情報通信白書を“情報セキュリティ”の視点で読むと……萩原栄幸の情報セキュリティ相談室

半年ほど前に2014年版の「情報通信白書」が公開された。白書は情報セキュリティの基本となる様々な数字を提供してくれる貴重な資料だ。どういう数字がセキュリティのヒントになるのか。

» 2015年02月06日 07時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]

 「情報通信白書」は、総務省が毎年公開している資料だ。ここにはびっくりするほど様々な統計数字が掲載されている。この分野で情報セキュリティは、「縁の下の力持ち」ともいえるだろう。今回は情報セキュリティを考える上で参考になる数字を取り上げてみたい。

携帯電話の普及率(世界)

 携帯電話を世界でみると、発展途上国では固定電話回線が伸び悩む中、携帯電話の伸びが極めて高い。2000年の世界の普及率は12.1%だったが、2012年にはなんと89.5%という脅威の伸び率である。先進国と言われる日本、カナダ、米国、欧州を除くと、この伸び率はさらに驚愕の数字だ。携帯電話台数は2000年の2.6億台から2012年には50.5億台と、実に19.7倍にも達している。メーカーも昔はSamsung一辺倒だったが、今では中国メーカーが台頭し、Samsungの牙城を侵食しつつある。

 インターネットの普及率は、世界では35.4%だが、日本、カナダ、米国、欧州を除くと、人口では1.1億人から16.5億人と、この12年間で14.9倍も増えている。

SNSの普及率(日本)

 SNSの普及率は、ここ1年で劇的な変化を生じている。

LINE

 例えば20代の普及率は、2012年度は48.9%だったが、1年後の2013年度は80.3%と2倍近く増加している。他の世代は、数字としては20代よりは低いものの、30代で29.1%から65.4%に、10代で38.8%から70.5%に増えている。

Facebook

 欧米の一部やセレブから敬遠されつつあるものの、まだ日本では第2位の座にある。20代の普及率は57.0%と過半数を越えた。

Twitter

 LINEも、Facebookもこの1年に全世代でユーザーが増加しているが、Twitterだけは20代でのみ若干増加したものの、その他の全世代では若干数字が下がっている。日本における普及率は、この1年で低下してしまった。

mixi

 40代だけはほぼ横ばいで、他の世代では普及が大きく下がっている。特に10代の若者の普及率の低下が著しく、

26.6%から8.6%と、3分の1以下に落ち込んでいるのが印象的だ。若者がこれだけ急速に離れている状況は、何を意味するのか。

チャット系アプリ

 LINEなどの「チャット系アプリ」は、世界各地でメジャーな存在が異なっている。ラテンアメリカ(アルゼンチン、ブラジル、コロンビア、メキシコ)や、ドイツ、スペイン、イタリア、そして台湾で圧倒的な普及率(90%以上)を誇っているのが「WhatsApp」である。なんとスペインの普及率は99%だ。5億人が利用しているが、この数字はLINEと並ぶ。しかし、LINEは圧倒的な普及率を獲得している国はない。普及率が最も高いのは日本の71%である。

 ただし、LINEは無料通話を売りに急拡大している傾向にあり、今後の動向に注視したい。日本に続いて普及率が高いのは台湾の46%、スペインの44%である。スペインはWhatsAppの普及率が99%であるため、LINEは第2のツールとして利用されていると考えられる。

 韓国は「KakaoTalk」が普及率ナンバー1の95%となっているのが特徴だ。しかし、最近では韓国政府がこのアプリを監視しているというとウワサされ、敬遠している識者も少なくない。KakaoTalkの普及率が2番目に高いのは日本だが、9%である。その他には「WeChat」(中国の普及率が83%でトップ)、「FacebookMessenger」(イタリアの普及率33%がトップ)なども注目される。

パーソナルクラウドサービス

 「Evernote」「Dropbox」「GoogleDrive」「iCloud」「OneDrive」などがこのジャンルに該当する。世界でみると既に利用者数は合計10億人を超える状況だ。日本の利用率は1割程度であり、まだまだ普及していないが、(たぶん)読者の方々はかなり使いこなしているのではないだろうか。将来使ってみたいという人を含めると、2割程度になるが、日本以外の国はそれを上回っている。シンガポールでは7割近い状況だ。


 さて、こうした数字の羅列だけでは意味がないとお考えになる方もいるだろう。実はこれらの情報と様々な業種・業態の組織で蓄積されているビッグデータをうまく組み合わせると、極めて重要なことが見えてくるのだ。それが「お金になる情報」として活用されることもある。

 白書にはここで挙げた以外にも、500ページ弱にわたって膨大な情報を紹介している。ある意味で情報の宝庫といえるほどの内容だ。情報セキュリティに限らず、社会人としての教養を身に付けたり、新しいビジネスチャンスを見つけたり、今後の日本や世界がどう変化するのかを見極めたりなど、様々な参考資料として役に立つと思う。そろそろ新年度を見据える時期でもあり、ぜひ一度はこういう“真面目な資料”に目を通してはいかがだろうか。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。

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