その卓越した拡張性と堅牢さゆえに、今も企業のアプリケーションの55%はメインフレームによるトランザクション処理を必要としており、データも80%はメインフレームに格納されているという。古臭いイメージがなかなかぬぐえないメインフレームだが、IBMは多額の研究開発費を投じ、常に最先端の技術を盛り込んできた。
2012年に発表された「Agile Computing」は既にその成果がSystem zやPower Systemsに盛り込まれてきている。プログラムが可能なFPGA(Field-Programmable Gate Array)や数値計算を並列処理するGPUアクセラレーターを組み合わせるアプローチだ。
旧NetezzaのPureData System for Analyticsは、FPGAを活用し、複雑なクエリを2000倍の高速で処理するもので、System zのDB2と連携することで劇的な性能向上をもたらす。このカンファレンスでも連携ツールであるIBM DB2 Analytics Acceleratorの機能強化が発表されたばかりだ。
Power Systemsでも今回、OpenPOWER Foundationを通じた成果の発表があった。POWER8プロセッサとNVIDIAのGPUアクセラレーターを密接に組み合わせることで、計算中心のアプリケーションの処理速度を大幅に高めたIBM Power S824Lだ。
さらに野心的な取り組みは、人の脳からヒントを得た「Synaptic Chip Architecture」の開発だろう。人の脳におけるニューロンとシナプスという優れた構造をプロセッサに持ち込み、その組み合わせを無数に接続していくことで、消費電力を抑えながら高い処理性能を実現する試みだ。
ステージに登場したIBMフェローのバーニー・マイヤーソン氏は、「半導体の微細化技術が何十年もコンピュータ業界を支配してきたが、原子よりも小さくすることはできないし、消費電力を考えれば、もはや限界だ」と話す。
8月に発表された第2世代のTrue Northは、4096のコア、合計でニューロンが100万個、シナプスは2億5600万個を搭載しながらわずか70ミリワットしか電力を消費しないことを実証したほか、縦に4つ横に4つ、計16プロセッサをボード上でシームレスに接続したシステムもデモされている。このジェネラルセッションでもTrue Northシステムが複数の人やクルマを認識して追尾する様子がビデオで紹介された。
System zやPower Systemsに搭載される具体的な計画こそ明らかにされていないが、マイヤーソン氏は、「微細化技術は物理の壁にぶつかる。今のプロセッサは5年後に消えても不思議はない。プランBが必要だ。われわれは、次世代のプロセッサとして、2003年からSynaptic Chip Architectureの開発に取り組んできた」と話す。
IBMでは向こう5年間で30億ドルを次世代ブロセッサの研究開発に投じることを明らかにしている。
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