開発者が語るスマートウオッチアプリ開発の悩みComputer Weekly

スマートウオッチ向けアプリを開発中のザムフィレスク氏。その実体験を通して得たスマートウオッチ向けアプリ開発の課題、市場の展望などを聞いた。

» 2015年03月04日 10時00分 公開
[Clare McDonald,ITmedia]
Computer Weekly

 英Hailoのクリスチャン・ザムフィレスク氏は同社のタクシー配車アプリ「Hailo」の開発者の1人だ。そして彼は今、コンシューマー向けテクノロジー革命に巻き込まれようとしている。

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 IoT(モノのインターネット)とウェアラブル市場が成長を続ける中、彼のような開発者はこの技術に乗り遅れないよう素早い行動が求められている。スマートフォンは今やビジネステクノロジーとなり、新興成長市場製品になろうとしている。そんな中、コンシューマーに人気の米Appleが2014年末に「Apple Watch」を発表し、ウェアラブル市場に名乗りを上げた。

 スマートフォン向けアプリを開発している企業にとって、この発表が意味するところは何だろう。こうした企業は、全ての顧客を満足させるためにあらゆるプラットフォームに向けたアプリ開発に取り組んでいるだろうか。

 小型デバイス向けアプリの開発には特別な課題が伴うとザムフィレスク氏は語る。例えばスマートウオッチ向けアプリ開発における大きな課題の1つは、小型デバイスにつきもののバッテリー寿命の短さと処理能力の低さだ。

 Hailoのスマートウオッチアプリは、スマートウオッチの典型的なモデルに倣い、スマートフォンアプリに接続して情報を送受信するため、処理の大半をスマートフォンが受け持つ。

 また、スマートウオッチは依然として最先端テクノロジーであるため、アプリ設計の全てが新しく魅力的で、先に行動を起こした方が有利になる。

 「スマートウオッチアプリの開発は、他のフォームファクター用アプリの開発とは大きく異なる。設計パターンがほとんど確立されていないため、優れた製品をリリースすれば競合他社よりも優位に立てる」とザムフィレスク氏は話す。

 「一般的に、設計はまず市場のニーズを調べてから始めるものだ。だが、スマートウオッチにはこれが当てはまらないところがある。スマートフォンやタブレットのモバイル版の延長線上にあるのがスマートウオッチだからだ」

 例えば、スマートウオッチ用アプリは小さい画面でも使いやすくする工夫が必要だ。そこでHailoの開発者は、カスタマーエクスペリエンスを向上するユースケースの調査を開始した。

 「Hailoで実装した最初の試作品は改善の余地があったので、ユーザビリティを向上させるために何度か試作を繰り返した」と同氏は説明する。

 「また、フォームファクターが小さいことを受け、当初構想していた機能を削減した。小さいことが開発の将来の方向性を定めた」

さまざまなプラットフォームへの対応

 市場には多種多様なスマートフォンがあふれていて、使用可能なアプリはOSや公開先のアプリストアによって異なる。

 Hailoの開発者は特定のデバイスにこだわらないと決め、種類の異なる複数のプラットフォーム向けにアプリを開発したが、それほど多くの問題には遭遇しなかった。

 ザムフィレスク氏は次のように話す。「米GoogleのAndroidを搭載したスマートウオッチは四角や丸などさまざまな形状があり、複数のメーカーからリリースされている。ほとんどは同社が開発したAndroid Wearを採用しているが、韓国Samsungも2014年秋にGear Sデバイスの他、Samsungに所有権が帰属するSDKを発表して意欲的な姿勢を見せている。Android Wearについては、全てのメーカーをサポートするつもりだ」

 だが同氏が指摘するように、プラットフォームやOSには互換性がないので、開発したアプリが全てのデバイスで機能することはあり得ない。その結果、スマートウオッチのメーカーごとにユーザーエクスペリエンスが少しずつ異なることになる。

 「社内のテストでは、どのメーカーでもそれほど大きな問題は発生しなかった。少なくとも、Androidスマートフォン向けの開発で遭遇する問題よりも大きくはなかった。ただ、まだ発表されただけで発売されていない製品がほとんどなので、いつものデバイス断片化(フラグメンテーション)は避けられないだろう」

 アプリはスマートフォンとペアリングされるため、スマートウオッチのフォームファクターがばらばらでも安全な通信を確保することは問題にならない。

 「通信はスマートフォンとスマートウオッチの間で保護されるため、何も問題はなかった」とザムフィレスク氏は言う。

 「セキュリティ上の理由で、スマートウオッチは一度に1つのスマートフォンとしかペアリングできない。別のスマートフォンとペアリングするためには、工場出荷時の状態に戻さなくてはならない。従って意図しないデバイスと誤ってペアリングされる可能性は大幅に少なくなり、セキュリティが向上する」

AppleやGoogleがスマートウオッチ市場を盛り上げるのはいつか

 スマートウオッチを購入するコンシューマーは基本的に、優れたユーザーエクスペリエンスと、使用しているスマートフォンアプリのシンプルで使いやすい形を求めてのことだとザムフィレスク氏は指摘する。だが、企業がウェアラブル市場の急速な進化に追い着かない限り、コンシューマーがスマートウオッチのこれらの特長からメリットを得ることは決してない。

 「スマートウオッチを購入するコンシューマーの目的はアプリだ。スマートウオッチは単に正確な時間を表示するだけではなく、はるかに高度だ」と同氏は話す。

 「今後の市場シェアのゆくえと、スマートウオッチに対応する必要があるのはどのようなアプリなのかということが大きな問題になる」

 では、市場で成功を収めるのはどの企業か。それを判断するのは時期尚早だと同氏は語る。だが、Appleが設計に十分な自信を持ってからリリースに踏み切ったのは良い兆しだという。

 同氏はこう説明する。「スマートウオッチを絡めた競争が始まってから1年以上が経過するが、Appleは失敗から学ぶ十分な時間を得られたに違いない。GoogleはAndroid Wearプラットフォームを2014年3月にリリースしたばかりで、結論を出すにはまだ早いが、まずは非常に良好な兆しが見られる。幾つかのメーカーが非常に優れた製品を既にリリースまたは発表している」

 Hailoのスマートウオッチ版アプリはまだリリースされていない。ザムフィレスク氏は次のように話す。「Hailoのスマートウオッチ版はまだリリースしない。100%の確信を得てからからリリースする予定だ」

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