年間60万件の「顧客の声」を自動分析――フコク生命が挑む“ビッグデータ苦情対応”(2/3 ページ)

» 2014年08月26日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

いざシステム導入、稼働後は「作業量が10分の1に」

 同社が新システムの導入を検討し始めたのは2011年9月のこと。日本IBMからシステムを提案されたのをきっかけに、テキストマイニングソフト「IBM Content Analytics with Enterprise Search」の採用を決定した。「目的に対して機能が適していたのと、導入が簡単で効果も大きいと想定されたのが決め手になった」と齋藤さんは振り返る。

 その後、環境設定やテキストマイニング用の辞書設定などを行い、2012年7月にテスト稼働をスタート。従来通りの“目視チェック”と並行してシステムを稼働させ、正確性などに問題ないことを確認したうえで9月に本番稼働にこぎつけた。

photo 新システムの概要

 システム導入の成果はすぐに表れたという。「スタッフが確認すべき問い合わせ件数が3000件から300件まで減り、週に21時間ほどかかっていた作業が2時間まで短縮できました」と齋藤さんは話す。

 新システムの導入は業務時間の短縮につながっただけでなく、顧客にとってのメリットも生んでいるという。「従来はどうしても、苦情として認識せず登録してしまった問い合わせ内容を見つけるまでに1週間程度かかる場合がありました。新システムの導入後は、翌日には全ての苦情を抽出して迅速に対応できるようになりました」

 ただし、今後も苦情抽出作業を完全に自動化するつもりはないようだ。「導入したシステムの精度は確かに非常に高いですが、ツールだけでは抜け漏れがある可能性が否めません。苦情かどうかシステムが判別できない問い合わせについては目視で確認することが欠かせません」

システム構築はあえてベンダー任せ 現場での検証作業は慎重に

 IBM Content Analyticsはソフトウェア製品だが、今回のシステム構築ではハードウェアの調達から各種設定作業、テキストマイニング用の辞書作りまでをIBMが担当し、「短期間で容易に導入できた」と齋藤さんは振り返る。具体的には、検討開始から約12カ月という短い期間で本番稼働を始めることができたという。

 「このような高度なテキストマイニングシステムを社内だけで構築しようとすると、とてもこのような期間では収まりません。今回は全面的にベンダーに依頼し、その代わりに現場での検証作業をしっかり行うことで、スピード感と成果を両立することができました」

 システム構築時はスピードを重視した一方、稼働後の拡張性にはこだわった。問い合わせ内容を分析する辞書の内容は「ユーザーがExcelシートを使って後から柔軟に追加できるようになっている」という。

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