気仙沼市が導入した新・災害情報システム、自治体ならではの“次”の考え方ネット有効活用+情報弱者への対応強化も(2/2 ページ)

» 2015年02月02日 21時00分 公開
[ふじいりょう,ITmedia]
前のページへ 1|2       

対策と方法:複数媒体への情報配信を一括操作で

 新たに導入した災害情報システムは、総務省消防庁の「住民への災害情報伝達の多様化実証実験」において整備され、東日本大震災と同等の災害を想定した実証実験を通してシステムの有効性を検証した。以下の機能が特徴だ。

  • 多様な情報メディアへの一元配信
  • 全国瞬時警報システム(J-ALERT)による自動配信
  • 通信障害時にも配信可能な冗長構成
photo 気仙沼市で展開する防災・災害情報の配信メディア(出典:気仙沼市のWebサイト)

 気仙沼市役所には、伝達制御管理端末やJ-ALERT受信機、サーバ類を設置。防災行政無線、携帯端末の緊急速報メール、地域コミュニティFM局の「けせんぬまさいがいエフエム」、テレビのデータ放送から、FacebookやTwitterといったソーシャルメディア、デジタルサイネージなどに、1回の操作で情報を配信できる基盤を整えた。停電を想定した電源対策としてリチウムイオン蓄電システムも導入したほか、J-ALERTと連携したことで職員が不在でも初動段階で自動で情報を配信できるよう整備した。

 安波山山頂と魚市場屋上の市内2カ所に置いた監視カメラで、市内の様子をシステムでリアルタイムで確認できる仕組みもポイントの1つだ。もちろん、そのどちらも太陽光発電装置や蓄電システムを設置している。もし市役所が被災し、通信回線に障害が発生したらどうするか。そんな可能性も想定して、システムの中枢部分は離れたデータセンターに設置し、モバイル端末で遠隔操作もできるようにした。

 パナソニックは市役所へ、無線LAN機器(Firetide7020)、リチウムイオン蓄電システム、Webサーバ/サイネージサーバ(Nmstage)、J-ALERT受信機(EA-8001)、ネットワークレコーダー(DG-ND200)、デジタル同報系無線設備、移動系無線設備を、安波山へ太陽電池パネル(HIT233×4枚)、ネットワークカメラ(DG-SW396)、鉛電池蓄電システム、無線LAN機器を、魚市場には、太陽電池パネル、ソーラーサイネージ端末(PDC)、屋外用モニター(TH-47LFT30J)、カメラ、無線LAN機器を、市内病院には42型サイネージモニター(TH-42LG5J)、リチウムイオン蓄電システム、無線LAN機器などを納入し、これらをそれぞれ連携して制御できるシステムを構築した。

photo システム構成図(出典:パナソニックWebサイト)

効果と成果:市民の安全・安心、さらに災害・防災情報に関心を持ってもらえるような運用を

 防災情報は、震災時の避難先にもなった気仙沼市魚市場屋上駐車場や気仙沼市立病院ロビーに設置されたデジタルサイネージでも閲覧できる。地盤沈下による浸水を心配する沿岸部の方に向けた潮位情報のリアルタイム表示のほか、市民に役立つ天気予報、医療機関からのお知らせなども配信する。

photo 市内全域の一斉/エリアごとに情報を素早く伝達する同報系システムの制御卓(写真=左) 気仙沼市魚市場屋上駐車場に設置された防災情報伝達用デジタルサイネージ(写真=右)(出典:パナソニックWebサイト)

 「システムを整備したから終わりではなく、ここからがスタートだと考えています」と高橋氏。日頃の運用によって、どのように市民に浸透させていくかもポイントだ。新システムは、市民への防災への啓発の役割も果たしている。

 「ICTツールを持っていない方も、“あの場所へ行けば情報が得られる”という意識付けを中心に、もっと災害・防災情報に関心を持ってもらえるような運用を心がけていきたい」(気仙沼市の高橋氏)。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