在宅ワーカーたちのつながり、線から面へ YPPの連帯感を強めたチャットツールの力(2/2 ページ)

» 2015年02月20日 09時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
前のページへ 1|2       

2つのチャットツールを併用する理由

 現在YPPでは、CHITCHAT!のほかに「ChatWork」も利用している。そのきっかけは、CHITCHAT!の動作に不安があったことだった。

 「今ではそんなことはないのですが、以前は投稿がうまくいかないことがあったりして不安定だったのです。それでChatWorkに乗り換えようかと考えたのですが、それぞれにメリットとデメリットがあるので、用途によって使い分けています」

Photo 五味渕さんの「ChatWork」の画面

 ChatWorkは、グループでのファイル共有や、新しく参加したメンバーが過去のログを参照できるのが利点で、「業務連絡」に向いていると五味渕さん。また、メンバーの追加が簡単にできるので、顧客企業の担当者も含めたグループも活用している。

 質問掲示板や朝のあいさつ、完了報告のようなことにはCHITCHAT!を使っている。五味渕さんいわくCHITCHAT!の方がシンプルで初心者向きなのだそうだ。

 「CHITCHAT!は1つの投稿に対して“それに続く形”で返信が付くので、他の話題が混じらず分かりやすいのが利点です。一方、ChatWorkはデータを安全にやりとりでき、絵文字や投稿文の引用がしやすく、コミュニケーションのバリエーションが豊富。仕事用メインに作られただけあって十分な機能が備わっています。お互い個人アドレスを明かさないでチームを編成するために、従来はわざわざ仕事用アカウントをYPPで毎回発行していましたが、ChatWorkアカウントは任意で各自が作成できるため、メールアドレスを知らなくても、一緒に仕事ができる環境がすぐ作れるのは本当に便利です」

 ただ、いずれのチャットも24時間使えることから、「業務時間の切り分けをどうするか」という新たな問題が浮上した。顧客から直接業務連絡が投稿されると、休み中でも担当者が放っておけず、ついついやり取りを続けてしまうようになったのだ。

「いつでもつながれる」弊害への対処

 「みんな“お客さまの要望には応えたい”という気持ちがあるから、『今回だけは』というのが癖になり、働き過ぎてしまうんですね。強制的に休める状況を作らないと、働く仲間が心身を壊してはいけないので……」

 対策として、YPPでは当番制でチャットをチェックすることにした。Googleドライブのシフト表で今日の当番が分かるようにして、他の人は安心して休めるようにしたのだ。

 顧客に対しても、「その日に連絡をとれる人」と「休みの人」が誰なのかを伝えるほか、「タイトな納期の依頼が発生しないよう早めの予定共有をお願いする」「過去の経緯を踏まえて先回りして提案する」といった工夫をしているという。

ややこしい状況は電話でフォロー

 こうしたチャットツールの導入は、「孤独感が減った」「疑問が素早く解決できるようになった」と、メンバーからも好評だ。

 「特にChatWorkの絵文字は、コミュニケーションを円滑にするのに役だっています。ただ、チャットのやりとりだけを見て上手くいっているだろうと判断するのは危険なんです。実は“言いたいことを我慢している”ことがあって、それは文章を見ているとなんとなく分かります」

 対面で会ったことのない相手からのメッセージは、時にきつく感じてしまうこともある。自宅で一人で仕事をしている人は特に、何かミスをすると「他の人はうまくできているのに、自分だけ失敗した」ととらえてしまいがちで、「向いていないから辞めたい」と連絡がくることもあるという。

 「ややこしい状況になった時は電話をして、『誰だってミスはする。あと10回やれば慣れるわよ』と、明るい声でフォローします。わざわざ電話をくれたというサプライズと、自分だけがミスをしているわけではないという安心感が生まれて、また頑張ってくれる人が多いです」

 YPPでは初めて仕事をするメンバーに対しても、まずは事務所で(遠距離の場合はGoogleハングアウトを使って)顔の見えるコミュニケーションをするなど、離れていても“隣にいるような働きかた”ができるよう、さまざまな工夫を重ねている。

著者プロフィール:やつづか えり

Photo

 1999年一橋大学卒。2009年デジタルハリウッド大学院修了。コクヨおよびベネッセコーポレーションで11年間勤務の後、フリーランスに。企業に対する教育系Webサービスやアプリの企画・開発支援を行うと同時に、組織人の新しい働き方、暮らし方を紹介するウェブマガジン『My Desk and Team』を運営中。さまざまな組織人にインタビューをし、多様な働き方、暮らし方と、それを実現するためのノウハウを紹介している。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