事例で紹介する「Windows Embedded 8.1」の使い倒し方「Windows Embedded」を企業で使い倒す(1/2 ページ)

なかなか知られていない「Windows Embedded」。前回はロックダウン機能などを紹介した。今回は実際に利用されている事例を中心に、Windows Embedded 8.1の使い方を紹介していく。

» 2014年10月24日 08時00分 公開
[戸嶋一葉,日本マイクロソフト]

不特定多数のユーザーが端末を利用する際に活用するEmbeddedエディション

 皆さまもご存知の通り、Windows 8.1にはさまざまなエディションがある。

 その中でも、「Embedded(エンベデッド)」というエディション名を聞くと、POS端末/ATM端末/デジタルサイネージなど、特殊な端末上での利用をイメージする方が多いだろう。

 時折、居酒屋やカラオケの注文機器や駅ナカのデジタルサイネージが整備中となっておりWindowsのデスクトップスクリーン画面が表示されいてることで、生活の身近なところにあるPCではないデバイス上でもWindowsが稼働していることに気付いた、という経験をされた方もいらっしゃるのではないだろうか。

 このように、不特定多数のユーザーから利用されることを想定されているデバイスに搭載されているWindowsの多くが“Embeddedエディション”である。Windows通常版の機能を制限し、特定アプリケーションの稼働を限定することで、多くのユーザーに触れられる端末が実現する。

 実際の事例では、千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」における「モニター式タッチパネル型サイネージ(2013年8月から本格運用)」での活用が挙げられる。タッチパネル型のデジタルサイネージ上で稼働するこのOSは、Windows 8の特徴を活かし、リアルタイムかつインタラクティブに柏市の情報を表示している。毎日、行政機関のニュースや交通情報、地域のエネルギー需給状況や街づくり計画、イベント情報などを発信し続け、万が一の災害発生時は緊急放送を表示させるといった具合に、柏市での生活を支える一部として稼働している。

「モニター式タッチパネル型サイネージ」のイメージ

Embeddedエディションは、ノートPCにインストールできる?

 Embeddedエディションは特殊なデバイス上で稼働するだけではなく、使い馴染みのあるWindowsノートPCやWindowsタブレット/ファブレットデバイスでも利用することができる。実際に、多くのOEMメーカーからリリースされているシンクライアント端末も、Embeddedエディションがインストールされている。

 今回ご紹介したいのは、「Windows Embedded 8.1 Industry Enterprise」(以下、Windows Embedded 8.1)をインストールして利用できるようになったということ。これは、2014年4月1日付けでWindows SA(Software Assurance)特典が変更されたことによるもので、Windows SAの権利を社内で保有している場合、EmbeddedエディションOSの利用権が付与されるというものだ。

 Embeddedエディションの機能を利用して、キオスク端末や特定業種端末といった不特定多数のユーザー利用を想定したシナリオも、シンクライアント端末として個人利用を想定したシナリオも、どちらも企業内で展開・利用できるようになった。実際に運用している事例も数多く存在する。

Windows Embedded 8.1で利用できる機能

 Windows Embedded 8.1は、Windows 8.1 Enterpriseの全ての機能に加え、「組み込み向け専用機能」(Writeフィルタ、USBフィルタ、ジェスチャーフィルタなどのロックダウン機能)が備わっているものだ。

 Windows PCやタブレットをEmbeddedエディションで利用するということは、ドメインユーザーとして扱うこともできるため、Active Directory環境下で集中管理するシナリオにも適応できる(System Center Configuration Manager 2012 R2でもサポートされている)。

通常版WindowsとWindows Embeddedの違い

 Embeddedエディション特有の「組み込み向け専用機能」を利用することによって、機密情報を扱いながらも貸出端末として稼働させることや、共有端末として利用するといったことが実現できるのである。その例となるWindows Embedded 8.1を利用した事例をいくつか紹介しよう。

マンダリンオリエンタルホテルのEmbedded 8.1+Surface Pro 3

 世界最大のホテルチェーンであるマンダリンオリエンタルホテルグループが、宿泊者向けの貸出デバイス、そしてサービスリクエストを挙げる端末として、Surface Pro 3の導入を決定した。Surface Pro 3上で稼働するOSは、Windows Embedded 8.1である。

マンダリンオリエンタルホテルグループで宿泊者に貸し出すSurface Pro 3のイメージ。ここからブラウジングやメールなどさまざまなことを利用できる

 宿泊者はブラウジングやメール、アプリをインストールして自由に利用するなど、ノートPCやタブレットで行う通常の操作は何の機能制限なしに実行できる。

 さらに自社で独自開発したWindowsストアアプリは、朝食のリクエストやホテルインフォメーションの取得・コンシェルジュへのサービスリクエストを行うことができ、さらに9か国語の言語に対応しているため、海外からの宿泊者にもサービスを提供することが可能となっている。

 エンターテイメント面での機能も提供しており、Surface Pro 3が宿泊者の部屋のTVと「Miracast(ミラキャスト)」と呼ばれる技術で接続され、タブレット上で閲覧するYouTube動画や映画サービスをTVに転送し、大画面で楽しむことができる。

 Embeddedエディションは機能制限することで利用シーンを広げる、と説明したが、本事例では宿泊者はWindows 8.1の全ての機能を制限なく使うことができる。最大の特徴は、Embeddedエディションの機能を使って利用後にユーザーの設定や保存データを全てリセットするため、端末に個人情報を残すことはないという点だ。これにより、宿泊者もサービス提供側も安心してセキュアにタブレットPCを利用できる。

 Surface Pro 3にデフォルトで搭載されているOSはWindows 8.1 updateのProまたはEnterpriseエディションであり、Embeddedエディションでの提供はない。しかし、Windows SAの権利を利用することで、お好みのデバイス上(今回はSurface Pro 3)にインストールして利用できる。さらに本事例のように、Surface Pro 3上でのWindows Embedded 8.1活用はサポートされているため、マイクロソフトへの問い合わせは大歓迎だ。

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