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» 2015年02月27日 15時00分 UPDATE

iPhoneを営業に持たせたら売上が大きく伸びた、その秘けつとは?

営業に持たせる会社貸与の携帯電話。それまでのBYODをやめてiPhoneを一斉導入したヴァンクールの場合、位置情報を駆使することで業績の改善につながったという。

[岡田大助,ITmedia]

 スマホやタブレット端末といったスマートデバイスが普及するにつれ、外回りが多い営業スタッフから「社外にいても仕事で使うメールの送受信を社内と同じようにやりたい」という声は高まっている。彼らが顧客からの連絡にできるだけすばやく対応したいと思うのは当たり前だろう。

 それは中堅・中小企業に対して情報通信機器の導入コンサルを行うヴァンクールの社員にとっても同じこと。約50人の社員のほとんどが営業やサポート業務で直行直帰が多いという同社は、iPhoneとモバイルデバイス管理ツール(MDM)を導入して以来、売り上げを大きく伸ばしているという。その成功の秘けつを聞いた。

BYODをやめてiPhoneの一括導入に切り替えたわけ

 同社がiPhoneを導入するまでの紆余曲折が面白い。さかのぼること数年、まだ従来型の携帯電話が一般的だったころは会社貸与という形でいわゆるガラケーを持たせていた。同社としては「1カ月当たりのコストは5000円程度」と見込んでいたのだが、中には1カ月の通話料金が3万円にもなるスタッフもいて利用金額にばらつきが生じた。

 そこで貸与からBYODに切り替え、一定額の補助金を出すことに。ところが時代はスマホに移り変わる。「会社のメールを社外からでも使いたい」という声も増えていったが、それよりも個人のスマホの中に顧客の情報が保存されてしまい管理が行き届かなくなるリスクのほうが大きかった。

 2014年7月、ついに同社はBYODをやめることとしiPhoneの会社導入を決めた。となると、紛失や情報漏えいのリスク対策としてMDMの導入は必須の流れだ。同社では1台あたり月額300円程度で運用できるLanScope Anを採用した(月額プランと年額プランとで料金体系は異なる)。

 いまでは会社のメールをiPhoneに転送し、社外にいても顧客とのやり取りを途切れることなく続けられるようになった。また、グループウエアでリアルタイムに予定を調整している。

目指したのは「禁止」よりも「抑制効果」

稲生旭 管理グループ 課長の稲生旭氏

 導入時の初期設定は、管理グループの稲生旭課長が1人で行った。稲生氏は情シスではなく、「それなりに時間はかかったが、専門知識がなくても無事に導入できた」と振り返る。

 ところで、会社から貸与されたスマホとはいえ、ほぼリアルタイムに居場所まで把握されることに対するスタッフ側の心理的な負荷はなかったのだろうか?

 ヴァンクールでは、いたずらに「禁止」することよりも管理の内容と範囲をスタッフと共有することで「抑止力」となることを狙った。

 まず手掛けたのは利用規定の策定だ。たたき台となるテンプレートは開発元のエムオーテックスから提供を受けたが、「この規定の文言はキツイな」と感じる部分を柔らかい言葉に変えていった。

 「もともと厳しくルールを運用するつもりはありませんでした。例えば、アプリのインストールについても当初はNGリストを作ろうと思ったのですが、実際には『どんなアプリをインストールしたのか』は管理側で把握できます。なので、業務上必要なアプリであればインストールOKというルールにしました」

 とはいえ、当初はゲームアプリなどをインストールする社員もいたそうだ。その場合は、管理側が気付いたタイミングで指摘する。このような運用を続けているうちに業務外のアプリをインストールするスタッフはいなくなった。

位置情報の徹底活用で勤怠管理を確実に

 業務の都合上、直行直帰が多いだけでなく場合によっては休日出勤もあり得る同社。だが、勤怠管理という点ではスタッフの自己申告への依存度が高く、ITを使ったエビデンスの確保が求められていた。そこで勤務状況を管理するために、業務時間である午前9時から午後6時まで30分単位でスマホの移動履歴を取得し、グループウェア上の予定と照らし合わせている。

位置情報 位置情報の把握(出典:エムオーテックス)

 「位置情報データ」の活用は思わぬ副産物も生み出した。同社の業務には顧客のシステム保守サポートもある。緊急対応が発生した場合、位置情報を使ってもっとも近くにいるスタッフを急行させられるようになった。

 「そのお客さんを担当するサポートスタッフでなくても、まずは最寄りの社員を現場に行かせて連絡を取ります。これにより、その後に取るべき対応が明確になり、結果として顧客満足度も高まります」という。

売り上げ大幅増の秘密は?

 もう1つの副産物が“スキマ時間”の有効活用だ。客先訪問が予定よりも早めに終わることはよくあること。だが、位置情報を取得することで「あ、お客さんのところから予定よりも30分早く出てきたな」ということが可視化できるようになった。

 「当社は営業が中心の会社。つまり、訪問件数を増やせば増やした分だけスタッフの売り上げ増につながります。たとえ1日に0.5時間のスキマ時間であっても1カ月にならしてみるとそれなりの時間です。そこで本部側でアポ取りをしてリアルタイムにグループウェアの訪問予定を更新しています。『アポ、入れておいたよ』と、ね」

 その結果、同社の売り上げが伸びただけでなく、予算と実績の数字がぶれなくなったそうだ。「誰が、どこからどこに回って、1日に何件訪問したのか」というデータが正確に取れるようになったため、今では各自の行動内容を一覧化して定期的に全スタッフにメールしている。

 「特定の誰かにダメ出しするのではなく、誰がどうやって獲得見込みを増やしているのかを可視化することが重要です。すると全体の成績も上がるのです。例えば、それまで『半年で見込み6件』で満足していたスタッフがいましたが、彼は導入後の4カ月で20件まで見込みを伸ばしています」

 今後、社員数の倍増が見込まれている同社。さらなる位置情報データの活用方法を模索するという。

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