オリックス・バファローズはいかにファン会員データを“宝の山”に変えたか球団ビジネス変革の裏側(前編)(2/2 ページ)

» 2014年09月26日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]
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会員の行動データを詳細に把握

 CRMシステムの導入に合わせて、オリックスはファンクラブ会員の仕組みを刷新。2013年シーズンから新たにポイントプログラムをスタートした。年会費でプレミアムメンバー(10万円)、プラチナ(3万円)、ゴールド(1万円)、レギュラー(3000円)、ジュニア(1000円)と5つのグレードを設け、上位になるほどポイント付与率が高くなったり、優先的に特典サービスなどを受けられるようにしたりした。

球場に設置されたiPadにQRコードをかざせば来場ポイントを獲得できる 球場に設置されたiPadにQRコードをかざせば来場ポイントを獲得できる

 会員に対しては旧来のスタンプ手帳から新たな会員カードを発行。そこにはID番号に当たるバーコードとQRコードが記されており、会員は、例えば、Webサイトでチケットを購入する際にIDを入力したり、球場の入り口に設置されているiPadにQRコードをかざしたりすることでポイントを獲得できるようになった。そのほか、グッズや飲食の購入、Webアプリゲームなどでもポイントを得られる。

 ポイントプログラムの開始に合わせて、会員のデータベースも整備した。2014年9月現在、会員は約4万人で、男女比は8:2、年齢構成は30代が最も多く、40代、20代、50代と続く。居住地については大阪、兵庫で70%を占めている。

 これらの一連の取り組みによってオリックスが目指したのは、会員の「見える化」だ。新システムを1年間運用したところ、結果的に、長年にわたり課題となっていた会員一人一人の行動データを正確に把握できるようになった。そうしたデータを具体的に分析していくつかのことが明らかになった。例えば、ホームゲーム一試合当たりの来場者のうち会員は約20%に過ぎないのに、グッズ売り上げの約40%が会員によるものだというものである。「データによると会員は平均で年間5.5回来場している。つまり、毎回のようにグッズを購入している会員が多数いるということだ」と緒方氏は話す。

 それを裏付けるべく、さらにファンクラブ会員データを細かく分析すると、2013年のグッズ、飲食、チケット購入総額平均はゴールドメンバーで約5万円、プラチナは約8万円、プレミアムは約20万円にも上っていた。緒方氏は「よりグレードの高い会員を増やし、グッズなどの収益の拡大を図っていくことが、われわれの取るべき戦略だというのが分析データによって明確になった」と力を込めた。

 では、その定めた戦略にのっとって、どのように年間1万人ものファンクラブ会員を増やすことができたのか、さらにはいかにして収益を伸ばしていったのか。その具体的な施策を後編でお伝えする。

 変更履歴:球団名の表記および本文の一部内容に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。[2014/9/26 10:40]



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