新規事業創出で注目されるクラウドストーミング、利点とリスクは何かビッグデータ利活用と問題解決のいま(1/2 ページ)

不特定多数からアイデアを募る「クラウドストーミング」への関心が高まっている。ビッグデータ関連の新規事業の開発で企業がクラウドストーミングを活用する際のベネフィットとリスクにはどのような点があるのだろうか。

» 2014年07月16日 08時00分 公開
[笹原英司ITmedia]

 企業では同一チームのメンバーから様々なアイデアを引き出す「ブレインストーミング」が活用されてきたが、クラウドやソーシャルメディアが発展するとともに、外部の不特定多数の人々のアイデアを研究開発や新規事業創出に活用する「クラウドストーミング」への関心が高まっている。ビッグデータ関連の新規事業開発をめざす企業がクラウドストーミングを利用したプロジェクトを行う場合、どのようなベネフィットとリスクがあるのだろうか。

オープンイノベーションからクラウドストーミングへと進化するグローバル企業

 エネルギーや健康医療、公共交通システムなど、重要な社会インフラを支えるビッグデータ分析の新規事業開発にオープンなプラットフォーム上で社外のナレッジを活用しているのが、米General Electric(GE)である。例えば、2012年11月に「Industrial Internet」戦略に基づくビッグデータ分野のオープンイノベーションコンテスト「Industrial Internet Quests」の開催を発表した。

 そのうちの一つが「Flight Quest」である。ビッグデータ関連予測モデリングのクラウドソーシングプラットフォームを有するベンチャー企業Kaggleと提携し、航空機の運航遅延を最小限に抑える新規アルゴリズム作成に関するアイデアを、外部の開発者やデータサイエンティストから広く公募するというプロジェクトだ。

 ビッグデータ分析のアルゴリズム開発には膨大な量のデータサンプルが不可欠であるが、このプロジェクトは全米航空システム(NAS)の提供するパブリックな飛行データ(便名、出発地、目的地、離陸時刻、到着時刻、飛行ルート上で頻繁に通過する中間点の緯度、気候と風関連の情報)を利用している点が注目される。

 第1フェーズでは飛行の効率を高める予測モデルの作成を募集し、第2フェーズでは第1フェーズで入選したアルゴリズムを使用して、GEが機載飛行管理アプリケーション構築を目的としたシミュレーション開発を行うというプロセスになっている。各プロセスの展開状況については、「GE Quest」のWebサイトで一般に公開されている。

Flight Quest GEが実施した「Flight Quest」

 元々GEは、新規事業開発の分野でオープンなクラウドストーミングの手法を積極的に活用する企業として知られている。例えば、2010年に立ち上げた環境・エネルギー分野の「GEエコマジネーション・チャレンジ」、2011年に立ち上げた健康医療分野の「ヘルシーマジネーション・オープン・イノベーション・チャレンジ」を通じて、ベンチャーキャピタルとの連携、アイデア商品化のための起業家支援、オープンなプラットフォームとの技術提携などを進め、単発的なオープンイノベーションに留まらない、クラウドストーミングを用いたプロジェクトのライフサイクルを回すために必要な仕組み作りを行ってきた。このような流れを受けて、ビッグデータにフォーカスしたプロジェクトが「Flight Quest」である。

 日本においてもGEは、2014年1月にオープンイノベーションの中核拠点として「GEセンター・フォー・グローバル・イノベーション」を開設したほか、青森県と共同で「GE Day in AOMORI」を開催するなど官民連携活動への取り組みも始まっている。

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