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» 2015年03月24日 10時00分 UPDATE

ハードウェアを愛するエバンジェリストが叫ぶ、サーバの“これから”:マザーボードにまで美しさを求め、ウン十億円のデモルームを作ってしまった男

仮想化やクラウドが注目され、サーバ自体が脚光を浴びることは少なくなった……のだろうか。「否!」と声高に叫ぶ熱い男がいる。

[PR/ITmedia]

“おたく心”を秘めた、サーバの伝道師

photo ミッションクリティカルサーバーテクノロジーエバンジェリストの山中伸吾氏

 2001年、コンパックコンピュータ(現日本ヒューレット・パッカード 以下、日本HP)へ入社。以来、一貫してサーバ畑を歩み、寸劇などを交えた独特の製品紹介で、日本HPを国内ブレードシェアのトップにまで押し上げた立役者がいる。

 サーバエバンジェリスト 山中伸吾氏。

 ミッションクリティカル領域のユーザーであれば名を知らぬ者はいない、と自称するが、それは定かではない。ただ、日本HPの本社移転に併せて開設した特別ショールーム「エグゼクティブ・ブリーフィング・センター(EBC)」をご存じの人はいるかもしれない。デモ用ルーム12部屋、ワークショップルーム1部屋、ラック22本を収納できるサーバルームで構成され、開設費用はなんとウン十億円。通称「山中部屋」と呼ばれているのは、知る人ぞ知る事実である。

 自らを称して、ハードウェアおたく。「サーバを愛している」という。

 ゆえに、いざ山中部屋でのデモンストレーションでは、稼働展示する筐体からブレードを引き抜き、目の前で分解して中身を見せるといった荒業を率先してこなす。1枚あたり数千万円もの高性能ブレードの実物を目にでき、また、山中氏から何らかのヒントを得たいとの期待から、ショールームを訪れる顧客は連日引きも切らない。

 「HPのサーバには、愛が宿っています。だから中身を実際に見ていただくのです」(山中氏)


photo 「山中部屋」と呼ばれている、日本HPのエグゼクティブ・ブリーフィング・センターの1室。「サーバの中身まで説明でき、お客様にもじっくり見てもらえるよう、部屋の配置や機能を工夫しました」

 山中氏は、小学校5年生で半田ごてをねだり、東京・秋葉原に通いながら電子工作にいそしんだ。機械好きはまさに性分と、フンッと鼻息荒く自身でうなずく。前後して任天堂の「ファミリーベーシック」にも出会う。ゲームで遊ぶだけでなく、自身でプログラミングできることが山中少年の心をつかみ、好きなことに「プログラミング」が加わった。成長にともない「MSX」「PC-9800シリーズ」へステップアップしていった。

 そんな少年が青年になり、大学で電気工学の道を選んだのは必然のこと。とある経験が彼を「サーバ愛」に目覚めさせた。コンピュータによる膨大な計算処理が必要な研究を実施していたときのことである。

 「研究室には当時、DECのAlphaワークステーションがありました。ただし、ワークステーションは数に限りがあります。仕方なく、空いていた普通のWindows PCで計算することもありましたが、作業途中でダウンする目に何度も遭いました。PCでは計算量が多すぎて安定して動作せず、途中で止まってしまうのです。しかし、Alphaワークステーションを使ったならば、長ければ1週間を要する計算処理の結果もきちんと出る。この差は何だ。理論上はPCでも計算できるはずなのに、デジタルの世界でそんなアナログなことが起こるのか? そんな驚きから、そんなハードウェアを作ることができるメーカーを調べた。それが今の仕事に結び付いています」

性能は細部に宿る、妥協を許さないHP製品の開発アプローチ

 山中氏のサーバ愛あふれるデモルームでの説明は、自然に身に付けてきた電子工作とコンピュータ自体、さらに周辺分野をリスペクトした知識に支えられ、「他社製品と比較して、特に作り込みの面で極めて優れています」と言い切るほど自信に満ちている。その一端は、究極を追求するHPのモノづくりの姿勢に見て取れる。

 例えば、新型ブレードシャーシと同時に2006年に開発した冷却ファン。開発にあたっては、シャーシと同じく少なくとも10年以上の継続利用を前提に、将来的な排熱量の増加にも対応できるよう“毎分2万回転”を要求した。

photophoto 新型ブレードシャーシと同時に2006年に開発した毎分2万回転の冷却ファン

 10Uラックに10個収まるほどの小径ファンで毎分2万回転。その回転数は最速の高性能HDDさえ、(比較するものではないが)F1エンジンの回転数さえも超える。当時、要求を満たすモーターは世に存在しなかった。そうした中、HPは妥協をよしとせず共同開発できる世界中のメーカーを訪ね、2年かけて開発に成功する。共同開発メーカー名はパテントなど大人の事情で社外秘だが、自作PCユーザーであれば聞いたことがあると思うメーカーだ。羽の素材はマグネシウム合金。回転数が早過ぎて、プラスチックの羽だと遠心力で伸びてしまい、変形や破損が避けられなかったがゆえである。

