カルビー、じゃがいもの安定調達の陰にデータありポテトチップスを支える戦略(2/3 ページ)

» 2014年07月22日 07時45分 公開
[伏見学,ITmedia]

緑化と種イモの関係を明らかに

 カルビーポテトが本格的にデータ活用に乗り出したのは2004年ごろのこと。それ以前はじゃがいもの栽培などに関して契約農家それぞれの経験や勘に頼っていたところが大きかったが、リスクの少ない、より効率的な調達を可能にするため、科学的な視点を持ち込んだ。そこで生産者に関するさまざまなデータを収集し、データベース化することを目指した。

カルビーポテト 馬鈴薯研究所 栽培技術課の小野豪朗氏 カルビーポテト 馬鈴薯研究所 栽培技術課の小野豪朗氏

 データ収集にあたっては、契約農家に情報提供やアドバイスを直接行うフィールドマンと呼ばれる社員が農地を1カ所ずつ定期的に回り、生産者ごとに品種、生育地、土壌、収量、肥料、その都度の生育状態(茎の高さや開花時期など)、前年度実績といった細かなデータを集めていった。最初の数年間はデータベースを充実させることにとどまっていたが、「今ではある程度のデータが蓄積されているので、そこからさまざまな傾向が見えるようになった」と、カルビーポテトの研究部門に当たる馬鈴薯研究所 栽培技術課の小野豪朗氏は話す。

 このデータベースの活用によって得られた成果の1つが、品質の高いじゃがいもの栽培である。2009年、契約農家のじゃがいもに緑化が大発生した。じゃがいもは光(日光や蛍光灯)に当たると緑色に変色(緑化)し、ソラニンという有害物質が生成される。もし収穫したじゃがいもの一部が緑化した場合、ポテトチップスなどを製造する前工程で、その部分を削り落さなくてはならない。当然のようにその作業は人手で行うしかないため、本来であれば必要のない無駄な時間やコストがかかってしまう。

 では、緑化を防ぐにはどうすればいいのか。カルビーポテトが契約農家の生育データを分析したところ、種イモを植える深さに関係することを突き止めた。その基準は15センチ〜17センチ。すなわち、種イモの位置が15センチより浅いと緑化する確率が高いことがデータから分かった。一方で、17センチよりも深く植えても腐敗などのリスクが多く見られたという。そこでカルビーポテトでは、契約農家に対して緑化を防ぐための最適な培土の方法やタイミングをレクチャー。その結果、翌2010年には、例えば、上川エリアの剣淵では前年比で緑化が62.5%減、同じく美瑛では56.5%減と大幅に改善された。

 そのほかにも、栽培開始から2カ月で茎の高さが20センチまで伸びているかどうかが正常な生育の判断基準になるということもデータ分析から導き出された。

 このようなデータの活用によって、人為的な判断ミスなどによる不作のリスクを極力減らし、より安定的なじゃがいもの供給が可能になったとしている。それに伴い、収量予測の精度も年々高まっているという。

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