「ほめる」も意欲に 尼崎市のITシステム「ススムくん」がもたらすこと市民サービスの向上へつなぐIT(1/2 ページ)

人事評価は、年一回の手書き書類で──。尼崎市が、このような体制だった職員の人事評価方法を大きく刷新。「ススムくん」と呼ぶ公務員向けWeb型人事評価システムを導入した。

» 2015年02月26日 13時50分 公開
[ふじいりょう,ITmedia]

 兵庫県・尼崎市で「ススムくん」と呼ぶITシステムが稼働している。

 尼崎市(稲村和美市長)は兵庫県の南東部に位置し、人口約45万人を擁する中核市指定の自治体。2013年3月には、経済の活性化とCO2削減を両立する産業都市の実現に向けた提案が評価され、国から「環境モデル都市」にも選定された。

photo 尼崎市のWebサイト

 2016年に市制100周年を迎える尼崎市では、職員人材の育成に重点を置いた人事評価の取り組みに力を入れている。2013年度より、3100人余りの市職員に対して年1度行っていた人事評価方法を大きく刷新。年度初めの4〜5月に上司と1度目の面談を行い、目標を設定。年度途中に2度目の面談で目標の進ちょくを確認し、必要があれば修正。そして年度末の3度目の面談で最終評価するという流れに改めた。狙いの1つは、上司と部下の間でコミュニケーションをより積極的にとれるようにすること。名称も、評価面談から「人材育成面談」に改めた。

 ただ、新たな制度もこれまでの体制や意識のままでは困難だ。端的にも、単に職員の業務量が増えるだけならモチベーションの維持は難しい。面談を効率的に進める工夫も必要。そして、人事評価の処遇において仮に低い評価となった部下職員にも納得できるよう説明を尽くす必要もある。総じて、その公正さをどう取り持つかが課題になった。

経緯と課題:年1度の手書きでの評価面談から、「人材育成面談」へ変革

 これまでの人事評価は、評価者が年1度手書きで評価用紙に記入し、提出する流れで行っていた。人事担当は記入された評価用紙を集め、定量的な評価点となる5段階評価の項目をデータ化し、管理、保管する。データの入力の実作業は外注していた。一方、具体的な評価内容やコメントといった定性的な評価は、漏えいが許されないパーソナルな重要情報になることもあり、データ化の対象からは除外。異動時など、人事担当が情報を参照する際に該当する紙資料そのものを取り出して確認する方法としていた。

 「評価は毎年10月頃に行っていました。ただ、記入した内容はそのときの評価のために使われ、評価内容は翌年以降に引き継がれていませんでした。また、そもそも評価用紙の提出状況をチェックするだけでもかなりの手間がかかっていました」(尼崎市総務局人事管理部人事課係長の山下秀樹氏/出典:IBMのWebサイト)

 「人材育成面談」の体をなし、さらにその先を見据えた結果を出すには。これまでの紙ベースのアナログな手段だけではもう難しい。尼崎市は2012年5月、新たな人事評価システムの導入を決めた。

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