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» 2014年09月10日 08時00分 公開

“データ転送にトラブル経験あり”が43%も:エンタープライズがクラウドへ行けない思わぬ理由

エンタープライズクラウドが本格化してきたが、既存システムをクラウドに移行するには大きな壁がある。その理由を聞いた。

[大津心,ITmedia]

 マイクロソフトがWindows Azureの日本データセンターを2月に開設し、IBMやOracleも本格参入を表明するなど、いよいよ日本のエンタープライズ分野におけるクラウド市場が本格化してきた。それに伴い、先進企業によるクラウド移行事例もちらほらと出てきている。

 その一方で、オンプレミスからクラウドへ移行する際の大きな問題も顕在化してきた。「企業のオンプレミスにある莫大なデータをどうやってクラウドへ移行するのか?」という問題だ。データ容量が数ギガ〜数十ギガ程度であれば、通常のインターネット回線を利用して転送することも可能だ。しかし、企業規模によって異なるが、数十テラバイトから100テラバイトを超えるデータを移行するのは非常に手間と時間が掛かる。インターネット回線を使った移行ではセキュリティリスクの問題もある。

 この問題をクリアにしない限り、エンタープライズシステムをそのままクラウドへ移行する際、このデータ移行の問題が大きな障害として立ちはだかる。この問題があるため、「新規システムならクラウド上での立ち上げを検討するが、既存システムの移行は遠慮したい」という企業も多いだろう。

 今回は、ビッグデータやストレージに詳しいリサーチャーであるテクノ・システム・リサーチ シニアアナリスト 幕田範之氏にクラウドへのデータ移行やストレージの現状について聞いた。

「データ移行時にトラブル経験あり」が43%

 「『既存システムのデータをクラウドに移行したい』というニーズは確実にあり、今後さらに増えていくだろう。しかし、現状では画期的なソリューションはなく、人海戦術や数カ月かけて少しずつ移行するといった手法が主流となっているのが状況だ」と幕田氏は現状を説明する。

幕田氏写真 テクノ・システム・リサーチ シニアアナリスト 幕田範之氏

 そもそも、オンプレミス−オンプレミス間のデータ移行であっても、容量が増えるほど移行の難易度は上がり難しい。ただし、オンプレミス間のデータ移行であれば、最近では「IBMやデータコア・ソフトウェアなどの仮想ストレージソリューションを利用することで、新旧ストレージを1つのデータプールのように見せかけ、その間に少しずつデータ移行する」といった手法もできるようになってきた。一方、オンプレミスからクラウドへの移行に関しては前述の幕田氏のコメントのように、人海戦術に頼る部分が大きいと言う。

 テクノ・システム・リサーチの調査によると、「データ移行の際に何らかのトラブル経験あり」と回答した企業は43%に上る。「移行中にデータを紛失したことがある」と答えた企業は13%だ。このように、大容量データの移行時にはデータ紛失のリスクが伴う。従って、データ移行作業を依頼されたSIerの多くは「データ移行後、人海戦術で問題あった部分を探し出し、対応していく」という作業を強いられている。

 「このように大容量のデータ移行は、そもそもリスクのある作業だ。その作業をSIerがリスクを承知の上で請け負っているのが現状だ。オンプレミス間の移行でもこのようなリスクが存在する。これがクラウドへの移行となると、インターネット回線を用いた移行ではセキュリティのリスクも存在する上、回線上のどこかの影響で転送が途中で止まるといった現象も発生するだろう。専用線を敷けばリスクは低減するがコストが掛かる。この部分が既存システムや基幹システムのクラウド移行に関して大きなボトルネックになっている。この問題を解決するソリューションとして注目しているのが、日立などが提供しているデータ転送ソリューションだ。このソリューションでも機能的に完全ではないが、着眼点は正しいし、ニーズは確実にあるので今後の進化に期待したい」と同氏は指摘する。

ユーザーはバックアップはしたいけど、意識はしたくない

 テクノ・システム・リサーチの調査によると、ストレージに対するニーズで69%の支持を集め、最も多かったのが「バックアップを意識しないストレージ」だ。つまり、多くの企業は「バックアップはしたいが、面倒な設定やサーバー設置をせず、運用開始後もディスクの追加などの手間がほとんどかからない、つなげるだけで後は勝手にバックアップしてくれるストレージ」を求めているのだ。

 幕田氏は、「重複排除機能を有したバックアップソリューションなどは、手間が比較的かからないストレージとして人気が高い。バックアップアプライアンスも運用の手軽さで人気だ。バックアップ自体は依然としてニーズが高いが、運用の手間は減らしたい、そんなニーズを汲んだ製品の人気が出てきている」と説明する。

 また、企業ではクラウドバックアップに対する意欲はかなり上がっている。「プライマリデータをクラウドに置くのは抵抗があるものの、バックアップを置く場所としてのクラウドはニーズが高い。バックアップデータであれば、1つのファイルにまとまっているので暗号化すればある程度のセキュリティレベルが担保されるし、何しろ運用が楽なのがうけている」(幕田氏)。

運用管理ソフトのレベルは高い、後はデータ移行と姿勢の問題

 幕田氏は、複数クラウドをまたがって利用する「マルチクラウド」などに対しても、運用管理ツールの対応は進んでおり、「運用管理面で言えば、エンタープライズ領域でもクラウド利用は十分あり得るレベルに達している。ただ、前述のデータ移行の問題やビジネスへの貢献度合いをきちんと経営に説明できているか、という問題がまだ残っている。今後はこの2つの問題さえ解決できれば、既存システムのクラウド移行は加速度的に進む可能性が高いだろう」(同氏)と分析した。

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