機器ごとに特徴もさまざま 書類をPDFに変換できるデバイスまとめ職場で役立つデジタル化レシピ

「紙の書類をPDFデータに変換する」とひとくちに言っても、実際にはさまざな方法が存在している。今回は、書類をPDFデータに変換するスキャナなどのデバイスについて、それぞれの特徴をまとめてみた。

» 2015年04月09日 09時30分 公開
[山口真弘ITmedia]

この連載は

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 保管コストの削減はもとより、劣化の防止や検索性の向上、再利用の促進などさまざまな利点が認められ、徐々に広がりつつある紙の文書や帳票のデジタルデータ化ですが、用途や目的を考慮せずにむやみにスキャンすることでかえって効率が悪くなったり、作業に手戻りを発生させてしまうことも少なくありません。

 また商法や税法で保管が義務付けられている文書の場合、電子帳簿保存法やe-文書法などのルールに則った手順を踏む必要があり、自分の判断でやみくもにデータ化するわけにいかないといった事情もあります。

 本連載ではこうした現在の状況を踏まえつつ、文書のデータ化にまつわる情報、さらにはフォーマットであるPDFや変換機器であるスキャナ、保存先となるストレージに至るまで、業務現場と情報システム部門に役立つ知識やTips、活用術を幅広く紹介していきます(著者より)


 「紙の書類をPDFデータに変換する」といっても、その方法はさまざま。大量の書類を変換することを前提にスピードが第一という場合もあれば、厚みのある原稿をなるべく痛めずにスキャンしたい場合もあるだろう。あるいは、外出先でカジュアルに取り込みたいという、手軽さがなによりも優先される場合もあるはずだ。

 今回は、書類をPDFデータに変換するスキャナなどのデバイスについて、それぞれの特徴をまとめてみた。それぞれの特徴を知っておけば、機器選定の際に役に立つのはもちろんのこと、実際に作業をする際も複数の方法をケースバイケースで使い分けたりと、効率化につなげられることだろう。参考にしてほしい。

ドキュメントスキャナ

項目 評価
美しさ ★★★★☆
手軽さ ★★★★☆
速 度 ★★★★★
サイズ ★★★☆☆

 近年、その存在感を増しているのが、数十枚の書類をまとめてセットし、両面を同時に読み取ることができるドキュメントスキャナだ。原稿を1枚ずつセットする手間もなく、また表裏をひっくり返す必要もないことから、速度もスピーディだ。後述のフラットベッドほどではないが、原稿と読み取りセンサの距離が近いことから解像度も高く、ビジネスユースでは十分なクオリティが得られる。モバイルに特化したスティックタイプの製品もある。

 ネックとなるのは、ADF(オートシードフィーダ)を通過させるという構造上、本やカタログのように冊子のままでは読み取れないこと。同じ理由で厚みのある原稿のスキャンにも向かず、製品によっては薄い紙が破損しやすい場合もある。またフラットベッド方式に比べると、縦方向にわずかに伸びたり縮んだりする場合がある。

 設置スペースはフラットベッドよりは狭くて済むが、多くの枚数を同時セットできる上位モデルでは、相応の体積になりがちだ。

Photo 製品例:PFU ScanSnap iX500

フラットベッドスキャナ

項目 評価
美しさ ★★★★★
手軽さ ★★★☆☆
速 度 ★★★☆☆
サイズ ★★☆☆☆

 コピー機と同様にガラス面の上にうつ伏せでセットし、センサー自体が移動して読み取りを行うのが、フラットベッドスキャナだ。ドキュメントスキャナのように給紙の時点で原稿が斜行したり詰まったりする心配もなく、また縦横比が狂うこともまずない。解像度もほかの方法に比べて高く設定できる。厚みのある原稿であっても、問題なく読み取れるのも利点だ。

 ネックとなるのは、一枚ずつ、および片面ずつの読み取りとなるため、原稿を取り替えるのにどうしても手間がかかること。また最近ではかなり解消されてきたとはいえ、センサーがCISの製品は、CCDの製品に比べ、凹凸のある原稿や冊子のノドの部分がぼやけがちになるという欠点もある。ほかの方法に比べて機器の占有スペースが大きいのもネックだ。

