Windows Embeddedを使って既存PCをシンクライアント化「Windows Embedded」を企業で使い倒す(2/2 ページ)

» 2014年10月28日 08時00分 公開
[胡口敬郎,日本マイクロソフト]
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リッチクライアントをよりセキュアに、シンクライアントをより便利に

 営業の持ち出し用PCなどは、利用用途からオフラインでの利用も想定されるため、一般的にリッチクライアントである必要があった。

 しかし昨今、携帯キャリアが提供するWi-Fiルータや、SIM内蔵PCの登場によりネットワークの接続性が上がったことや、パブリッククラウドで提供されるSaaSベースのメールやファイルサーバー、Officeアプリケーションの登場で企業内情報が、社外からでもアクセス可能となった。このような要素が重なり、リッチクライアントにももう一段進んだセキュリティ対応が必要となったのだ。

 また、前述したとおり、既存のシンクライアントソリューションにおいても業務生産性向上が求められており、ここでもWindows Embedded 8.1が有効だ。

 Windows Embedded 8.1は通常のWindows OSである「Windows 8.1 Enterprise」の機能上位版の位置付けだ。従って、Windows 8.1 EnterpriseのVPN機能「Direct Access」や、「Active Directory」への参加やグループポリシーでの管理などに全て同様に対応する。そしてEmbedded特有の各種フィルタが追加で利用なのだ。

 例えば、ある企業がSaaSベースのサービスを利用し、かつDirect Accessによって社外から社内への接続サービスを提供している前提で、営業担当者がそれらサービスを利用しようとした場合を考える。その場合、Windows Embedded 8.1がインストールされたPCを営業担当者に配布することで、営業担当者は社内外を問わず、全てのデータにアクセスができ、リッチクライアントと同様にPCの機能をフルに活用した作業が可能となる。

 加えて、その際にはPCに一切の情報が残らない環境が実現できるのだ。企業が求める情報セキュリティと利用者の生産性向上を同時に実現できる可能性を感じていただけたのではないだろうか。

 また、シンクライアントとして導入されたケースも見てみよう。あらかじめフィルタ機能で機能制限が掛かった状態であっても特別に制限しない限り、Internet ExplorerのようなWebブラウザやローカルにインストールされたアプリケーションが利用できる。

 社内ネットワークの構成を適切に設定すれば、セキュアな環境が求められるものは仮想PCから、その他のWeb閲覧などはクライアントのIEから直接行う、といった構成が可能だ。この構成によって、通常のシンクライアントソリューションでは難しかったYoutubeなどの動画や音声の利用が可能となり、これまでシンクライアントとリッチクライアントを使い分ける必要があったところを、1台のクライアントで対応できるようになるのだ。

用途に応じてVDIとインターネット経由を使い分けることでセキュリティも担保できる

 これは、リッチクライアントとシンクライアントの良いとこ取りをしたハイブリッドクライアントと呼ぶべきものであろう。これも、企業が求める情報セキュリティと利用者の生産性向上を同時に実現できる可能性を感じていただけたのではないだろうか。

シンクライアントソリューションに最適化されたライセンスプログラム

 また、ここまで利用シーンを中心に紹介してきたが、Windows Embedded 8.1の入手方法についても触れておきたい。Windows Embedded 8.1は単独の製品としては提供されておらず、ボリュームライセンスを通じて購入することができるWindows ソフトウェアアシュアランス(以下、Windows SA)の特典機能として提供されているのだ。

 Windows SAに含まれるさまざまな特典機能には、最新のWindows OSの最上位エディションへのアップグレード権や、Windows to GoによるOSのローミング権などに加えて、シンクライアントソリューションで場合に必要となる仮想PC用のOSの利用権が付いてくる。

 仮想PC用のOS利用権には、「Virtual Desktop Access(VDA)」というライセンス体系もあり、この権利にもWindows SAの権利が内包されている。つまり、VDI方式のシンクライアントソリューションを導入する場合に必要なライセンスを調達すると、Windows Embedded 8.1の権利が自動的に付与されてくるのだ。

 これらの権利が付与されているWindows OSのProエディションがプリインストールされたデバイスに対して、Windows Embedded 8.1がインストール可能となる。逆に、Homeエディションがプリインストールされているデバイスでは利用できない点に注意してほしい。

まとめ

 Windows Embedded 8.1の登場によって、新しい形のクライアントPCの登場が塑像できたかと思う。

 これまでのWindows OSでは難しかった、より高度なセキュリティの実装がEmbedded OSの機能で補完され、シンクライアントとリッチクライアントの特徴を兼ねそろえたクライアント端末の実現が可能になったと考えている。実際にWindows Embedded 8.1の機能をご体験いただき、クライアントPCの可能性を感じていただきたい。

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