日本でも企業間のデータ共有を! データエクスチェンジ・コンソーシアムの橋本理事長「Lead Initiative 2014」レポート

IIJ主催イベント「Lead Initiative 2014」のスペシャルセッションで講演したデータエクスチェンジ・コンソーシアムの橋本大也理事長は、さらなるビッグデータ活用に向けた考えを聴衆に示した。

» 2014年07月16日 10時00分 公開
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 「今後10年で最もセクシーな職業は統計家だ」――。米Googleのチーフエコノミスト、ハル・ヴァリアン氏がこう語ってから5年が過ぎた今、ビッグデータの盛り上がりも相まって、日本においても統計専門家やデータサイエンティストに対するニーズは高まっている。

 しかし一方で、「多くの日本企業にはデータサイエンティストが分析するデータがないのが現状」と、データセクションで取締役会長を務める橋本大也氏は話す。橋本氏は7月10日に都内で行われたインターネットイニシアティブ(IIJ)主催のセミナーイベント「Lead Initiative 2014」のスペシャルセッションに登壇、ビッグデータ活用を促進するためには企業や団体でのデータ共有利用が不可欠だと訴えた。

毎日1億件を超える口コミデータを分析

データセクション取締役会長の橋本大也氏。データエクスチェンジ・コンソーシアム理事長も務める データセクション取締役会長の橋本大也氏。データエクスチェンジ・コンソーシアム理事長も務める

 データセクションは、ソーシャルメディア分析ツール「Insight Intelligence」や「Tweet Analyzer」、ソーシャルメディア分析レポート、ソーシャルCRM(顧客情報管理)ツールなどを提供するほか、ソーシャルメディアデータから読み取ったインサイトを基に、新商品やサービスのコンセプトを企画、立案するコンサルティングや、学生などのイノベーターを集めてリアルな場やオンラインディスカッションシステムを用いた発想会議を実施するサービスなどを手掛けている。現在の実績として、1日当たり1億件を超えるネットの口コミを収集し、年間で500社以上のビッグデータ分析を請け負っている。

 また、直近ではTBSグループと資本・業務提携し、テレビとネットの連携強化に向けた共同研究開発に着手した。具体的には、ソーシャルメディアの登場によって変化した生活者のテレビ視聴行動を、番組制作やコンテンツ運用に活用できるモデルの確立を目指す。「若者のテレビ離れが進む中、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを分析し、彼らのテレビに対する反応を見ることで、若者ウケする番組のアイデアを制作チームにフィードバックできると考えています。また、テレビ視聴者の半数以上はスマートフォンなどでソーシャルメディアを利用しながら観ています。ソーシャルデータと番組の視聴者データを連携して解析することで、消費者行動を浮かび上がらせることも可能です」と、橋本氏は説明する。

 こうした事業を運営する中で、橋本氏が重要だと感じているのは、さまざまなデータを掛け合わせて、より付加価値の高い情報資産を生み出すことである。企業1社1社が保有するデータは量、種類ともに限られているが、複数の企業のデータを結び付けることで新たなビジネスが創出するというのが橋本氏の考えだ。

 実例として橋本氏が挙げたのが、今年2月に米Oracleが買収した米BlueKaiの取り組みである。同社は約3億人の米国生活者データを集約し、性別や年代、住所、興味関心、ライフスタイルなどに分類している。加えて、20の主要アドネットワークと連携することで、ユーザーの行動や趣向に即した精度の高い広告配信が可能なのだという。

 日本でもこうした動きは進みつつあり、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)がポイントカード「Tカード」で収集した商品購入履歴と、ヤフーが得たWeb検索履歴を互いに共有して、新たな顧客サービスなどに生かそうとしている。

企業間でデータを共有できるプラットフォームを

 そのような背景から、今年4月にデータセクションとデジタルマーケティング会社のデジタルインテリジェンスが設立したのが「データエクスチェンジ・コンソーシアム」だ。同コンソーシアムでは、企業や公的機関が保有するビッグデータの先進的な利活用を目的に、企業間でのデータ共有(データエクスチェンジ)を実践するための知見を共有するほか、環境整備やガイドライン作りを行う。また、さまざまな事業者が、専門家の指導の下で研究会活動に参加して、データ分析や実証実験を行う。

 主な活動内容は、定期会合、有識者などによる講演会、参加企業による研究発表、分科会によるグループ研究などである。なお、橋本氏はこのコンソーシアムで理事長を務める。

 設立初年度は会員企業30〜40社を想定していたが、既に80社が参加している。2015年には企業間でデータ交換の実証・実験を行い、2016年には実証・実験をロールモデルとして複数社間でデータ交換を行うための仕組み作りを行う予定である。そして、2017年には会員企業を300社にまで伸ばすとともに、会員が共同で利用できる「データエクスチェンジプラットフォーム」を構築するという。

 参加企業のメリットは何か。研究を進める上で、ソーシャルメディアデータやテレビ番組データなど多様なデータにアクセスできるほか、ビッグデータ分析の実証実験環境として特別協賛企業の1社であるIIJの「IIJ GIOビッグデータラボ」およびデータ共有プラットフォームや、富士通総研が保有する分析辞書、分析アルゴリズムについての知見などが提供される予定だという。

 非常に大きな価値をもたらすデータエクスチェンジだが、日本においては一気に推し進めるのではなく、慎重に取り組むべきだと橋本氏。「パーソナルデータの扱い方など、日本は世界の中でも厳しい目を持っています。データエクスチェンジがいかに消費者にとって利益があるかを実証するとともに、その利益を最大化してビジネスを成長させていくかが重要なのです」と、橋本氏は今後の展望を示した。

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