企業が気になる基幹系システムのクラウド化、ハイブリッドモデルをこう使え!疑問にも答えます!

クラウドの利用機運が高まる中、安定性やセキュリティなどを理由にクラウド化が困難なシステムは少なくない。その解決策として注目されるのがハイブリッドクラウドだ。ITmedia エンタープライズ主催の勉強会ではSDNを生かしたクラウドサービスを提供するNTTコミュニケーションズと、仮想化からクラウドへの移行を推進するVMwareが、ハイブリッドクラウドの導入・構築を成功につなげるための秘訣を紹介した。

» 2015年04月13日 10時00分 公開
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 ビジネス展開を容易にする柔軟性や災害などに強い事業継続性が求められるITシステムを実現するために、企業ではクラウドの利用が本格化しつつある。だが、様々な企業のITシステムの中でも基幹系システムは、構成の複雑化やサイロ化といった問題を抱え、クラウド化が難しいとされてきた。そこで注目したいのが、ハイブリッドクラウドの活用である。

 ITmedia エンタープライズ編集部主催の勉強会「インフラ最適化も事業継続の強化も可能にするハイブリッドクラウド導入塾」では通信事業者としてクラウドサービスを提供するNTTコミュニケーションズと、先進的な仮想技術の普及に取り組むヴイエムウェアから、ハイブリッドクラウドの最新動向やユーザー企業が導入・構築を成功させるためのポイント、そして将来の方向性が紹介された。

円滑な連携を可能にするポイントは?

NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 販売推進部門 担当課長 大住泰三氏

 NTTコミュニケーションズの大住泰三氏は、国内企業におけるクラウド利用の現状とハイブリッドクラウドを活用する上でのポイントを解説した。

 まずIDC Japanの調査によると、国内のプライベートクラウド市場は2017年まで年率34.5%の成長を続け、2017年に1.4兆円規模に達するという。ところが、MM総研の調査ではプライベートクラウドを基幹系システムで利用する企業は8〜9%にとどまる。これらの結果から大住氏は、多くの企業がクラウド利用を志向しているものの、オンプレミス環境から脱却し切れない状況にあると指摘する。

 基幹系システムのクラウド化では業務アプリケーションを確実に安定稼働させるための「高い性能」「低遅延のネットワーク」「オンプレミスとの共存」といった幾つもの条件を満たすことが求められる。そのため、「全てのシステムを一気にクラウド化することは極めて難しい」(大住氏)ことから、基幹系システムに必要とされる要件に応えると同時に諸課題を解決していけるハイブリッドクラウドの採用が現実的なアプローチになる。

「まず、クラウド移行するシステムの絞込みと長期移行計画を立て、パブリッククラウドに展開できるシステムから始めていく。その際にはネットワーク遅延に伴うパフォーマンスの低下が懸念されるため、既存拠点近くのクラウド拠点を利用するか、また、既存のIT資産をクラウド拠点と同じデータセンター内にコロケーションして連携させるなど対策も必要である。」(大住氏)

 大住氏は、企業がクラウドサービスを選定するポイントに、「ハードウェアやストレージのラインナップ」「ネットワーク環境」「コロケーションやグローバル化への対応度」「サポートサービスの充実度」などを挙げる。それら全ての条件を満たし、高いサービスレベルで提供するものとして、同社の「Bizホスティング Enterprise Cloud(BHEC)」を紹介した。

 大住氏によるとBHECの最大の特徴は3つ、「グローバル展開」「業界最高レベルの設備をもつデータセンター」「通信事業者が提供する高信頼なネットワーク」である。BHECは、先進的なSDN(Software Defined Network)技術をいち早く採用することで、高い柔軟性とコストパフォーマンスに優れたネットワーク環境を可能にしたサービスだ。

 BHECではBHECのLAN環境とNTTコミュニケーションズが提供するデータセンターのコロケーションエリアのお客様利用ラックを、同一セグメントでかつ1Gbps無料に接続するサービス「コロケーション接続サービス」を提供している。これにより、お客様はクラウドやコロケーション間の物理的距離や設備環境を意識せず、ハイブリッドクラウド環境として一体的に運用すること可能だ。

 「こうした特徴からハイブリッドクラウド環境の整備を決断する企業が非常に増えている」と大住氏。同社ではクラウドサービスのグローバル展開を強化しており、2015年中にサービス提供の拠点となるデータセンターは13カ国16拠点にまで拡大するという。

クラウドとオンプレミスをつなぐ”共通基盤”

ヴイエムウェア マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャ 桂島航氏

 ヴイエムウェアの桂島航氏は、ハイブリッドクラウド活用のための技術とその利用を通じたメリットを解説した。

 VMwareはvSphereで提供してきた従来のサーバ仮想化に加え、ネットワークやストレージ、デスクトップなど多岐にわたる仮想化を提供するようソリューションの範囲を拡大してきた。その狙いについて桂島氏は、「共通の仮想化テクノロジーを通じて、プライベートやパブリックといったクラウドの境界を越えた“One Cloud”を実現するため」と説明した。

 同氏によれば、多くの企業がクラウドを利用する中で直面する問題の1つに、オンプレミスとクラウド環境の“断絶”がある。それぞれの環境のプラットフォームに互換性がなかったり、ネットワーク設定を変更しなければならなかったりすることが原因だ。この結果、両環境をまたいだ仮想マシンの移行の際に、可用性や運用などの設計をやり直すケースや、仮想マシンイメージのインポートの制限が問題になることがある。そこで、「双方の環境で同一の仮想化技術を利用できれば、こうした問題を抜本的に解決していける」というのが桂島氏の見解だ。

