詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは両社の協業が映し出す今後のクラウド市場の主戦場に注目したい。

ホステッドプライベートクラウドが主戦場に

 両社は今回の協業のキーワードとして「マルチクラウド」を挙げているが、その利用形態もさることながら、最大のポイントはAzureをプライベートクラウドとしても利用できるようにしたところにあると筆者は見ている。そのキーワードとなるのが「ホステッドプライベートクラウド」である。

 ホステッドプライベートクラウドは、ユーザー企業がICT資産を所有しないことから「持たないプライベートクラウド」ともいわれる。ただ、あくまでもプライベートクラウドなので、ユーザー企業からはパブリッククラウド以上に高い信頼性やサービスレベルが求められる。それとサービス料金との兼ね合いが今もっとも注目されている。

 ホステッドプライベートクラウドについては、IDCも今年初のクラウド市場予測で「専有ホスティングにおいてはクラウドの機能を求めるユーザー企業によるディスクリート(個別)型のホステッドプライベートクラウドの採用が増加し、中長期的にはこれが主流になっていくだろう」との見解を示している。

 実は、ホステッドプライベートクラウドについては、IIJが自社のサービスとして早くから注力してきた。同社にとって今回のAzureとの連携は、その拡大策とも見て取れる。一方、マイクロソフトもパブリッククラウドサービスであるAzureをパートナー経由でプライベートクラウドにも適用できるようにすれば、さらなるビジネス拡大を図ることができる。ExpressRouteはそれを実現する商材とも見て取れる。

 そこで、今回の会見の質疑応答で両社に「ホステッドプライベートクラウドサービスの拡大が協業の大きな狙いではないか」と単刀直入に聞いてみた。すると、IIJでクラウド事業を統括する時田一広専務執行役員はこう答えた。

 「これから新サービスを具体的に普及させていく上では、ホステッドプライベートクラウドとの組み合わせが多くなると考えている。さらにその領域を拡大できるように、Azureとの連携機能を一層深めていくつもりだ」

 また、日本マイクロソフトの佐藤久業務執行役員サーバープラットフォームビジネス本部長は、「実は、マイクロソフトとしてはIIJがホステッドプライベートクラウドサービスを手掛けていることを魅力に感じている。というのは、均一のサービスを提供するAzureでは個々のユーザーニーズにきめ細かく対応できない面があるからだ。IIJとマイクロソフトはクラウドサービスで競合しているように見られるが、個別のユーザー企業向けサービスを考えると両社の協業はベストマッチだ」と語った。

 今回の両社の協業は、先にも述べたようにマルチクラウドという言葉を前面に押し出し、ハイブリッド感に溢れた内容だが、時田氏と佐藤氏のコメントからもホステッドプライベートクラウドへの対応を非常に重視していることは明白だ。

 ただ、ホステッドプライベートクラウドサービスは、富士通、NEC、日立製作所、IBMといった大手システムベンダーをはじめ、ネットワークベンダーやシステムインテグレーターもこぞって力を入れ始めており、まさしくクラウド市場の主戦場になる可能性が高い。今回のIIJ・マイクロソフト連合による本格参戦で一気に激戦区となりそうだ。そのインパクトは想像以上に大きいような気がする。

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