ボストンに学ぶ市民参加型コミュニティの管理と人材の役割ビッグデータ利活用と問題解決のいま(2/3 ページ)

» 2014年10月14日 08時00分 公開
[笹原英司ITmedia]

コミュニティエンゲージメントによるボトムアップ型のシビックテック利活用

 このようにボストンは、新技術や高度人材が集積するクラスターとしての機能を果たしているが、市民参加型のシビックテック利活用についてみると、自前で全てを立ち上げたわけではない。2011年、「コード・フォー・アメリカ」より、ボストン市民と行政サービスの橋渡し役を担うフェローとして、市民エンジニア7人(内4人は西海岸出身者)の派遣を受け入れてから、利活用の仕組みづくりが本格化している。

 ボストンでは、既存の地域組織や地方自治体と連携しながら、市民の積極的な参加を促すために、ボトムアップ型のコミュニティエンゲージメント手法を活用している。その代表例が、「市民参加型予算」と「市民参加型チャイナタウン」だ。

 市民参加型予算は、青少年の予算決定プロセスへの関与を促進させることを目的として、NPO市民参加型予算プロジェクトボストン市長室青少年協議会ボストン青少年家族センターが共同で始めたプロジェクトであり、行政機関から独立したチームがコミュニティ運営に当たっている。

 具体的な活動としては、12歳〜25歳のボストン在住の青少年が集まって市の予算100万ドルの使い道を決める「ユース・リード・チェンジ」を実施している。このプロジェクトから生まれたアウトプットは、ボストン市の正式な調達プロセスにおける提案依頼書(RFP)として採用され、具体的な政策に生かされている。

ユース・リード・チェンジ ユース・リード・チェンジ

 他方の市民参加型チャイナタウンは、アジア系住民が多く居住するチャイナタウン地域の都市計画マスタープランにおいて、計画策定の早期段階からチャイナタウンの住民の声を反映させることを目的として、マッカーサー財団と地元のアジアコミュニティ開発会社(ACDC)、エマーソン大学ボストン広域都市圏計画協議会(MAPC)、マジーレインが共同で開発した没入型3Dゲームである。地域活動に関わった経験のない若い世代の住民でもゲーム感覚で参加できるように、15人の仮想住民がキャラクターとして、仕事や住居、交流の場所を見つけながら、与えられた課題を達成するゲーミフィケーション形式を採用している(YouTube動画を参照)。

チャイナタウン ゲーム感覚で参加できる「市民参加型チャイナタウン」(YouTubeより)

 いずれの市民参加型プロジェクトでも、青少年やアジア系住民など、絞り込まれたターゲット層とのリアルな場での交流からコミュニティ構築をスタートさせて、ハードルの低いコミュニケーションツールを駆使しつつ、徐々に空間や時間の壁を取り除いて自発的な参加を促すやり方が基本となっている。「ウォーキングシティ」ならではの地理的メリットを生かしたO2O(Online-to-Offline)のコミュニティ連携は、ボストンが得意とする手法であり、自動車での移動が多い西海岸や中西部とは違う日常文化が反映されている。

 コード・フォー・アメリカのフェロー派遣後に設立された地域組織の「コード・フォー・ボストン」では、「Meetup」、「GitHub」、「Google Groups」、「Twitter」、「Facebook」などのコラボレーションツールが利用されている。オンラインコミュニティの運用管理者としては、まず、各種ツールに習熟してリーダーシップを発揮できることが求められるが、さらに運用実務の経験・ノウハウを整理・可視化するためには、過去ログやアーカイブを上手に活用しながらドキュメント化・マニュカル化することも重要である。

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