 このほか、ビジネスユースではあまり問題にならないが、うつ伏せにすることでガラス面を汚してしまったり、剥離するような原稿のスキャンには向かない。

Photo 製品例:エプソンGT-X980

オーバーヘッドスキャナ

項目 評価
美しさ ★★★☆☆
手軽さ ★★★★☆
速 度 ★★★☆☆
サイズ ★★★★☆

 机の上に置いた原稿の上から覆いかぶさるようにして撮影するオーバーヘッドタイプのスキャナは、ここ何年かで存在感を増している。このタイプはセンサーやガラス面が原稿と接触しないので、汚れやすい原稿や厚みのある原稿のスキャンにも向いており、本をうつ伏せにするフラットベッドスキャナと異なり、ページをめくるのも容易だ。

 また、原稿サイズに合わせて装置そのもののサイズを大きくする必要がないため、A3など大きいサイズの原稿の読み取りにも向いている(もちろんスキャン時には原稿サイズに合わせたスペースを空ける必要がある)。

 ネックとなるのは、センサーから原稿面までの距離があることから解像度には限界があり、ドキュメントスキャナやフラットベッドに比べ、OCRの認識率が下がりがちであること。フラットベッドスキャナほどではないとはいえ、原稿は1枚ずつ手で交換する必要があるので、作業中はつきっきりにならざるを得ないのもネックの1つだ。

 また、装置のフットプリントが小さくて済むとはいえ、背の高さがそこそこあるため、片付けるのがやや面倒という点もチェックしておきたい。

Photo 製品例:PFU ScanSnap SV600

複合機のオートシートフィーダ

項目 評価
美しさ ★★★☆☆
手軽さ ★★★★★
速 度 ★★★☆☆
サイズ ★★★★★

 複合機のADF(オートシートフィーダ)を利用するのも賢い方法だ。最近では読み取ったデータを指定のネットワークフォルダに保存する以外に、Dropboxなどのクラウドサービスに直接アップロードしてくれる製品もある。同時セットが可能な枚数も、製品によっては50枚程度と多く、ドキュメントスキャナの専用機と比較しても遜色ない。またADFを使わずにフラットベッドとして読み取ることも可能なので、原稿によって使い分けられるという利点もある。オフィスにすでに導入済みであれば、真っ先に試してみたい方法と言えるだろう。

 注意したいのは、製品によっては両面同時の読み取りに対応しない場合があること。廉価な複合機のADFはこの傾向が強いので気をつけたい。これ以外の特徴はドキュメントスキャナと同様で、厚みのある原稿や綴じた冊子などのスキャンには向かないが、この場合はフラットベッドとして使うことができるので、つぶしが利く方法とも言える。ただし、専用のドキュメントスキャナに比べると、速度はお世辞にも速いとはいえないので、効率を重視するのであれば専用機を導入するのが望ましいだろう。

Photo 製品例:キヤノンMF8570Cdw

スマホやタブレットのカメラ機能

項目 評価
美しさ ★★☆☆☆
手軽さ ★★★★★
速 度 ★★★☆☆
サイズ ★★★★★

 その手軽さから最近注目を集めているのが、スマホやタブレットのカメラ機能。内蔵カメラで原稿を撮影し、アプリ側でPDFに変換して保存する方法だ。斜め方向から撮影した場合でも、台形補正によって最低限の見栄えを整えられるほか、多くのアプリではコントラストの調整や色調の補正なども行える。手持ちのスマホだけで完結するのが大きな利点で、すでにスマホを所有していれば導入コストが発生しないのもメリットだ。

 ネックなのは、その仕組みゆえにどうしても解像度が低くなりがちなこと。名刺やレシートのサイズであればまだしも、A4サイズのビジネス文書ともなると細かい文字はつぶれがちで、OCRによるテキスト化を前提にするには少々苦しい。また縦横比が狂いやすいほか、書類が折れたり曲がったりした状態のまま取り込まれてしまいがちなので、再現性という点では今一歩だ。また、撮影は1枚ずつにならざるを得ないので手間もかかる。ビジネスユースでは、板書を一時的にメモするなど、カジュアルな用途に限定されるだろう。

Photo 製品例:Apple iPhone 6

その他の変わり種スキャナ

 その他の製品では、原稿の上に当ててゆっくりなぞるハンディタイプの製品が有名だ。ガラス面の下をセンサーが移動するフラットベッドと違い、本体そのものを動かすことから体積がコンパクトで持ち歩きやすい。ただし、速度が均一にならずに原稿がゆがんでしまったり、あるいは縦横の比率がおかしくなったりと、原稿を忠実に再現するという点では劣る。

Photo 製品例:サンワサプライ PSC-3U

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