4Kの映像を生かしてスキルアップを目指す岐阜県教育委員会

岐阜県教育委員会が共通IT基盤の構築と併せて、4Kカメラを利用する遠隔研修システムを導入した。先端の映像技術をどう活用していくのか――。

» 2015年02月02日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
岐阜県教育委員会

 岐阜県教育委員会が県内の全公立学校に提供するITサービスの共通仮想基盤を構築し、同時に高精細映像を生かした遠隔研修システムも導入している。先進的な映像技術をいち早く導入した狙いを聞いた。

 共通仮想基盤は、岐阜県教育委員会が県立の高等学校や特別支援学校の教職員約5000人と、市町村立の小中学校や県立学校の教職員約2万人が利用する各種システムのプラットフォーム。異なる物理サーバ群で稼働していたシステムや各県立学校が所有するファイルサーバなどを統合・集約している。遠隔研修システムもこの基盤を活用する仕組みだ。

地デジがきっかけに

 岐阜県は平野部の美濃地方と山岳部の飛騨地方から形成され、全国で7番目に広い。教員などの研修は、実際に講師を前にして受講することが望ましいが、広大な県内から多くの受講者に参加してもらおうとすると、多くの時間とコストをかけなくてはならず、参加者の負担も大きい。このため教育委員会は、以前からビデオ会議システムを活用して遠隔研修を行っていた。

 旧システムの映像画質はアナログテレビと同じSD(標準)だった。岐阜県教育委員会 教育研修課の加藤昌宏氏は、「テレビ放送がデジタル化されて高画質が一般的になり、SD画質では満足を得られなくなりました。研修でも講師を目の前にしている会場と遠隔地の会場との臨場感の差を最小限にしたいと考えていました」と話す。

 そこで新システムでは映像の画質や音質の向上を図ることで臨場感を高め、研修の“質”と効果をアップさせることを目的とした。

構築された共通仮想基盤のイメージ(ネットワンシステムズより)

講師も資料も鮮明に

 遠隔研修では講師の表情やジェスチャー、声だけではなく、研修に使う資料も同時に表示させる必要がある。新システムでは映像や音声が高品質であることに加え、講師の動きや資料、遠隔地の会場など複数の映像を同時に表示できることが要件になった。

 システムの導入は共通仮想基盤を構築したネットワンシステムズが手掛けている。教育委員会の要件に対して、同社はHDの4倍の精細度を持つ4Kのカメラや、映像を複数同時に表示できる「Cisco TelePresence」などから構成されるシステムを提案した。

 4Kのカメラは講師がいる会場に設置され、映像は共通仮想基盤やネットワークを経由してHD品質で遠隔地の会場に配信される。配信のために基幹LANのネットワーク帯域を1〜10Gbpsに増強して、安定性を確保した。遠隔地の会場では講師や受講者の映像と講義資料を2画面に分けて表示し、受講者が講師を目の前にしていているような臨場感を提供している。

新システムのイメージ

 なお、4Kのカメラで撮影された映像はHDにダウンコンバートしている。Cisco TelePresenceの映像はHDとなるためだが、4Kのカメラであれば、HDカメラより映像ソースの品質が高く、HDに変換しても高い精彩感になるという。別の特徴としてはコンパクトに収納できることから、研修内容や対象教員に応じて会場を柔軟に変更できるようになった。導入済みの機器とも接続できるため、映像品質だけでなく、使い勝手の良さにも配慮したシステムとなった。

活用に広がりも

 導入効果について加藤氏は、「講師の表情や動きを鮮明に撮影できるようになり、遠隔にいてもその場で説明を受けているような臨場感で研修を受けることができています。講師も配信先の会場を把握しやすくなり、好評でした」と述べている。

 今後は、遠隔授業や出張先からのテレビ会議への参加、高品質な動画コンテンツの教育現場への提供など、研修以外の活用方法も検討していくほか、機器も積極的に貸し出して利用者のニーズに応えたい考えだ。

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