ソーシャルメディア分析で海外に打って出るデータセクション田中克己の「ニッポンのIT企業」(1/2 ページ)

データ分析サービスのデータセクションが、ビックデータ活用へと事業拡大を図っている。食品やモノ作りなどさまざまな業種の企業データとソーシャルメディアを組み合わせて、新ビジネスを創出する。

» 2014年08月19日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 データ分析サービスを手掛けるデータセクションが、ビックデータ活用へと事業拡大を図っている。食品やモノ作り、広告などさまざまな業種・業態の企業が持つデータとソーシャルメディアを組み合わせて、新ビジネスを創出する。日本企業の海外市場開拓を支援し、自らも世界に通用するデータ分析専門会社として羽ばたく計画も練る。

長年蓄積したソーシャルメディアデータを生かす

 「データを持っている会社は少ない」。データセクションの澤博史社長は、2003年からブログやTwitter、Facebookなどソーシャルメディアに書き込まれた情報を収集、蓄積し続けてきたという強みを、いよいよ生かす時期が来たことを強く感じている。特に消費財関係の企業は消費者の反応に敏感で、ソーシャルメディア上での評価などの情報を収集、分析することに力を入れている。新たな販売施策を練ったり、次の商品企画につなげたりする上で、消費者の“ナマの声”は聞き逃せないからだろう。

 だが、こうしたデータの収集、分析は容易なことではない。どこにどんなデータがあるのか、つまり欲しい情報を簡単に探し出せるわけではない。集めたデータをクロス分析する専門家を抱えている企業は少ないし、分析結果から何らかの解を導き出す必要もある。そこに、データ分析の専門家や専門会社への注目が高まっている理由がある。

 データセクションはそんな1社である。澤社長によると、データ分析からデータ活用のコンサルティング、システム構築までを請け負える点が競合他社との差別化になるという。「分析ツールを自社開発する技術力があることに加えて、コンサルティング部隊の子会社があるし、ベトナムにはセミオーダーのシステムを安価に開発する会社を設立している」(澤社長)。

 分かりやすく言えば、データの収集、分析から活用までのPDCAサイクルを繰り返し、消費者の求める商品や購買動向などを予測する精度を高め、商品の販売増からビジネスモデルの創出を支援できるということだろう。そうした点に魅力を感じて消費財メーカーや金融機関などが顧客になっている。自社製分析ツールは富士通、NECなどにOEM供給もしているという。

企業同士の「データ取引所」を開く

 データセクションは、2000年に橋本大也取締役会長が検索エンジンの開発、販売を目的に事業をスタートした。「キーワードから連想して検索するエンジンだったが、あまり売れなかった」(橋本会長)。そのため、ISPなどから検索システムやWebサイトの開発を請け負う事業が中心になっていった。そうした中、ソーシャルメディアの急速な普及で、口コミなどをマーケティングに生かそうとする企業が増え、追い風が吹いてきたのだ。

 そこで、橋本会長(当時社長)は2009年に澤氏を代表取締役社長に迎えるとともに、データセクションは蓄積した技術とノウハウをベースに、自社サービスの開発に力を入れることにした。その1つが、月額10万円超で利用できる「Insight Intelligence」と呼ぶ分析ツールだ。1日約1億件の口コミを収集、分析する同ツールは、既に400社近くが利用しているという。

 例えば、ソーシャルメディアのデータを分析して、誰がテレビ番組を観ているのかをつかめば、その番組に最適なCMが何であるかを導き出すことができるかもしれない。新商品の発売に伴うCMキャンペーンを打った後、ソーシャルメディア上の反応や評価をレポーティングする。新商品の売り上げと口コミなどの相関関係を見えるようにもする。

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