 「プラスチックの羽では変形しちゃうんですよ。1ついくらかって? 高いですよ。あはは」

 当時としては「明らかにオーバースペック」(山中氏)。だが、先を見据えたモノづくりによって、2014年12月に日本HPが発表したミッションクリティカルサーバ「Superdome」シリーズの新製品「HP Integrity Superdome X」でも、この冷却ファンはいまだ健在だ。

photo 山中部屋の奥にあるサーバルームからブレードを抜いていきなり分解。山中氏が手にしているのがいろいろギミックの詰まった導風板だ。機能の詳細は……ぜひご自身で山中部屋へ訪れ説明を受けてみてはいかがだろう

 そんなこだわりがブレードサーバ内のあらゆる部品に及ぶ。シャーシの中ぶた(導風板)も、構造を継続的に見直しながら基板と部品の配列に沿って排熱効果を最大限に高める。CPUとともに発熱量が多いメモリモジュールへ効率的に送風するギミックも組み込んでいる。

 また、安定性の低下要因となる高周波の発生を抑えるべく、ジャンパ線をマザーボードから極力排し、部品のワンチップ化による回路設計なども推進してきた。「美しい……」。見るだけで惚れさせる。ここが山中マジックの真骨頂だ。「マザーボードの“設計美”から、これなら自社の業務を任せられると判断されるお客様はとても多い。みなさん、根底はハードウェア好きなのですね」

 ともあれ、これらを実現できたのも、シャーシの中蓋のつまみ1つに至るまで専任技術者を置き、多様な技術とノウハウを職人達が培い、継承してきたからこそという。

ハードウェアならではの、設計図に表れない問題点とは

 なぜ、山中氏はハードウェアが重要と説くのか。サーバはコモディティ化が叫ばれて久しく、ハードウェア自体が注目される機会は減ってきている。エンジニアや情シスなどIT担当者は“アプリケーション担当”と“インフラ担当”に大別されるが、特に前者でその傾向が顕著であり、JavaやDBが稼働さえすれば、サーバの種類を問わないケースも多い。

photo ジャンパ線を極力廃したマザーボードと、ズラリと並ぶメモリモジュール+ヒートシンク。じっくり見て「美しい」と感じたなら、あなたは素質がある

 だが、特にミッションクリティカルシステムでは、そうした姿勢は大きなリスクでもある。

 「仮想化やクラウドなどの技術の登場によって、近年は物理サーバより上のレイヤーにばかり技術者の目が向いています。ただし、アプリケーションは設計が正しければ確実に稼働するのに対し、ハードウェアは論理的な誤りがなくても、熱や電力、高周波など、設計図に表れない問題で動かないことが往々にしてあるのです。特にミッションクリティカルシステムを扱う技術者なら、それらへの対策に対して、もっと関心を持つべきと、私は訴えたいのです」

 一方で、企業がサーバに求める要件は時代に応じて変わり続ける。今後、サーバはどのような進化の道を辿るのか。その点について、山中氏が鍵となる技術として挙げるのが、「スケール・アップ」と「インメモリ」である。

 理由は明快だ。現状、システムの処理性能と可用性を高める手法として、複数のサーバで処理を分散させる“スケール・アウト”が一般的に利用されている。ただ、スケール・アウトは、スケーラビリティに大きく欠けることが最大の問題である。実機を用いた調査でも、サーバ1台から2台の構成に変更したにも関わらず、処理能力が2割ほどしか向上しないことが往々にして発生している。クラウドやビッグデータ時代の到来を背景に、データが爆発的に増加しつつある中にあって、この効率ではデータを処理しきれなくなることは時間の問題である。