 同一の仮想化技術であることを生かすことで例えば、オンプレミスで稼働するシステムを同じ設計のまま、丸ごとパブリッククラウドに移動させたり、オンプレミス環境で障害が発生した際にシステムをクラウド上へ自動復旧させたりすることも可能になる。オンプレミスとクラウドのシステム基盤の連携性が高まることで、クラウド環境で開発されたアプリケーションをオンプレミスへ展開する場合も、手間が大幅に削減され、開発生産性が格段に向上するという。

 さらに、2015年に提供を開始したVMware vSphere 6では大幅な機能強化が図られ、その中でも重要なものの1つが長距離でのvSphere vMotionのサポートだ。将来的に、この機能を活用してオンプレミスからクラウドへのライブマイグレーションを行うことも十分に考えられる。

 桂島氏によれば、同社のネットワーク仮想化のテクノロジーであるVMware NSXを活用してマイクロセグメンテーションを実現することで、クラウド環境のセキュリティも大幅に高められるとのことだ。

 「物理的なファイアウォールなどを用いた従来の水際対策では、いったん侵入を許してしまうと、そこを踏み台にした攻撃に対処することが難しかった。だがVMware NSXを利用して各ハイパーバイザーで仮想ファイアウォールを実行できるようになれば、個々のマシンの振る舞いを監視することで、異常時に問題のあるマシンをネットワークから切り離すといった対応が容易になる」(桂島氏)

 VMware NSXの導入は400社以上に達し、多くの企業や組織がユーザーに名を連ねる。国内でも既にNTTコミュニケーションズがクラウドサービスにVMware NSXを採用している。

ハイブリッドクラウドへの疑問に答える

 勉強会の後半は、NTTコミュニケーションズの千徳永氏とヴイエムウェアの神田靖史氏を迎え、ハイブリッドクラウドに対するユーザー企業の疑問に答えるパネルディスカッションが行われた。モデレーターはITジャーナリストの新野淳一氏。

 新野氏は、まずクラウドの利用形態として現状ではデータバックアップなどが多いとしつつ、システムをクラウドで本格的に活用していくためにどのような選択基準を持つべきか尋ねた。

NTTコミュニケーションズ クラウドサービス部 販売推進部門 担当課長 千徳永氏

 千徳氏は、「設計、構築、運用の各フェーズで検討すべき項目は幾つかあるが、システムには常時稼働が求められることから、運用支援を特に重視すべきだろう」と述べ、「この点では国内事業者が提供するクラウドサービスは様々な面で支援が充実しており、例えば当社では、クラウド・ネットワーク・セキュリティをワンストップで提供し、運用支援においてもネットワークを含めたサポート窓口を一本化している」という。神田氏は、「アプリケーションによってクラウドの使い方が変わってくる。信頼性や移行のしやすさ、セキュリティや堅牢性などを兼ね備えているかどうかといった視点でサービスを見極めていくことが大切」と語った。

 次に大住氏のセッションでも触れられたクラウドに展開するシステムの選択だが、どうすべきか。必然的にはライセンスや処理速度、法制面などからクラウドへ移行しづらいシステムがオンプレミスに残るだろう。千徳氏は「とは言え、クラウドを活用したいというユーザーの要望にできる限り応えるのが我々クラウド事業者の使命」と述べ、コロケーションを組み合わせた柔軟なシステム構築をサポートしていくと表明した。

ヴイエムウェア ストラテジックアカウント ビジネス本部 サービスプロバイダー アライアンス部長 神田靖史氏

 また神田氏は、オンプレミスとパブリッククラウドサービスでハイブリッド構成を組む場合に、両環境を接続するネットワークに配慮すべきだと指摘する。「複数システムの連携ではネットワークの遅延が大きな問題になる。WAN経由でIPアドレスが変わるようなクラウドサービスではアプリケーションの改修が必要になり、リスクにもなりやすい」(同氏)。千徳氏は、SDNを利用してデータセンター間をレイヤ2で接続するNTTコミュニケーションのサービス「コロケーション接続サービス」なら、通常クラウド移行時に必要となるIPアドレス周りの設定変更が不要であり、ハイブリッド構成を組むには最適な方法であると強調した。

 パネルディスカッションの中では参加者からも質問が寄せられた。例えば、「投資対効果をどう評価すべきか」との問いに、千徳氏は「一つはコストの削減だが、あるユーザー企業はグローバルで不統一なICT環境を共通のクラウド環境として最適化し、運用コスト、障害やセキュリティのリスクを大幅に削減した」と紹介。神田氏は、「ハードウェア資産を持たずに済むといった点だけではなく運用を含めて削減されたコストを戦略的投資に回していくといった視点が大切」とアドバイスした。

 最後に、今後の広がりが期待されるハイブリッドクラウドの活用について千徳氏は、「もはや企業システムに不可欠な要素。マルチハイパーバイザーへの対応などに取り組む」と表明した。神田氏は、「VMware vSpere6の機能強化を通じてユーザーがクラウド環境に簡単に踏み出せる環境を実現したい」と抱負を語った。


 ハイブリッドクラウドを活用した基幹システムのクラウド化では既に成功事例も登場しており、企業の関心がますます高まるのは間違いない。実際、会場は参加者で埋め尽くされ、講演内容を熱心に記録する参加者の姿が目立った。ハイブリッドクラウドを検討する企業にとって、ヴイエムウェアとの密接な関係にあり、ネットワークとデータセンターを含むクラウドサービスをワンストップで提供するNTTコミュニケーションズは力強いパートナーになるはずだ。

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提供:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2015年4月30日