普及の第2フェーズに入る「iBeacon」──ACCESSに聞く、導入事例と対策のヒント(1/3 ページ)

あらゆる機器がネットワークとつながるIoT社会の到来を控え、企業のIT担当者はどこに、何を投資し、注力すべきか。今回はIoT対策の一環と位置付ける「iBeacon」をキーワードに、導入例と対策のヒントを探ろう。

» 2014年10月27日 15時17分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

2015年以降、新たなiBeacon事例が次々と登場へ

 Apple「iBeacon」機能の普及がより進みそうだ。iBeaconは2013年9月のiOS 7で機能が搭載され、2014年春よりいくつか先行導入事例が出てきている。iBeaconを含むBeaconシステムは、今後のO2O(Online to Offline:オンラインの情報からオフラインの消費行動を促すマーケティング施策)の切り札などと言われている。

 実際にいくつかの店舗に導入されはじめたことで、初期フェーズは経過した。そして2014年10月現在、これまで導入を前提に検証を進めていた各社の導入案件が多数走りだす動きが加速しており、第2フェーズへと移行しつつある様子が見えてきた。

 今回は、このiBeacon展開の“次”と、同技術になくてはならない「スマートフォン」を活用したIT導入事例に関する最新事情を、10月15〜17日に行われた展示会 ITpro Expoより振り返ろう。

photo iBeaconの基本的な仕組み。これら3つの要素が組み合わさり、初めてシステムとして機能する

 iBeaconを改めて簡単におさらいする。Bluetooth Low Energy(BLE)と呼ぶ近距離通信技術・規格とスマートデバイスを組み合わせ、そこで得た「位置情報」をさまざまな形で活用する機能だ。

 iBeacon信号を発するモジュールと、その信号に含まれるユニークな番号情報「UUID」を受信し、読み取れるスマートフォンアプリの2つを組み合わせて、利用者がいる位置の測定や行動履歴を取得したり、特定のiBeaconモジュールに近付いた人へ最新情報をプッシュするかのように配信できる。iBeaconモジュールの設定やアプリの内容しだいで、利用方法はさまざまに変化する。

 iBeacon自体はBLEという業界標準規格に則っているため、BeaconシステムはApple専用の技術というわけではない。BLEに対応するAndroidデバイスでも同様のシステムを構築でき、iOS、Androidの双方に対応するソリューションを提供するソリューションベンダーも増えてきている。

 ただ、広く一般的なBeaconシステムに対し、「iBeacon」の機能と仕様はApple自身が定めている。「iBeacon対応」をうたうには、同社のMFi認証プログラムの認定を受ける必要がある。とはいえ、iOS 7/8を導入したiPhoneであれば、2014年10月の現時点で、ほとんどの機種でiBeaconがすでに利用可能な状況にあるのが大きな強みだ。Androidデバイスは投入ベンダーや機種数が多岐にわたるため、対応バージョンやハードウェア都合の制約がまだ残っている。多くの端末で同技術が利用可能になるには、あと1〜2年程度はかかるとみられている。

photo ACCESS 取締役専務執行役員CTOの石黒邦宏氏

 ITpro Expoで講演を行ったBeaconソリューションベンダー大手のACCESS 取締役専務執行役員 CTOの石黒邦宏氏によると、2014年10月現在の状況は「iBeacon信号を発信するBeaconモジュールを設置し、この信号をキャッチして何らかのアクションを起こすには、まずスマートデバイスの存在が不可欠。そして、これがインフラとして機能するには(iPhoneの世界限定としたうえで)スマートデバイスで受信できる信号を発するiBeaconモジュールが多数設置され、それに対応したサービスとアプリが用意されていなければならない。2014年10月現在は、設置されているいってもスタジアムやデパート、店舗の入り口など、ごく特定のポイントにiBeaconが偏在している状況にすぎず、多くの人はその世界に触れることさえままならない」という。

 だが石黒CTOによれば、ACCESSだけでも2014年から2015年にかけていろいろな会社からiBeacon導入に関する発注を受けているようだ。こうして設置されたiBeaconモジュールが一定数を超えることで、何か変化が起きる可能性が大いにあると期待を込める。

 例えば、2014年末から2015年まで設置予定の同社へのiBeaconモジュールのオーダー数は約3万〜5万個に上るようだ。これが10万個になれば大きな変化が考えられる。仮に10万個のiBeaconモジュールが日本の各県に配置されたとすると、1県あたり平均2000個。これが主要な交通機関やモールなどへ効率的に設置されたならば、「iBeaconを活用したインフラのようなものが出現する可能性がある」というのが同氏の考えだ。


photo アプリ起動やクーポン配信といった初期のiBeacon事例から進んだもの。iBeaconモジュールの近くを通過することで、スマートフォン内のアプリが(スリープ中であっても)反応してUUID情報を適時収集する。これを集計し、人の行動動向などの解析=つまり、個々人がそのときに必要な情報をピンポイントに提供する手段の構築に役立てる
photo ACCESSは、Beaconシステムを導入しやすくするパッケージ製品「ABF」を提供する

 また、これだけの数のiBeaconモジュールが設置される中では、ともあれどう使いこなすかという導入企業側・サービス提供社側の意識の変化も見込まれる。

 筆者自身、世界各地のiBeacon導入事例を追いかけているが、現時点では基本的に予想できる範囲の事例しか認識していない。小売店舗の入り口にiBeaconモジュールを設置し、ここに対応アプリを入れたユーザーがスマートフォンを持って店舗へと近付くと、アプリが立ち上がって最新情報が自動的に表示される……というくらい。もちろんあれば便利に使えるが、シンプルな仕組みのものがほとんどだ。

photo 6軸センサーと温度・湿度センサーを内蔵したiBeaconモジュールのほか、用途に応じてさまざまなサイズのものが製品化されている
photo 個々のデバイスのサイズは非常にコンパクトで、指でつまめる程度。すべて電池動作で、600〜800ms間隔のiBeacon発信で最大1年程度連続稼働可能という

 では、第2フェーズ以降のその後は、どんなことが必要だろうか。

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