 「特にデータベースシステムはデータの一貫性を保つために、スケール・アウトで台数を増やしていっても、いわゆる『大福帳』は1個だけなのです。ですので、スケールアウト環境では性能を伸ばすことがとても苦手です。また、データをオンラインで更新するシステム、OLTP(Online Transaction Processing:オンライントランザクション処理)と、データを分析するシステムOLAP(Online Analytical Processing:オンライン分析処理)は、これまで多くの企業は別システムとして管理してきました。更新システム上で分析システムを動かしてしまうとパフォーマンスが追いつかなかったからです。しかし、2つのシステムが分かれていると、リアルタイムにデータを分析するには、更新システムからデータを頻繁にコピーしなければならず、いつまでたってもリアルタイムなデータ分析ができないのです。携帯電話の料金システムもいい例ですよ。今月いくら使ったかな、と調べても、今だと昨日までの電話料金しかわからなかったりしますよね」

 そこでの打開策が、単体で処理能力を高める「スケール・アップ」、さらにデータへのアクセス性能を飛躍的に高める「インメモリデータベース」との組み合わせというわけだ。具体的には、パフォーマンスが桁違いに向上するため、OLTPとOLAPを統合することが可能になり、リアルタイムでの膨大なデータ分析が可能となる。

 「ある金融機関では、日々変化する多様な金利計算の複雑さから、自行の“今”の利益の算出に数週間も要していると言います。まったく“今”じゃありません。またある大手量販店では、在庫管理DBの更新頻度が(量が多すぎて)数十分単位が最速とお困りです。10分の間に、商品は何個売れるでしょう。そう考えると課題とする気持ちがよく分かります。新技術によって、これらの抜本的な解決が見込まれ、競争力強化のための新たな施策につなげることが現実のものとなるのです」

photo 説明のための効果的なツールが山中部屋にはそろっている。「この回転台座機能付きの展示台も特注です」

「ハードウェアが重要」そう説く理由

photo 「仮想化やクラウドにおいて、サーバは黒子の存在かもしれません。しかし、その存在を抜きにしてシステムの実現は不可能です。“ただ止まらなければいい”システムを構築、維持していれば済む時代は終わりました。高信頼システムの勘どころを押さえつつ効果的なコスト削減を実現し、新しいテクノロジーをを取り入れる。そんな一見無謀と思えるご要望の最適解を伝えていきたいですね」

 同じIT産業でありながら、ハードウェアはソフトウェアと比べて、利益を生みにくい構造にあるとされる。生産において工場や人の確保が必須であり、そのための初期投資や固定費をはるかに多く必要とするためだ。

 だが、別の一面もある。ハードウェアでひと山当てれば、そのノウハウの活用期間はソフトウェアよりもはるかに長いものとなる。経営の安定度はそれだけ高く、長期的な観点からステークホルダー、中でも利益をもたらす顧客視点での、よりよい判断を下せる土壌がある。それを裏付けるように、米HPでCEOを務めるメグ・ホイットマン氏はHPのインフラストラクチャーこそがコアコンピタンス(競合他社を圧倒的に上回る強み)であると明言しており、The Machineなどへの投資も積極的に行っている。

 仕事を通じて、サーバ愛/ハードウェア愛を共有できる顧客と数多く出会ってきた。それも当然だ。システム、とりわけミッションクリティカル分野では、システムの停止が絶対に許されない。そうした要求に応える人材には、アプリケーションの稼働基盤となるハードウェアにも目を配れる人が必然的に選抜される。

 「山中部屋」でのデモンストレーションで基板を目にし、その美しさにしばらく見入る顧客は、想像以上に多い。彼らとそうした時間を共有することが、山中氏にとって喜びを噛みしめる貴重な時間であり、実際、このデモが選定の決め手になることも多い。ただし、すでに述べたようにハードウェアへの関心が低くなっている現状もある。今のITスタッフには、よい意味でハードウェアを愛でられる、つまり根底はハードウェアが重要と考えられる人材が育っているのか。山中氏の叫びは、こんなITスタッフの人材育成における新たな課題も示唆している。

 今後のIT産業のあるべき姿とは何か。ハードウェアを愛する山中氏ならではのコメントが返ってきた。

 「仕事を通じ、私と同等、いやそれ以上のサーバ好き/ハードウェアを愛する技術者と数多く出会いました。彼らに改めて言いたいのは、もっと元気を出してほしいということ。仮想化やクラウドにおいて、確かにサーバは黒子の存在かもしれません。しかし、その存在を抜きにシステムの実現は不可能です。そうした気概を持ち、積極的に意見を出すことで、システムのさらなる発展が促されます。そうなれば、我々にとって一番の楽しみでもある、もっとワクワクさせる新サーバの登場が期待できるのですから」

 山中部屋こと「エグゼクティブ・ブリーフィング・センター(EBC)」は、日本HP本社の1階にある。今日もおそらく「この基板を見て下さいよ!」と熱弁している山中氏がいるはずだ。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2015年4月30日

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