京都市営バスを便利にするIoT、「ハイテクバス到着案内システム」の裏側Beaconと公衆Wi-Fi網をうまく応用(3/3 ページ)

» 2015年01月06日 15時00分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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効果と今後:コスト削減で展開加速、海外観光客+その後にも

 この改善効果は大きそうだ。まず設置コストは約60万円(工事費含まず)に低減し、月あたりの設置数(市が設置できる能力)が8基まで向上した。年換算で96基だ。今後3年で200カ所の新型バスロケの設置を目指すという。デジタル制御の表示ディスプレイにより、他言語表示の対応も容易になった。すでに英語での案内表示が実現している。

 なお、Beaconモジュールを788台のバスへ一斉導入した事例は、おそらく2014年10月の導入事例発表時点では国内最大規模と思われる。新型バスロケ用にBeaconモジュールを納入したアプリックスは2014年11月、居酒屋チェーン「酔虎伝」などを運営するマルシェグループと共同で、系列店舗約600店にBeaconシステムを使った来店促進システムを構築した。こちらは、オンライン(スマホ経由の情報)からオフライン(実行動)を促す、O2O(Online to Offline)施策の一環となる取り組みだ。今後、2015年以降は、各社からこうしたBeaconモジュール数で3ケタ、4ケタクラスとなる大規模なBeacon事例は増えてくるだろう。

 2014年12月現在、Beaconシステムは来店の検知を目的としたO2Oマーケティング要素が中心のシステムがほとんどだ。ただ、今後は店舗内の屋内位置情報システムへの活用や、今回の京都市営バスのような「こういう方法もアリなのか」というユニークな活用事例も増えると期待する。

photo 京都では主に外国人観光客をターゲットに公衆Wi-Fiサービスがすでに導入されている。バス停や大手ハンバーガーチェーン店など市内の各店舗や拠点で利用できるようになっている。2014年12月にアクセスポイントの設定が変更され、事前登録なしでの公衆Wi-Fiが利用が可能になったようだ

 最後に「公衆Wi-Fiを活用した都市インフラ整備とその活用」にも注目したい。

 ここ最近、外国人観光客に向けた「無料Wi-Fiサービス」が続々開始、ないし拡充している。今回紹介した京都市の公衆Wi-Fi網も2014年12月に「Kyoto Wi-Fi」として一般開放され、観光客への利便性が増した。Kyoto Wi-Fiの利用可能エリア図を見ると、アクセスポイントは前述したバス停や駅といった公共交通施設のほかに、セブン-イレブンやマクドナルドといった海外でも著名なチェーン店などを中心に整備されている。

 京都市のこの取り組みは、インターネットが使えるのはマスト、それ以外に観光客のおもてなしのためのサービスをどう構築するか。さらにオリンピック後も活用する住民サービスの拡充としても考慮されている。この考え方は、企業としても2020年までのIT投資をどうするかを考察するヒントになる事例といえそうだ。

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